表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
501/590

いつも通りって安心しない?

 左右で激しい戦いが始まった。


 シャインさんは、魔王リガジーと。

 詩夕は、魔王マリエムと。


 そして、俺とエイトは大魔王ララの下へ……行きたいんだけど、正直言って、左右の戦いが怖い。

 正確に言えば、左右の戦いに挟まれているところを進んで行かないといけないから、巻き込まれそうで怖い。

 何かしらの余波とか飛んで来そうだ。


⦅問題ありません。何かあれば私が対処しますし、そもそも、マスターに攻撃を通すほど、勇者Aと暴走エルフは弱くありません⦆


 強い、とは言わないんだ。


⦅まぁ、私の方が上ですので⦆


 否定はしづらい。


「行かないのですか?」


 エイトも催促してくるし、行くか。


「はっ! ご主人様。エイトは直感が働きました」

「直感?」

「はい。ご主人様は遠回しに、エイトと手を繋ごうとしている訳ですね。『怖くないか? 怖いなら……ほら。これなら怖くないだろ』とご主人様がエイトに向けて手を差し伸べて」

「よし。行くか」


 スタスタと歩を進める。


⦅マスターもそれならそうと言ってくれれば良いのです。まぁ、私とは常に手を繋いでいるような……いえ、心と心を繋いでいますね⦆


 歩く速度が上がる。

 それでも、エイトはしっかりと付いて来ていた。


「ご主人様は照れ隠しで素直ではなくなる、とエイトは学習しました」

「それは間違った学習だ」


 エイトは、いつだってブレない。

 だからこそ、どんな時も接しているといつも通りを思い出して、自分を落ち着かせる事が出来る。


 たとえ、大魔王ララを前にしても。


 まぁ、恥ずかしいので口には出さないけど。

 それに、調子に乗りそうだ。


 左右で起こる戦いに挟まれながら進んでいく。

 時折攻撃――特に魔王マリエムから魔法が放たれるが、詩夕がきちんと対処してくれた。


 魔王マリエムの封印が解けたようだけど……大丈夫だよね?


⦅そうですね……問題ありません。本来の力を発揮すれば、如何ようにも対処可能です⦆


 問題ないなら、あとは勝利を信じるだけ。

 シャインさんに関しては、そもそも心配はしていない。

 俺たちの中で最強なのはシャインさんだから。


 ……戦闘好きの最狂でもあるけど。


 それに、魔王たちよりも先に大魔王ララを倒さないと強化されてしまう。

 つまり、俺が先に大魔王ララを倒さないと、二人も魔王を倒せない訳だ。

 二人なら、それまで耐えられるはず。


 そして、俺とエイトは大魔王ララと対峙する。


     ―――


「………………」

「………………」


 なんの反応もないというか、僅かながらの反応はあるのだが、「よくここまで来た」とか、「世界の半分をやる」みたいなお決まりのセリフ的な事を言われると思っていたんだけど、そういう事は一切ない。


 ただ、無表情でこちらを見ているだけ。

 近付けば、こちらに視線を向けてくるだけの反応。

 更に近付けば――。


「………………」


 センサーに反応して動く機械のように、迎撃してくる。

 といっても、玉座から腰を上げる事はなく、魔法を放ってくるだけ。

 即座にエイトが魔法で撃ち落としていく。


 再び一旦距離を取ると魔法を放つのをやめ、無表情でこちらを見てくるようになる。

 ……う~ん。どうしたものか。


 反応は僅かながらあるけど、思っていたのと違う。

 ただ自動で迎撃されているだけで、言葉を交わす事をしない。

 喋れない訳ではないだろうけど……やっぱり感情が抜けているから?


⦅内心までは見通せませんが、大魔王を倒すという事に変更はありません⦆


 それもそうだ。

 でも、どう倒せば良いの?


神造超生命体ハイブリッド・ホムンクルスであろうとも、その核には『仮初の生命石』が使用されています。それを砕けば終わりです。場所は……胸部中央である事を確認しました⦆


 わかった。

 エイトにもその事を伝えて、一気に駆ける。


 セミナスさんのAS操作の精度は、俺から離れれば離れるほどに落ちていく。

 それは逆に、近ければ近いほど上がるというか、より精密な動きが出来るという事だ。


 攻撃が不得手の俺が大魔王ララに致命的な一撃を与える事は出来ないが、セミナスさんの操るASなら出来るはず。

 その精度を高めるために、俺は大魔王ララに近付く。


 当然、大魔王ララは先ほどと同じように自動迎撃を開始。

 魔法を次々と連発してきた。


⦅一撃でもまともに当たると戦闘継続不能になるほどの威力が込められていますので注意してください⦆


 序盤でやる攻撃ではないと思う。

 俺一人であれば対応するだけで足がとまり、その場から動けなくなるほどの物量と連射だが、こちらにはエイトが居る。


「ご主人様には当てさせません」


 大魔王ララと同威力、同物量、同連射で、エイトがすべて相殺していく。

 俺はエイトを信じて、速度を緩めず前へ。


 それに、多分だけど……今が絶好の好機であり、最大の好機なのだ。


 大魔王ララは、下手をすればセミナスさんの「未来予測」に抗える存在。

 いや、多分抗える。

 完全な力でない今の状態で、セミナスさんと対等のようなモノなのだ。


 魔王たちを倒して大魔王ララが力を取り戻せば……セミナスさんでも対抗出来なくなる可能性が高い。

 倒すなら、今なのだ。


 なので、相殺される魔法の余波で吹き飛ぼうとも、転がされようとも前へ向かう。

 階段を駆け上がっていく途中で、セミナスさんがASを起動。

 先端が尖った盾を形成したのは、大魔王ララの胸部中央を貫くためだろう。


 大魔王ララに更に近付いた事で放たれる魔法の密度が上昇。

 エイトもそれに合わせて密度を増すが、大魔王ララに近付いていく度に相殺の余波がより激しくなっていく。


 なので、俺もASを起動。

 重みで速度を緩める訳にはいかないので、丸盾を形成。

 魔法本体を受けると体ごと飛ばされそうだけど、余波ならこれで充分だ。


 余波を防ぎつつ、更に近付いた事でセミナスさんのASが動く。

 射出された弾丸のように、大魔王ララの胸部中央に向けて発射。


 妨害するように射線上に現れる魔法も貫通して、大魔王ララの胸部中央に――。


「戦いなさい! ララ! そいつらは敵よ!」


 魔王マリエムの声が聞こえたかと思うと、大魔王ララが機敏に反応して、迫るASを片手で掴むように受けとめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ