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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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似ているからこそ認められない事もある

 えっと、どういう事? セミナスさん。

 なんか、俺の中から、セミナスさん以外の声がして、それが大魔王ララを名乗っているんだけど?


⦅本人です⦆

(本人です)


 なんか二重に聞こえるぅー!

 そして、迫る魔王リガジーの拳。


⦅しゃがんで回避してください⦆

(盾で受けて後方へ、一旦距離を)


 セミナスさんの声に体が反応してしゃがむ。

 ステップを踏むように後方へ移動して、一旦距離を取る。


 そこに魔王マリエムの魔法が追撃してくるので、ASで防ぎつつ、エイトに向かって進む大魔王ララの突進の前に立ち塞がって相手取る。

 詩夕が援護に加わり、その補佐をするような動きに変えながら、言う。


 すみません。

 意見は統一してもらえませんか?

 今のは体が反応したから問題なかったけど、今後も上手くいくかどうかわからないですし、混同して少しでも動きがとまるのは、致命的だと思うので。


⦅体が反応したという事は、私にすべてを委ねているという事と同義。着々と私に依存していっていますね。喜ばしい事です⦆

(大丈夫。まだ立ち直れます。私にすべて任せてください。私の言葉で悪女の誘惑を断ち切り、立派に更生させてみせますので)


 いや、だから、意見の統一を……。


⦅はあ? 余計な事をしないでいただけますか? そもそも、ここは私の居場所です。そこに土足で踏み込んできたあなたに、居場所はありません⦆

(居場所? それをあなたに用意してもらう必要はありません。自ら勝ち取りますので。そう、あなたを蹴落として)

⦅ぐぬぬぬぬぬ……⦆

(うふふふふふ……)


 駄目だ。まったく聞こえていない。

 本当に、一体どうしてこんな事に?


⦅お忘れですか? マスター⦆


 え? セミナスさん。

 何を?


⦅そこに居る大魔王から、光り輝く球体を押し付けられた事を、です⦆


 確かに押し付けられたけど、それが?

 なんか消えたし、問題ないんじゃないの?


⦅いいえ、問題ありです。それが現状を招いているのです。そして、マスターは、それと似た事を既に体験しています。この世界に来てから少しして⦆


 ………………。

 ………………。

 もしかして、セミナスさんが俺に宿った時の事?


⦅はい。その通りです⦆


 え? 待って。

 でも、それでどうして、大魔王ララを名乗る人の声が聞こえるの?


⦅どうもこうも、ここに居るこの女は、自らの意思をスキル化してマスターに宿らせたからです⦆

(こんなに上手くいくとは思いませんでした。やはり、元々の下地が構築されていたからでしょうか)

⦅……つまり、私のおかげ、だとでも言いたい訳ですか?⦆

(はい。感謝していますよ。せ・ん・ぱ・い)

⦅その言い方のどこに感謝の念が込められているのか、疑問ですね⦆

(疑問を持つ必要はありません。元々込められていない念ですので)


 そして、言い争いを始めるセミナスさんと、多分大魔王ララ。

 あの、俺の集中が途切れるので、やめてもらっても良いですか?

 状況的に、結構危ないので。


 と言ってはみるものの、聞こえているかは怪しい。

 それだけ、口喧嘩はとまらない。


 いや、そうじゃなくて。

 大魔王ララが意思をスキル化してとか、そんな事出来るの?


(こうして出来たのですから、出来たという事です)


 いや、やったから出来た、みたいに言われても……って、大魔王ララ!


「動きが鈍っているぞ! アキミチ! しっかりしろ!」

「すみませんっ!」


 シャインさんに叱咤されるが、俺も状況についていこうと結構一杯一杯なんで。


(そう言われるのは何やら恥ずかしいです。先ほどはわかりやすいかと思いそう名乗りましたが、実際私は自らそう名乗った事はありません。あれが勝手にそう名乗り、周囲がそうだと判断したまで。……まぁ、多少はその名を利用させていただいた事もありますが)


 ……ほんと、どういう事? セミナスさん。


⦅どうもこうも、そのままの意味です。元々、私が神造超生命体ハイブリッド・ホムンクルスの体に移れるという例が存在しています。でしたら、その逆も然り。神造超生命体に宿る意思がスキル化して、他に宿る事も可能だという事です。その証拠に、大魔王ララは力だけではなく、自らの感情を他へと移した訳ですし⦆


 ……魔王たちか。

 じゃあ、魔王たちの感情が、大魔王ララに戻るのも、そういう部分があるから?


⦅はい。といっても、これは普通の生命体ホムンクルスでは不可能ですし、いくら神造超生命体クラス、もしくはそのレベルであっても、かなりの時間をかけなければ到底使用出来ない、不可能な所業です。しかし、大魔王ララにはそれだけの時間がありましたので⦆


 アイオリさんとエアリーさんに封印されていた時間か。

 いや、それもそうだけど、それだと大魔王ララが俺の中に居るのなら、どうして体の方は未だに動いているの?


 あっ、わかった。

 魔王ヘルアトの意思だ。


⦅いいえ、違います。その意思は既に消滅しています⦆

(いいえ、違います。ヘルアトは既に私と統合されています)


 同時に否定しなくても。

 ……なら、なんなの?


⦅言ってしまえば、今の状態はマスターたちが先ほど対峙した人形共に近いでしょう⦆

(ただ、あなたたちを攻撃しなさい、という命令に従っているだけ。自動人形状態みたいなものです)


 そうなんだ……でも、そのちょいちょい同じ方向に向くのはなんなの?

 案外、似た者同士とか?


⦅いいえ、似ていません⦆

(いいえ、似ていません)

⦅真似しないでいただきたいのですが?⦆

(それはこちらのセリフです)


 ……似てるからこそ、かな?


⦅こちらを気にするよりも、マスターは周囲を気にしてください。集中を切らすと危険な場面です⦆

(そうです。あっ、マリエムがあちらのメイドを狙うと見せかけて、あなたに攻撃をしようとしているっぽいから気を付けて)


 そんな忠告通りに、魔王マリエムが俺に向けて魔法を放ってきた。

 知らなければ当たっていたかもしれない。


 えっと、ありがとう……と言うべきなのかな。


(お気になさらずに)


 というか、どうして俺の中に?

 スキル化して移動出来るのなら、それこそ他の魔王でもよかったんじゃ?


(合う合わない、浸食、統合、様々な理由は存在しますが、一番の理由は既にそういう存在を宿して受け入れる事が出来ると考えたからです。実際、その通りでした)


 ……つまり、セミナスさんの存在を読んでいたって事?


(はい。マリエムから情報を与えられて、思考加速で何度も検証した結果、辿り着いた答えですので)


 ……う~ん。セミナスさん並みじゃないだろうか、この大魔王。


⦅私の方が優秀です⦆


 セミナスさんならそう言うと思った。

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