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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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ハイになっているとわからない事もある

 詩夕たちだけで、邪神と戦い始める。

 といっても、それは別に悲壮感みたいなモノは一切なく、そうするしかないのが現状と言うべきか。


 詩夕たちによる超高速戦闘。

 それが、目の前で繰り広げられている。


 前衛組だけではなく後衛組の攻撃も交えた超高速連携を用いて、邪神にダメージを与え続けている。

 邪神も先ほどまでとは違い、まともに食らう事が多くなってきた。

 詩夕たちの連携に対する練度が上がってきているからだろう。


 七人も居れば、組み合わせも豊富だ。

 辛うじて見えている連携の組み合わせだけではなく、その順番、時間差、攻撃手段と、毎回手を変え品を変えと、少なくとも近いモノはあっても同じ攻撃手段を繰り返してはいないように見える。


 故に、次々変わる攻撃方法に邪神はその対応が後手に回って、ダメージを食らっているんだと思う。

 ただし、当然それで決まらない。


 元々なのか、邪神の影響かはわからないが、邪神は傷の治りが速い。

 先ほどまで直接回復しているだけではなく、自然回復力も高いのだ。

 詩夕たちの対応に手を取られても、やり合っている内に治ってしまう。


 だからといって、邪神が有利という訳ではない。

 詩夕たちが与えるダメージ量が、徐々に上がっていっているからだ。

 最初は七人全員でどうにかまともな攻撃を一回当てられるだけだったのが、一回とそこまでいかない攻撃が何度かに変わり、更には一回が二回に変わるという風に。


 といっても、邪神もただ黙ってやられている訳ではない。

 もちろん、詩夕たちに向けて様々な攻撃を放っている。

 でも、そのほとんどは詩夕たちが持つ「神器」の自動防御バリアによって防がれていた。

 見た感じ、自分の意思でも出せるようなので、手動でも出せるようだけど。


 しかし、ほとんどという事は、中には貫通している攻撃もあった。

 というのも、「神器」のバリアは効果範囲が決められているようで、使用「神器」の正面にしか出せず、大きくも小さくも出来ないようだ。


 なので、バリアを避けるような弧を描いた攻撃は当然当たる。

 あとは当然だけど、バリアにも耐久値があるので、それを超えた威力の攻撃を食らえば砕けて貫通してしまう。


 それで詩夕たちは何度か傷を負う。

 軽傷ではなく重傷に見えるモノも。

 まあ、食らった瞬間に天乃か水連によって直ぐ回復魔法が飛ばされ、ほぼ瞬間的に治っているので……大丈夫だと思う。


 詩夕たちは一度経験するとバリアの特性も理解したようで、そこら辺も計算に入れて動き始める。


 刀を振るって邪神の体に斬り傷を付けたあとの刀璃を狙った、邪神の必中の蹴り足を、詩夕、常水、樹さんがバリアを張って順に当たっていく。

 邪神は相当力を込めていたようで、張ったバリアは砕けていくが、威力は大きく減少し、軌道も逸らされる。


「面倒な真似をする!」


 邪神が悪態を吐く。


 また、活躍しているのは何も前衛組だけではない。

 後衛組も同様で、威力だけではなく矢や魔法の当たるタイミングがより上手くなっている。


 放たれる矢と魔法の威力は間違いなくダメージを与えるだけでなく、効果範囲が絞られていた。

 広範囲だと詩夕たちの動きを阻害する場合があるからだと思う。


 その上で、タイミングが上手い。

 邪神の放つ攻撃が前衛組の誰かに直撃しそうで、他の前衛が攻撃後などで一手遅れる際に、矢や魔法が邪魔するように放たれているのだ。

 当たれば確実にダメージがあるという事で、邪神も回避や防御を優先せざるを得ない。



 そんな後衛組を邪魔に思ったのだろう。

 邪神は後衛組に対してこれまでよりも強い魔法を何度も放つが、時に天乃、咲穂、水連の三人が協力して、そのすべてが相殺される。


 なんというか、今の詩夕たちは隙がないというか、邪神の行動に対して対応が早く的確だ。


 けれど、対応の早さは邪神と同等。

 互いに、次々と即座に対応しながら戦いを続けていく。


 優勢なのは、やはり詩夕たち。

 個の力では邪神には及ばないが、七人という人数差と連携で上回っている。


 ただ、こうなってくると、余計な手助けは不要……というか、入りづらい。

 なんというか、今の詩夕たちが上手く歯車が噛み合っているというのもそうなのだが、戦闘が超高速過ぎて、下手に入ると俺は付いていけない。


 言ってしまえば、足手纏いになってしまう。

 それに、邪神に狙われると詩夕たちもその対応をしないといけないので、俺は少しだけ離れた位置に移動していた。


 エイトとドラーグさんも輪に入れず、俺のところに来る。

 それでもシャインさんならいけると思うのだが、そのシャインさんも詩夕たちの戦いには加わっていない。


 寧ろ、今この時を利用して、体を休めているように見えた。

 そんなシャインさんがこちらに来て、一言。


「見ているのは個人の自由だが、アキミチも今の内に休んでおけ」

「休む必要あります?」


 このまま詩夕たちがやってしまいそうに見えるけど。


「備えておいて損はない。ただし、集中は切らすな。いつでも動けるように、な」


 そう言うシャインさんの表情は真面目そのものだった。

 シャインさんは、言う事は言ったといわんばかりに休息を取り出す。

 いつでも動けるように詩夕たちの戦いを見守ってはいるが、手助けをする気はないようだ。


 その姿を見ていると、このあとの出番が本当にあるように思えてきて、俺も休んだ方が良いような気になる。

 実際、既に疲れは感じているし、動きをとめた途端に汗が吹き出していた。


⦅私の休息を取るという選択には賛成です。勝負に絶対はありません。いえ、私の場合は絶対ですが、相手は邪神であろうが曲がりなりにも神。想定外があるかもしれません⦆


 それはつまり、詩夕たちが負ける、という事?

 かなりの勢いで押しているけど?


⦅……それが問題なのです。いえ、この場合は杞憂であれば、でしょうか⦆

(そうですね。ですが、このままいけば勝てるのも事実。何より、あれはとめようと思ってもとめられる状態ではないでしょう)

⦅勇者の力の完全覚醒による力の上昇によって気分の高揚……軽い暴走状態と言っても良いかもしれません。戦闘に支障は今のところありませんが……⦆


 なんか、二人が意見を揃えるって怖いんだけど。

 ……どういう事なの?


⦅これも一つの弊害と言えるかもしれません⦆

(力の上昇で最大値は上がった。けれど、すべての現在値が上昇する訳ではない)

⦅要は、スタミナの問題。ハイペース過ぎるのです⦆


 セミナスさんがそう言った時、攻撃を受けた訳でもないのに、樹さんが、がくりと片膝をついた。

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