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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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見るだけでも勉強になる時がある

 詩夕たちが持つ「神器」はそれぞれ違う。

 それぞれの得意武器に合わせた作りとなっている。


 詩夕は「剣」。常水は「槍」。刀璃は「刀」。樹さんは「ナックル」。

 咲穂は「弓」。天乃と水連は「杖」。


 といっても、形状までは元々使用していた武器と変わっていない。

 正確には、使用していた、手慣れた武器の形状を模している。


 鍛冶の神様曰く、形状だけではなく、武器としてのバランス、重心、持ち手の感触まで模しているそうだ。

 製作してからの使用期間が短いため、出来るだけ武器変更による違和感を少なくするために。


 その試みは成功している、と思われる。

 少なくとも、詩夕たちは「神器」使用に違和感を抱いていないようだ。


 それと、普段の武器と形状が似ていても、違う点がある。

 本当にどことなくだけど、「神器」自体が輝いているように見えた。

 他の武器とは何かが違う、と見るだけで意識させられてしまう。


 それは魔王リガジーだったモノも同様だった。


「『神器』を持ち出したか。良い判断だ、と褒めてやろう」


 それでも、余裕の姿勢は崩れない。

 好きなだけかかってこいよ、と手招きまでする。


⦅後悔させてあげます⦆


 何故か、セミナスさんがやる気になった。

 いや、魔王リガジーだったモノは、セミナスさんに向けてではなく、詩夕たちに向けてやったんだと思うんだけど。


 それに、セミナスさんの事は認識出来ていないし。

 認識されると困るけど。


(なるほど。先輩は自意識過剰、という事ですね)

⦅あなたからぶち殺してあげましょうか?⦆


 セミナスさんは、大魔王ララが関わると言葉が悪くなるな。


(それだけ私という存在に脅威を抱いて、いえ、今の立場が私にとって変わられるのではないかという危機感かもしれません)

⦅そのような感覚はありません。寧ろ、消えるのはあなたです⦆


 はいはい。バチバチしない。

 指示をお願いね、セミナスさん。

 詩夕たちの攻撃チャンスも作らないといけないのだから、もっと厳しくなるんだから。


⦅お任せを。……そこで見ていなさい⦆

(勉強させていただきます)


 出来ればそのままケンカはしないで欲しいんだけど……するだろうな、これ。

 相性が良いのか悪いのか。

 とりあえず、この戦いが終われば好きなだけやって良いので、今だけは仲良くして欲しい。


 そうして、セミナスさんの指示と遠隔ASによって、シャインさんだけではなく、詩夕たちの攻撃チャンスを作り出していく。


 その分、俺の危険性は高まるが、セミナスさんの指示があるし、何より遠距離の援護は増えた事は心強い。

 エイトだけではなく、咲穂の矢、天乃と水連の魔法も加わったのは大きい。


 時折、セミナスさんが遠隔ASを上手く利用している。

 放たれた魔法や矢を、受け流すように遠隔ASの表面を滑らせて、魔王リガジーだったモノへの直撃コースに変えていた。


 俺としては意表を突けていると思うのだが、魔王リガジーだったモノは読んでいたかのように反応して、回避したり、魔法で撃ち返したりと、直撃は一発もない。


 それは、前衛で戦っている側も同様だ。

 魔王リガジーだったモノの攻撃を俺が防ぎ、詩夕たちが攻撃を行う。

 詩夕たちも人数差を上手く利用して、誰が本命かわからないくらいに、囮、囮、と繰り返して、本命の攻撃を行っている。

 といっても、囮もそうだとわからないように、もちろん全力だ。


 詩夕が斬撃を放ったかと思えば、その後ろから常水が槍を突いたり、と思えば、同時に横から刀璃の刀が振るわれたりしている。

 シャインさんが放つ乱打を、魔王リガジーだったモノは片手で防ぐが、それは囮と言わんばかりに樹さんが突進するような勢いでシャインさんの反対側から襲撃したりもしていた。


 ただ、魔王リガジーだったモノの反応速度と体の動きは、そのすべてを凌駕している。

 回避、防御、と全員で挑んでも未だまともに入った攻撃は一度もない。


 けれど、近くでやり合っているからこそ、気付く。

 それは、「神器」を持ち出した事で、魔王リガジーだったモノの動きが変化している事だ。


 その変化を更に突くために、シャインさんだけじゃなく、詩夕たちにも攻撃に専念してもらうために、魔王リガジーだったモノが時折詩夕たちに向けて繰り出す反撃も、出来るだけ防いでいく。

 その合間を縫うように、詩夕たちも攻撃を行うようになった。


 魔王リガジーだったモノの変化とは、シャインさんの行う攻撃とは、対処が違うという事だ。

 シャインさんの攻撃に対しては、基本受けとめている。防いでいる。

 それで問題ないとでもいうように。


 しかし、「神器」装備になった詩夕たちの攻撃に対しては、基本は回避を行っていた。

 当たらないような体捌きや、魔法に関してはすべて撃ち落としたりと、その身に一切食らわないように動いている。


 でもそれは、「神器」に有効性があるという事の証明かもしれない。

 何かしらの効果があるのだろう。

 それが何か知りたいところだけど……。


⦅十秒後、勇者たちによる連携が始まりますので、サポートに入ってください。……あと、三、二、一……ASを左に十センチ移動、次いで――⦆


 セミナスさんは忙しい。

 指示が細かいので、俺も今聞く暇がない。

 憶えられないと言うべきか。


 それと、「神器」が影響しているのかはわからないが、変化はこちらにも起こっていた。

 起こったのは、詩夕たち。


 魔王リガジーだったモノに対して慣れたからか、それともこれも勇者としての覚醒の力なのかは俺にはわからないが、その動きが最適化されていくというか、鋭くなっていく。

 前衛の詩夕たちだけではなく、後衛の天乃たちも。


 詩夕たちの攻撃が段々と鋭くなっていき、魔王リガジーだったモノの回避に割く時間が増えていく。

 天乃たちの矢や魔法も、当初は牽制や援護の意味合いが強かったが、今はこちらから指示を出さなくても、ここぞというタイミングでき、魔王リガジーだったモノの動きを阻害するようになってきた。


 その精度は時間が経てば経つほど高まっていき……遂に、魔王リガジーだったモノの表情から、笑みが消える。


「では、そろそろ始めようか。この世界の命運がかけた殺し合いを」


 魔王リガジーだったモノの動きが急に鋭くなり、咄嗟に防いだASごと殴り飛ばされる。

良いお年を。

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― 新着の感想 ―
[一言] ワクワクですね!よいお年を。
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