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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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やるべき事がわかればやるだけ

 大魔王ララの目に意思の光が宿り、言葉をかけられたかと思った次の瞬間には、そのどちらも消えていた。

 意志の光は消え――。


「もう一度!」


 声をかけても反応はない。

 喋る気配も一切ない。


 でも、確かに、「逃げろ」と言ってきた。

 ……どういう事?


⦅反応がない以上は、確認のしようがありません⦆


 セミナスさんでもわからない?


⦅そういう未来は見えません。先ほどの言葉に関しても同様なため、イレギュラーな事態の可能性があります。もしくはその予兆か。まるで、そういう未来を……⦆


 そこでセミナスさんの声が途絶えた。

 妨害されている訳ではなく、思考に集中し始めたんだと思う。

 何かしらに引っかかりを覚えたのかもしれない。


 それでもセミナスさんのASは動き続けている。

 攻撃と防御をしっかりと行っているが、その動きにセミナスさんの意思は見られない。

 自動攻撃、自動防御って感じ。

 様子は、大魔王ララとどこか似ている気がする。


 それにしても、先ほどの一撃には肝が冷えた。

 セミナスさんの指示がなければ、間違いなく胸部……心臓が貫かれていたと思う。


 今思い返すと、あの瞬間だけは、しっかりとした意思――殺意を感じたような気がする。

 ……瞬間的にあれだけの動きを見せたのだ。

 という事は、意思が戻れば……もっと素早く、激しい攻撃が繰り出されるのは間違いない。


 それに、詩夕とシャインさんが魔王マリエムと魔王リガジーを押さえ込んでくれているけど、そんな状態がいつまでも続くとは思えない。


 倒すか……考えたくはないが、倒されるか……。

 予測不能な事はいつ起きてもおかしくないんだから。


 セミナスさんには思考に集中してもらって、俺は俺で出来る事をやるのが、きっと最善手なはず。

 幸いというか、再び機械的な動きになった大魔王ララが相手なら、慣れた今なら俺とエイトだけでも対抗出来る。


 一旦下がり、エイトと合流。

 大魔王ララが追ってくるが気にしない。

 今の状態なら、セミナスさんなしでも、俺の判断で避けられる。


 大魔王ララの拳や手刀を避けつつ、エイトにも牽制を行ってもらいながら、状況を簡潔に説明。


「……なるほど。つまり、ご主人様とエイトで大魔王ララを倒す。もしくは、追い込めば良いのですね。そのために、主攻はエイトが務めると」

「そういう事」


 さすがは、この世界に来て、アドルさんたち、セミナスさんの次に行動を共にしたエイト。

 俺に攻撃が向いていないとわかっている。

 話が早くて助かった。


「要約すると、ご主人様が受けに回り、エイトが攻めに回る……つまり、主従逆転モノをお望みだという事ですね?」


 ……確かに、俺が大魔王ララの攻撃を受けている間に、エイトに攻めてもらうという事。

 それで合ってはいるんだけど、なんかニュアンスが違うというか、捉え方が間違っているような気がする。


 おかしいな。

 もうそこそこ長い付き合いなのに、そんな事あるだろうか?

 でも、ここで否定して、エイトのやる気が下がるような事は避けたい。


「……大体そんな感じで!」


 でも、大体そんな感じじゃないとも思う。


「かしこまりました!」


 エイトのやる気の上昇を感じる。」

 やる気になってくれたようで何より。

 気分的な問題かもしれないけど、エイトの放つ魔法の威力と数、速度が上がった気がする。


 これは、主攻をエイトに任せるにあたって良い事だ。

 それに、何も俺は状況を伝えるためだけに、エイトと合流した訳じゃない。


 俺とエイトで大魔王ララを倒す、もしくは追い込むためには一つの問題があった。

 それは、俺、エイト、大魔王ララ、三者間の距離。


 大魔王ララが俺に肉薄した事で、エイトの迎撃の魔法が間に合わないようになってしまったのだ。

 取りこぼしが出てくるようになってしまう。

 それは仕方ない。


 よほどの差がない限り、攻撃は距離の近い方が先に届くのだから。

 後衛として少し離れていたエイトは迎撃だけを行っていたが、それが主攻ともなれば距離による遅延は、相手に対処の時間を与えてしまう。


 でもそれは、その距離がなくなれば、エイトの主攻が大魔王ララに通るという事でもある。

 その分、エイトも大魔王ララの攻撃に晒される事になるが、そこは俺が踏ん張るところ。


 エイトに対して、大魔王ララの攻撃が苛烈になるが、それを決して通さず、エイトを攻撃に集中させる。


「させるかよっ!」


 大魔王ララのエイトに向けての魔法を、ASで防ぐ。

 その隙を突いたエイトの魔法が大魔王ララに当たる……が、大した傷は受けていない。


「……まっ、あれだな。チクチクとやっていればその内……ちりも積もればってヤツだな。うん」

「ご主人様。勘違いしているようですが、今のは牽制として放ったのが、偶々当たっただけ。エイトの魔法の威力はあんなモノではありません。きちんとした魔法が当たれば……そう、黒焦げです」


 いや、疑っていないから。

 エイトの魔法ならやれると信じているからこそ……任せるのだ。


 ただ、今のままだと駄目だ。

 エイトに溜めの時間がないために、威力が伴わない。

 その時間を作るのが、今俺に出来る事。


 ASを両腕装備にして、大きく深呼吸。


 エイトに視線を向ければ、俺の意図が伝わっているのが見てわかる。

 なら、あとは行動するのみ。


 大魔王ララの注意を俺だけに向けるため、至近距離でやり合う。

 ASとはいえ、まともに受けては駄目だ。

 壊れはしないだろうけど、それでも受けた衝撃で吹き飛んでしまう。


 だから、やるなら受け流し。

 大魔王ララの攻撃を、両腕にある盾の表面を使って受け流し続ける。

 一撃ももらう訳にはいかないという思いが、これまでで一番集中させていた。


 どれだけの時間を耐えられたかはわからないが、エイトの声が聞こえて気付く。


「『魔力を糧に 我願うは 七種の力による煌爆こうばく 七光爆雷』」


 言い切るのと同時に俺も行動を起こす。

 攻撃は確かに不得手だけど、体当たりくらいなら出来る。

 エイトの声で大魔王ララの意識が俺から少し逸れた瞬間、体当たりをして大魔王ララの体勢を少し崩す。


 体当たりの反動を利用して、大魔王ララと少し距離を取ると、色の違う七つのレーザー光線が俺に当たらないような軌道を描きながら通り過ぎていく。


 大魔王ララが迎撃しようとするが、エイトの魔法が先に到達する。

 七つのレーザー光線が大魔王ララに全命中し、紫電が走る大爆発が起こった。


 ……これで。


「やりましたね」


 エイトがそう言う。

 いや、それフラグ。

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