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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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言いたい時に言えないのはもどかしい

 紫電の走った爆発が晴れていく。

 大魔王ララは……生きていた。

 ただし、無事に、という訳じゃない。


 左腕がボロボロだった。

 それらしい形は残されているが、あり得ない方向に曲がっていたり、欠けていたり、黒焦げであったりと、まともな状態ではない。


 使い物にならないと、見てわかる。


「なるほど。左腕を犠牲にする事で、他を守って無事にやり過ごしたようです。戦闘継続を保つための適切な判断であったと思います」


 エイトが冷静にそう言う。

 いやそれ、セミナスさんの役割だと思うんだけど。


 でも、そのセミナスさんは先ほどから反応がない。

 何か検証し続けているのか、思考に没頭しているのか、理由はわからないけど。


 まぁ、さすがに緊急時は出てくると思う。

 出てこないって事は、まだ緊急時じゃないって事。

 つまり、俺とエイトで対処可能だという事だ。


「「ララッ!」」


 魔王マリエムと魔王リガジーから、大魔王ララの名を叫ぶ。

 その声には、どこか相手を気遣うような、心配するような声色が含まれていた。


 ただ、声だけだったのは、詩夕とシャインさんがきちんと押さえ込んでいるからだろう。

 大魔王ララに対してダメージを与えられたのは、この二人のおかげともいえる。


 何しろ、過去、アイオリさんとエアリーさんが戦った状態は、言ってみれば完全体。

 魔王に力が分散しているからこそ、俺とエイトだけでどうにか戦えているし、ダメージも与える事が出来た。


 魔王マリエムと魔王リガジーから余計な横入りがないのも助かっている。

 ただ――。


「………………」


 大魔王ララはまだやられてはいない。

 呼ばれて反応は示していないが、未だ視線は俺とエイトに向けられていて、敵として捉えているように見える。


 その大魔王ララの目に、感情が宿った。

 それは……強い敵意。

 まるで怒っているように。


「………………」


 と思った瞬間には直ぐに消えた。

 無感情の目と表情に戻る。


 一体何が? と訳がわからなくなっている内に、大魔王ララは自ら左腕を手刀で斬り落とし、回復魔法をかけて出血を防いだ。

 そうする事が予め決められていたかのような、機械的な動きで。


 その仕草は先ほどまで対峙していた大魔王ララそのものだが、時折見せる感情は一体……。


 いや、考えてもわからない。

 情報がない中で、これは答えが出ないモノだ。

 それに、そういうこちらの思いとは関係なく、大魔王ララは襲いかかってくるのだから。


「………………」


 片腕の大魔王ララが瞬時に眼前に。

 俺の首を刈ろうと手刀を振り下ろしてきたので、即座にASで防いでそのまま弾き飛ばされる。


 弾き飛ばされた先にエイトが居たので、巻き込み、大魔王ララから距離を取らせた。

 瞬間、エイトが居た場所に大魔王ララの魔法の雨が降り注いだ。

 俺を弾き飛ばした瞬間に魔法を発動していたのだ。

 ご丁寧に、エイトの位置からだと、俺が壁となって見えないように。


 なので、エイトをわざと巻き込んで、一旦距離を取ったのだ。

 それでも、確認は必要。


「大丈夫か? エイト、今のは」

「ご主人様に傷モノにされました」

「それは語弊のある言い方だからやめようか!」

「大丈夫です。安心してください。きちんとわかっています」


 どうやら無事なようだ。


「ご主人様に付けられた傷は愛の証、という事ですね。エイトはご主人様のすべてを受け入れます」


 駄目だ。全然わかっていない。

 でも、それを指摘する時間はない。


 エイトを後方に向けて押し出す。

 同時に、エイトが居た場所に大魔王ララの拳が通り過ぎていく。

 どうやら、先ほどの魔法の一撃で、エイトの方に狙いを定めたようだ。


 俺を無視して、大魔王ララがエイトに襲いかかろうとする。

 眼中なしって感じだ。


 まぁ、今の俺に攻撃能力はないからね。

 こればっかりは仕方ないが、俺に攻撃能力がないのは今更だし、嘆くよりも今は行動を優先。


 エイトはやらせない、と大魔王ララにしがみつこうとするがかわされる。

 ただ、それで諦めない、と無理矢理体を動かして足蹴りで大魔王ララの足を引っかけて防ぐ。

 大魔王ララが前のめりに倒れ、そこにエイトが魔法を放とうとするが、引っかけた足が掴まれて引っ張られて盾のように出される俺を見て中止。


 体勢を立て直した大魔王ララは、もう意味はないと俺を投げる。

 今はエイトだけを標的にしているようだ。


「エイト!」

「戻るまで耐えます」


 エイトの行動に躊躇いはない。

 下がりつつ、魔法を放ち続ける。

 大魔王ララも迎撃の魔法を放ちながら前へ。


 直ぐ戻らないといけない。

 投げ飛ばされた状態で行き先を見れば、詩夕と魔王マリエムが戦っている姿が見えた。


「詩夕っ!」

「わかった!」


 瞬時に察してくれた。

 魔王マリエムの相手をしつつ、俺とのタイミングを計り――空中で掴んで――。


「直ぐそっちに行くよ!」


 そう言って、詩夕は俺を投げ返す。


「来た頃には終わっているよ!」


 そう返してみたものの、聞こえているかどうかはわからない。

 既に魔王マリエムとの戦いに戻っていたからだ。

 魔王マリエムは詩夕に任せて大丈夫。

 俺も、大魔王ララに集中しないと。


 戻れば、エイトは大魔王ララとの魔法合戦を行っていて、五分五分の状態を保っていた。

 そこに参戦し、もう一度エイトに攻撃のチャンスを与えようと頑張るが、さすがに二回目ともなると、どこか警戒しているような動きを見せてくる。


 しかも、隙あらばエイトを仕留めようとしてくるし、俺に対して眼中は本当になくなったが、それがフェイクの可能性もあるしで気が抜けない。


 でも、やる事は変わらないのだ。

 俺が牽制、注意をこちらに向けさせ、僅かな隙をエイトに突いてもらう。


 何度か試すが、中々隙が出来ない。

 それに、どうも学習しているようで、俺の牽制も読まれる事が多くなってきた。


 そんな時、大魔王ララの行動が変化する。


 残った手を前に突き出したかと思うと、そこに光り輝く球体が出現。

 これまで見せた事のない動きに警戒を強める。

 食らう訳にはいかないと思いつつも、これまでの動きが布石であったかのように、大魔王ララは突然俺に狙いを定めた。


「ご主人様っ!」


 エイトも気付いて、自分に注意を向けさせるように魔法を放つが、大魔王ララは気にせず俺に向かってくる。

 俺も回避し続けるが、大魔王ララは力を振り絞るように加速。


 残された手を突き出し、光り輝く球体が俺に触れて……吸い込まれていった。

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