表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
529/590

急に狙いが変わる事ってあるよね

⦅左、左、上、右、下、上、ジャンプ、突き出して距離を取る⦆


 セミナスさんの指示通りに動き、邪神の攻撃を次々と防いでいく。

 そこに、シャインさんが一気に距離を詰め、攻勢に出る。


 邪神はシャインさんの攻撃を防ぎつつ、合間に俺にも攻撃を繰り出していた。

 もちろん、そのすべてはセミナスさんの指示によってすべて防がれている。


 更に追加でエイトが魔法で援護を行う。

 攻撃だけでなく、防御の方も。

 覚醒した天乃や水連の時ほどではないが、何度か邪神の攻撃を阻害している。


 ただ、やはりと言うべきか、詩夕たちとドラーグさんの抜けた穴は大きい。

 当初と似たような状況だからこそ、よりそれを実感してしまう。

 どう考えても手が足りない。戦力が足りない。


 それでも曲がりなりにも邪神と戦える事が出来るのは、やはり邪神が少なからず疲労しているからだろう。

 先ほどとは若干だけど、動きのキレが落ちている気がする。


⦅事実、落ちています。ほんの僅か、ですが⦆

(しかし、こういう場において、それは大事な事です)


 それはわかってはいるのだが、消耗しているのはこちらも同じ。

 こちら側と邪神の力の差自体はそこまで変化していない以上、このままだと先に消耗しきってしまうのは……こちらだろう。


 邪神の限界は……いつ訪れるのかわからない。


⦅それでも今は⦆

(攻める事しか出来ません)


 そうなるよね。

 わかっているからこそ、俺は邪神の攻撃に対する防御に徹し、攻撃は遠隔AS、エイト、シャインさんに任せる。


 邪神の拳、足、肘、と3コンボをとめた時、邪神が俺に声をかけてきた。


「この場において、お前だけが異質だ」

「はあ? 何言ってんだ?」

「先ほどまで我と戦っていたのは、間違いなく全員が『勇者』スキルを身に付けていた。『神器』がそれを証明している。そして、そこの女は――」


 俺に声をかけつつ、邪神はシャインさんの拳をかわし、カウンターの拳を放つ。

 おらぁ! と邪神の放たれた拳の腕を思いっきり蹴り上げて軌道を逸らすが、僅かしか逸らせなかったのは、その体がそれだけ頑丈だからと思いたい。


 それで充分だと、シャインさんは体を捻ってかわし、邪神の頭部に膝蹴りを放つ。

 まともに入るが邪神は微動だにせず、効いている様子は見えない。

 我慢かもしれないけど。


「戦闘能力だけみれば、先ほどの勇者たちより上……それこそ、前の勇者よりも上かもしれないな。だが、我ほどではない」


 頭の動きだけでシャインさんを膝ごと押し退け、バランスを崩したところを蹴り飛ばす。

 直前に遠隔ASが間に入ったのでダメージは抑えられたが、シャインさんは飛ばされ、俺は掴まれ床に叩き付けられる。


「それと」


 邪神が手のひらどこかに向ける。

 その先から、いくつもの魔法が飛来。

 そのすべてを同じく魔法で相殺していく。


「あれは、この体に近しい存在だろう? 惜しいな。もう少し魔法の威力が強ければ、我にも多少なりとも通じていたかもしれないが」


 エイトの事だというのはわかるが、今は掴まれた状態から抜け出す事を優先。


⦅邪神の注意が少しだけマスターから逸れていますので……⦆


 足を思いっきり延ばして、邪神の足を弾く。

 バランスが完全に崩れる前に邪神は体勢を立て直したが、一瞬でも緩めばこちらのモノ。

 その隙に抜け出すが、邪神の追撃が迫る。


「そう簡単にやらせはせんぞ!」


 ドラーグさんが尻尾を振るって邪神を横から弾き飛ばす。

 といっても、その距離は数mほど。

 邪神は直ぐ立ち上がって、ドラーグさんに視線を向ける。


「その骨だけ竜に憶えはないが、元が竜だけあって強さは本物だ。だが、今は邪魔というよりは、あとで相手はきちんとしてやるから、今は大人しくしていろ」


⦅骨竜を勇者たちのところへ戻すように言ってください!⦆


「ドラーグさん!」


 俺が声を張り上げると同時に、邪神が魔法を放つ。

 巨大な黒い閃光が放たれ、その狙いは端の方でこちらを見ながら休んでいた詩夕たち。


「姑息な真似を!」


 よく見ると、詩夕たちの周りに結界を張っているようだ。

 多分ドラーグさんが張ったんだと思うけど、焦るという事は貫通するんだろう。

 ドラーグさんが詩夕たちの前で立ち塞がるようにして、巨大な黒い閃光を弾く。


 援護は助かったけど、そのまま守っていて欲しい。

 その方が、心置きなくやれる。


 邪神の視線が俺に向けられる。


「だが、お前だけが異質だ」

「またそれか。意味わかんねぇよ!」


 既に俺はシャインさんと共に駆け出し、邪神の下へ。

 邪神は攻防をしながら、言葉を続ける。


「確かに、防御と回避には特化しているが、我を……それこそ、そこらの魔物を倒せるだけの攻撃能力はないように見える」

「ねぇよ! 悪かったな!」


 バレていると思っていたし、今更隠す事ではないので肯定する。


「だが、それで納得出来ないのも事実。正直なところ、その身体能力で我の攻撃に付いてきているのが不思議だ。その上、先ほどもそうだが、時々先回りするような動きまで見せる。まるで、我がどう攻撃するのか、どう動くのかが見えているかのように」


 ドキリ、とするが表には出さず、邪神の攻撃を防ぐ事に集中する。

 それに、邪神自身も確証があって言っているようには見えない。

 自問自答しているような感じだ。


「だからこそ異質。故に、興味がある。お前が我の攻撃をこれだけ多く防ぐ事が出来ている理由というモノを。……もしかすると、お前を真っ先に、それこそ勇者共よりも先に殺しておかないといけないのかもしれないな」


 あれ? もしかして、ロックオンされそうなの?


「勇者共とも親しいようだし、お前が死ねば、勇者共の良い顔が拝めそうだ」


 邪神が良い事を思い付いたとでもいうように、笑みを浮かべる。

 うん。これ、ロックオンされたわ。

 これまでは、どちらかといえば、シャインさんの動きに重きを置いていた邪神の動きが、俺を仕留める方に重きを置き始める。


 いや、ちょ、激しい!


「ちっ」


 シャインさんの舌打ちが聞こえ、どうにか自分に意識を向けさせようと奮闘しているが、邪神のロックオンは中々外れない。


「むぅ」


 それはエイトの方も同じ。

 魔法でなんとか邪神の意識や攻撃を阻害しているが、邪神がそれ以上の猛攻を行い出す。


 このままだと押し切られる、と思った時、邪神がエイトの魔法を相殺出来ずに着弾して弾け飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あちゃ〜、邪神さんもついに明道くんの魅力に気づいちゃったか〜…… これは新たな恋敵の予感…?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ