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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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狙いは人それぞれ

 魔王リガジーが乱入してきた事で、場が一気に混乱、混迷となってきた。


「邪魔だっ! お前たち!」


 何しろ、魔王リガジーは俺たちだけではなく、大魔王ララの体にも襲いかかっている。


「無駄な事をする」


 いや、正確には取り押さえようとしているようだが、大魔王ララの体が抵抗していた。

 魔王リガジーは手っ取り早く魔王ララの体に残る右腕を掴もうとするが、大魔王ララの体は余裕で掴もうとする手を弾いている。

 それは掴もうとする手が、片手でも両手でも関係ない。


 なんでもないように弾く大魔王ララの体の姿は、魔王リガジーの力を完全に上回っている事を俺たちにも知らしめた。


 実際はどうか知らないが、単純計算で大魔王ララの体には元の力の四分の三が戻っている。

 魔王リガジーは四分の一だ。

 その差はでかい。


「邪魔なのはお前だ! こいつを片付けたら相手をしてやるから、大人しく待っていろ! それともついでにやってやろうか?」


 でも、そんな事は関係ないと、シャインさんは両者に襲いかかっていた。


 シャインさんの蹴りを魔王リガジーが防いだと思えば、シャインさんは蹴り足を軸として回転し、そのまま大魔王ララの体に殴りかかる。

 大魔王ララの体は、魔王リガジーに向けて手刀を放とうとしていた右手でシャインさんの拳を防ぎ、そのまま掴んでシャインさんを放り投げた。


 そこに魔王リガジーが大魔王ララの体を再度取り押さえようとする。


「馬鹿め」


 大魔王ララの体は、突っ込んでくる魔王リガジーを跳び箱のようにして飛び越え、空中で回転しながら蹴り飛ばす。

 奇しくもなのか、狙ってなのか、魔王リガジーが飛んで行った方向は、シャインさんが投げられた方だった。


 もちろん、シャインさんは受けとめない。

 ひょいっと避けて、シャインさんは大魔王ララの体へと襲いかかる。

 魔王リガジーはそのまま壁に激突したが、なんでもないように立ち上がり、シャインさんと同じく大魔王ララの体を取り押さえに向かう。


 そのまま三者による乱戦が行われる。


「なんか出遅れてしまったというか……」

「入り込む余地がないというか、タイミングが難しいね」

「迂闊に手を出すと火傷しそうです」


 俺、詩夕、エイトの意見が一致する。

 でも、ここで大人しく見ているという選択はしない。

 けれど、気になる事は別にある。


 それは魔王マリエム。

 魔王リガジーが動いたという事は、魔王マリエムを放置しているという事だ。

 魔王マリエムが居た方に視線を向ければ、何やら赤く輝いている魔法陣の中に居た。


 見た感じで言えば、結界……かな?


(おそらく、力を抜かれたマリエムを守るために、リガジーが張ったのでしょう……)


 俺の中の大魔王ララが、少し悲しげにそう答える。


 でも、そういう事なら、魔王マリエムは放っておいても良いだろう。

 今は大魔王ララの体の破壊を優先すべきだ。


「いくぞっ! 詩夕! エイト!」


 俺たちも向かう。

 魔王リガジーの分の力が戻っていないからか、確かに手加減されている感はあるが、それでも辛うじてやり合える。


 特に、詩夕はまだ力が上昇していっているのが見てわかる。

 時間が経てば経つほどだが、大魔王ララの体が魔王マリエムの力を取り込んでから、更に加速していっているような気がした。

 まるで、相手の強さに合わせるように。


 だからこそ、詩夕は大魔王ララの体とやり合わさないといけない。

 そんな詩夕の安全を守るのは、俺だ。


 詩夕よりも前で、長時間大魔王ララの体の攻撃を防ぎ続ける。


「邪魔なヤツ」


 大魔王ララの体がそんな俺を煩わしく思ったのか、狙いを俺に定めようとするが、そこにエイトが魔法を放って注意を上手く逸らしていく。


 そこで、俺とエイトに注意を向ければ、その意識の隙間に滑らせるように詩夕が斬撃を放つ。

 それすら反射的に回避する大魔王ララの体だが、その行動でこちらへの直接的な攻撃は断念せざるを得ない。


 詩夕の斬撃に注目する大魔王ララの体。


「……特に何かが変化した訳でもなく、先ほどよりも鋭さが増している。その力の性質……勇者か」


 驚愕でもなんでもなく、ただ納得した、という表情を浮かべる大魔王ララの体。

 大魔王ララの体の狙いが、俺とエイトから詩夕に変更する。

 それでも、今の詩夕ならそう簡単にやられはしない。

 それに、俺とエイトで詩夕の補佐を行い、安全性を高める。


 魔王リガジーの横槍がないのは、再びシャインさんが押さえているからだ。

 どうにかこちらの方へ来ようとしているが、シャインさんによって完全に妨害されている。


「邪魔をするな!」

「叫ぶのは構わないが、私への集中を欠いたままでどうにか出来ると思っているのか?」

「ちぃっ!」


 当分は大丈夫だろう。

 この間に大魔王ララの体を破壊、もしくはそれに近い致命傷を与えておきたい。


 今度は詩夕も加えて、大魔王ララの体の消耗を少しずつ削っていく。

 それが出来たのは、俺というよりは詩夕とエイトが強いから、だとも思うが、どうやらそれだけではない事に気付いた。


 元々体の状態はそれほどよくない。

 片腕を失い、足も痛めていると、万全の状態ではないのだ。

 魔王マリエムの力を取り込んだそうだが、力の上昇に体が耐え切れていない。


 つまり、今は本気を出せないのだ。

 余裕があるように見せているが、今が出せる限界。


 詩夕とエイトにチラリと視線を向ければ、こっちも気付いたと頷きが返された。

 一気に決めにかかる。


 大魔王ララの体の破壊は詩夕とエイトに任せ、俺は回避と防御に専念。

 詩夕に向けられた狙いを、少しでも俺の方に向けさせる。

 そうすれば、その隙を突いて、詩夕とエイトがどうにかしてくれるはずだ。


 ただ、そんな俺の相手をするのが嫌になったのだろう。


「煩わしい!」


 大魔王ララの体が魔法で自身の周囲に小規模爆発を起こす。

 咄嗟にASで防いだのでダメージは特にないが、衝撃と余波で体が吹き飛びそうになる。

 俺という障害が取り除かれ、爆発による煙による目くらまし効果で、詩夕への道が出来上がってしまう。


「行か、せるかよっ!」


 咄嗟に足を伸ばして、大魔王ララの体の足に引っかける。

 単純な手だったが、意表は突けたようだ。

 転びはしなかったが、大魔王ララの体は一歩分の動作を無駄にしてしまう。


 そこに、後方に回り込んでいたエイトが、やり返すとばかりに爆発系魔法を発動。

 もろに受けた大魔王ララの体は弾丸のように飛び出し、詩夕の方へ。


 詩夕は剣を構え、すれ違いざまに一閃。

 そこで真っ二つにするつもりだったようだけど、大魔王ララの体が上手く逸らせたのか、残った腕と片足を落とすだけだった。


 それでも致命的だろう。

 更に、追加がある。


 エイトは狙っていたのかわからないが、飛んで行った方向が悪かった。

 シャインさんが居たのだ。


「よく、やった」


 蹴って魔王リガジーの姿勢を崩したシャインさんが、タイミングを合わせて拳を放つ。

 大魔王ララの体は直前で身動ぎし、シャインさんの拳は上半身をかすり、下半身を丸ごと破壊した。


「ララッ!」


 魔王リガジーが叫びながら、上半身のみになった大魔王ララの体を受けとめる。

 確かに、大魔王ララの体は上半身のみとなった。

 けれど、逆を言えば、完全に破壊は出来ていないという事。


 核は……残っていた。


 両腕がなくとも上半身の力だけで身を起こし、大魔王ララの体は大きく口を開いて、魔王リガジーの首筋に噛み付いた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] シャインさんがリガジーとララに襲いかかるところ 「シャインさんの蹴り "を" リガジーが防いだと・・・」 だと思います。
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