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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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よく見れば、どうという事はなかったってない?

 魔王マリエムの言葉に反応して、大魔王ララが動いた。

 セミナスさんの放ったASを片手で掴みながら、玉座から腰を上げて立ち上がる。

 魔王マリエムが言った言葉「そいつらは敵」によって、大魔王ララが俺とエイトに視線を向けてきた。


 ただし、やはりと言うべきか、そこに感情は含まれていない。

 まだ無表情のままだ。

 詩夕やシャインさんに視線が向けられないのは、魔王マリエムと魔王リガジーが相手をしているからだろう。


 大魔王ララが襲いかかってくる。

 玉座に興味などないと言うように躊躇なく離れ、瞬時に前に。

 途中で俺の視線を遮るように、掴んでいたASもぶん投げてきた。


⦅私のASを投擲するなど生意気な! しかも、マスターに向けてというのは許容出来ません!⦆


 といっても、投げられたASが俺に当たる事はない。

 セミナスさんが操り、空中で固定されるようにビタッととまり、そのまま再度大魔王ララに向けて射出され……なかった。


⦅面倒な真似を⦆


 セミナスさんが悪態を吐きつつも、ASの形状を先端が尖ったモノから重騎士が持ちそうな大盾に変化させる。

 同時に、大魔王ララが魔法を発動。


 空中に数十の魔力弾が出現し、一斉に襲いかかる。

 俺の後方でエイトも迎撃を行うが、如何せん俺との距離があった。

 今は大魔王ララの方が俺に近い。


 その差でエイトの迎撃だけではすべてに対抗出来ず、セミナスさんの大盾ASに、俺も自分のASで防ぐ事になった。


 というか、セミナスさんがちょっと後手に回っている?


⦅申し訳ございません。『未来予測』で常に先手を取ろうとしているのですが、まるで私という存在を知っているかのように対抗し、妨害して手を変えてきています。まぁ、大魔王のスペックだからこそ、可能な事でしょうが⦆


 なるほど。

 魔王マリエムが逃げ出して、俺たちがここに来るまでは時間があったし、その間に情報の共有でも行ったのかもしれない。

 色々鋭かったし、そういうスキルを持っているかもしれないという推測も伝えている可能性が高い。


⦅問題ありません。それでも、上回ってみせます⦆


 大丈夫。心配していない。

 セミナスさんならそれぐらいやってのける。


 それに、先ほどまでとは違って、大魔王ララが自らこちらに近付いて来ているのだ。

 手の届く範囲まで近付けたのなら、こちらにも倒すチャンスが更に広がる……はず。


 そのチャンスは、きっとセミナスさんが見つけるはずだ。


⦅お任せください⦆


 それに、こっちも俺一人だけじゃない。


「エイト! 背中は任せた! 好きに動いてくれ! こっちで合わせる!」

「背中を任せる。つまり、相棒としてではなく、これからは夫婦として共に歩んで欲しいという事ですね?」

「いや、違う」

「これが、初めての共同作業になる訳ですね! 頑張ります!」

「だから違うって言っているでしょ!」


 大魔王ララから目を逸らす訳にはいかないので確認出来ないけど、頑張るぞ、と拳でも握ってそうだ。

 その行動を取る前に、攻撃を行って欲しい。


 そんなこちらの状況など気にしないとでも、大魔王ララが襲いかかってくる。

 魔法はエイトに妨害されると認識したのか、魔法は発動し続けてエイトの行動を封じ込め、そのまま俺に肉弾戦を仕掛けてきた。


 大魔王ララが手刀を放つような構えを取る。

 防ごうとした瞬間、既に指先が眼前に迫っていた。


「うわっ!」


 本能で避ける。

 少しだけ頬が切れたが、それだけ。

 今のを避けられなかったら、目が切られていたか、そのまま頭部が貫かれていたかもしれない。

 いや、貫いていただろうな。


「………………」

「いや、ちょっ!」


 というか、ちょっと考える時間をくれませんかね?

 大魔王ララと、そのまま肉弾戦を行う。

 正確には、大魔王ララの攻撃に対して、俺は全力で防ぎ、回避出来るものはしつつという感じ。


 実際、大魔王ララの攻撃は、どれも一撃で俺を殺しかねない。

 いや、殺しに来ている。

 しかも、どれも速く、受けとめた衝撃だけで腕が直ぐ痺れそうになっていた。


 そんな状態で、エイトに向けて魔法を放ち続けているのだ。

 ……もしかすると、エイトを近付けさせないようにしている?


⦅その可能性はあります。といっても、似たような存在だからという訳ではなく、一人ずつ倒した方が対処しやすいとか、そういった意図であると思われます⦆


 だろうね。

 俺もそう思う。


 というのも、大魔王ララの動きにそういった要素があるのだ。

 確かに、繰り出される攻撃はどれも鋭く、威力が高い。

 本当に一撃で命が刈り取られるだろう。


 でもそれは当たれば。


 数度やり合って、わかった事がある。

 なんというか、どれも機械的な動きだった。

 こうすればこうして、そうすればそうして、といった決められた手順で動いているだけに過ぎないのだ。


 意思がどこにも宿っていない。

 だから、一度慣れてしまうと、どれだけ鋭くてもタイミングさえわかれば避ける事が出来る。


 本来ならそのタイミングがシビアかもしれないが、そこはそもそも問題にならない。


⦅造作もない事⦆


 セミナスさん管理による、完璧のタイミングで避ける事が出来た。

 それに、俺が防ぐか避ける事に集中して学習し、自分だけでも出来るようになれば、セミナスさんの負担が減る。


 そうなれば、セミナスさんも大魔王ララへの攻撃に集中出来るという事だ。

 機械的な動きである以上、それはそう遠くない。


 また、大魔王ララに対して圧力をかけるかのように、エイトが魔法の威力と数を増していく。

 俺の方だけではなく、エイトの方にもより対処し始め……そこだ! という瞬間が――鳥肌が立つ。


⦅しゃがみ回避!⦆


 切迫したセミナスさんの声に反応してしゃがみ込む。

 同時に、俺の上半身――胸部辺りがあった場所に、大魔王ララの拳があった。

 今の……反応出来なかった、と驚愕していると、大魔王ララが殴りかかったような姿勢のまま、しゃがみ込んでいる俺に視線を向ける。


「駄目。今直ぐ逃げてください」


 大魔王ララは、確かにそう言う。

 俺を見るその目には、確かな意思の光があった。

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