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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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別章 先を見据えての行動

 大魔王城から外に出て来た人形たちに関しては、一時は危ぶまれたが、アドル、インジャオ、ロザミリアナ、ロードレイルによって、その脅威度は一気に下げられた。

 人形たちの数は追加されていっているが、増えるよりも減る方が早く、いずれ収束するだろう。


 それは、何も大魔王城の外に限った事ではない。

 大魔王城の中でも、場面は動こうとしていた。


 壁が取り払われ、更に広大な空間となった元ダンスホール。

 数多くの実験器具が置かれていたのだが、今はもうほとんどがその形を保っていない。

 ここで行われている戦闘によって破壊されていた。


 人形たちを相手にここで戦っているのは、常水たちとワンたち。

 ここには外以上の人形たちが押し寄せているが、それでも問題なかった。

 人数が揃っているというのもあるが、強さもある。


 その殲滅力は人形が追加されるよりも高い。

 だからこそ、決断する。


 周囲の状況を確認するワン。

 その視線は全体を見て、これから先を見据える。


 必要なのは決断。

 ワンの視線はそのまま自分の妹たちへと向けられる。

 ツゥたちは、意思疎通が出来ているかのようにそれぞれが戦いながらもワンと視線を合わせ、それで良いと頷きも返す。


 言わなくてもわかるなんて、さすが妹たちだ、とワンは思う。


 目の前の人形を殴り飛ばしたあと、ワンは後方に跳躍。

 人形を力強く投げ飛ばした樹と背中合わせに立ち、視線は人形に向けたまま声をかける。


「あとは、あたいたちに任せて先に行け!」


 ワンが樹に声をかけたのは、今この場で常水たちを纏めているのは樹だからである。

 樹はその提案に対して襲いかかってくる人形を相手にしながら直ぐ返答する。


「良いのか? 任せて」

「ああ、問題ねぇよ! これはあたいたちの総意だ!」


 もちろん、ワンも人形と戦いながらそう答える。


「理由を、聞いても?」

「簡単な話だろ。ここはもう、あたいたちかあんたたちか、どちらかが残れば対処出来る。なら、力の余力がある内に、どちらかは上に援護に向かった方が良い。という訳で、残るのはあたいたちだ。先に行くのは、あんたたちの方が良い」


 襲いかかる人形を裏拳で砕くワンが、そのまま理由を話す。


「あんたたちの方が、対応力がある。言ってしまえば、あたいたちは魔法主体だからな。もし、大魔王、もしくは魔王の中に相性の悪いのが居た場合、取れる手段は極端に減っちまう。その点、あんたたちならバランスが良い。もちろん、強いってのもあるけどな」


 それが理由だ、とワンは快活に語る。

 だからここは任せろ! と笑みまで浮かべた。


 その表情を見て、樹は少しだけ申し訳なさを心の中に抱く。

 行きたいのはそちらも同じだろうに、と。


 けれど、言っている理由はもっともだった。

 強さに関しては、同等だと樹は思っている。

 なら、重要なのは、ワンが言ったように対応力。


 前衛、中衛、後衛が揃っていて、攻撃手段も豊富なのは自分たちの方だと、樹は冷静に分析する。


 なので、頷きを返した。


「わかった。……先に行く!」


 だから、あとからちゃんと付いて来いよ、と言葉にはせず、視線だけで樹は告げる。

 そんなの当たり前だろ、とワンは勝気な笑みを返した。


 そこからの行動はどちらも速かった。

 樹は常水たちに声をかけて即座にこの部屋からの脱出を図り、ワンたちがその補佐を行う。

 人形たちが常水たちのあとを追おうとするが――。


「行かせるかよ! 『魔力を糧に 我願うは 隔絶断絶する炎 炎焼壁』」


 常水たちが部屋を出るのと同時に、ワンが炎を纏う拳を突き出す。

 突き出された拳の先から巨大な火炎が放射され、常水たちのあとを追おうとした人形たちを焼き尽くし、そのまま壁のように炎が残り続ける。


「はっ!」


 勝気な笑みを浮かべるワンの下へ、ツゥが水魔法で人形たちを水中で圧壊しながら来る。


「ワン姉様。張り切るのは良いですけど、魔力消費の大きい魔法の使用は控えてくださいね」

「わかってるって。ちゃんとその分は残しているさ」

「なら良いですけど」

「それに、あいつらが抜けた穴をあたいたちだけで埋めないといけないんだ。多少なりとも派手にいかないとな」

「それはそうですが、配分を考えてください、と」

「それは……向こうに言った方がよくないか?」


 ワンが視線で誘導。

 誘導に従って、ツゥが視線を向けた先では――。


「はははははっ! 思いっきりいくぞー!」


 スリーが巨大な土塊をいくつも生成。


「投擲! 投擲! 投擲!」

「圧迫! 圧殺! 圧壊!」


 それをファイブとシックスが魔法で生成した手や足で投げ、蹴り飛ばしていく。

 もし人形たちに感情があり、声を上げる事が出来たのなら、阿鼻叫喚の光景となっていただろう。


 人形たちは物言わぬまま、土塊によって潰されていく。


「あの子たちは……」


 ツゥが少しだけ呆れる。

 常水たちが居た状態だと、そちらにも被害が出るかもしれないため、抑えていたのだ。

 言ってしまえば、ちまちま行うよりも、大きく動きたいのである。


 そして、常水たちはこの場から居なくなり、枷が取り払われたのだ。

 大規模魔法を一気に使用し始めるスリー、ファイブ、シックス。


 ツゥが苦言を呈そうとするが、その前に動く者が居た。


「こらっ! あなたたち! いい加減にしなさい! 魔力の使い過ぎよ!」


 ツゥよりも先に注意を飛ばしたのは、セブンである。


「使用するなとは言わないけど、もう少しペースというモノを考えなさい。わかった?」

「「「はーい」」」


 セブンの言葉に大人しく従う三人。

 あちらはセブンに任せて大丈夫だろうと、ツウがワンに視線を向けると――。


「だからな、フォーが大嵐を発生させて、そこにあたいが炎を放り込むと」

「なるほど。火炎大嵐になる訳か。派手で良い」


 フォーと密談をしていて、悪い顔を浮かべている。

 こっちはこっちで私が抑えるしかないか、とツゥは頭を抱えそうになった。


 けれど、ワンたちの強さは本物である。

 意思なき人形と、神造生命体はまったくの別物だ。


 ワンたちはその強さを発揮して、人形たちをここに押しとどめ、倒し続けていく。

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