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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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熱中すると周囲の音が聞こえない

 ふっふっふっ。俺は見切った。

 瞬間移動魔法なんてない。

 それは残念だけど……本当に残念だけど……。

 でも、仕掛けはわかった。


 なので、まずはアドルさんたちに説明をしないと。

 もしかしたら騙される可能性もある訳だし――。


「……否定する材料の方が少ないか。瞬間移動魔法であると仮定した方が話は早いかもしれんな」

「そうですね。違うと否定するよりも、そうだと肯定する方が難しいし」

「無駄な議論になりそうだけど……付き合わないと駄目?」


 ………………。

 ………………。

 ん? んん? どういう状況?

 あれ? 俺が思考している間に一体何が?

 え~っと、アドルさんとインジャオさんが、何やらボロッちい剣を手に取って呻いていて、ウルルさんがどうでもよさそうにしている……のを、アンディズムがにこやかな笑みで見ている、と。


 何がどうなってこんな状況になっているかはさっぱりわからないが、何やらどうにかしなければいけないような気がする。

 いや、待て。

 もしかしてだけど……既に状況は先に進んでいて、アンディズムが真実の証明として瞬間移動魔法(嘘)でボロッちい剣を持ち運び、アドルさんたちが検分しているのが今……とか?


 ……あり得る。

 非常にあり得る。

 なら、俺の結論をアドルさんたちに伝えれば一発だな。


 それにしても、俺は自分の脳力が恐ろしい。

 アンディズムの仕掛けを即座に見破り、状況も瞬時に見抜く。

 この灰色の脳細胞の前に敵は居ない。


⦅……ふっ⦆


 ………………。

 ………………。

 しまったぁ~! いや、恥ずかしい!

 両手で顔を覆いたい。


 セミナスさんにバッチリ見られてしまった。

 ……また弱みを握られたという事か。


⦅そう悲観する事はないと思いますが? そもそも、以前にも言いましたが、私はマスターの一部ですので――⦆


 まぁ、今更そういうのが一つや二つ増えたところで、何かが変わる訳でもないから別に良いか。


⦅マスターのそういうところ、好感が持てます⦆


 とりあえず、まずは考えていた通りに、アドルさんたちに説明をしないと。


「集合!」

「まぁ待て、アキミチ。議論はここから盛り上がって面白くなるのだ」

「必ず解明してみせますので、少々お待ちを」

「……え? 行かないの?」


 ウルルさんだけが、こっちに来ようとしてくれた。

 アドルさんとインジャオさんは……駄目だ。

 もうほとんど信じているようなモノである。


 ただ、このままでは話が進まないので、もっと大きな声で再度呼びかけた。


「集合っ!」

「だから、少し待て、アキミチ!」

「もう少し……もう少しで何か閃きが……」

「いや、ほら、結構本気で呼んでいるみたいだけど?」

「だから! もう全部説明するから集まれって言ってんの!」


 動きそうにないから俺が動く。

 最初からそうすれば良かった。


「こっちに来たのか、アキミチ」

「丁度良いですね。第三者の意見が欲しかったのですが、アキミチはこの剣をどう見ますか?」

「アキミチはそのために来た訳じゃ」

「うわっ、なんか汚い。でも、確かに使い込まれている感はある……かな? 剣身のボロボロ具合とか、柄の黒ずみとかに違和感は」

「いやいや、違うでしょ! アキミチ! 何かを説明するために来たんでしょ!」


 ……はっ! しまった! ついつい、アドルさんとインジャオさんの話に乗ってしまった。

 引き戻してくれたウルルさんに感謝。

 ………………。

 ………………。

 でも、なんか歴史を感じさせるモノって良いよね。


 見ているだけでワクワクするというか……じゃなくて!

 早速とばかりにアドルさんたちと円陣を組む。

 一応、内緒話だしね。

 アンディズムが首を傾げているが気にしない。


 簡潔だが丁寧に説明していく。

 あのね……これこれこういう事で……それがそうなって……ああなる訳で……わかった?


 最後に理解したかを尋ねると、アドルさんが真面目な表情を浮かべて俺を見てくる。


「……あれ? わかり辛かったですか?」

「いや、充分に理解出来た。だが、一つ確認したいのだが」

「何を?」

「今の話は、セミナスさんに聞いたのではなく、アキミチが独力で導き出した、という事で間違いないか?」

「そうだけど」


 素直に答えると、アドルさんは目元を押さえる。

 インジャオさんは天を仰ぎ、ウルルさんは驚きの表情だった。


「……まさか……まさか、アキミチに諭される日が来るとは」

「指導している者として、己を恥じ入るばかりです」

「本当にアキミチ? 実はセミナスさんがアキミチの体を使って喋っているとか?」


 いやいやいやいや! いや、これはアレだよ! 不本意だよ!

 俺だってやる時はやるんだから!

 やれば出来る子だって自負しているんだから!

 親友たちからも、偶に鋭い時があるって言われ……言われ………………う~ん、そういう記憶に思い当たらない。


 というか、セミナスさんが俺の体を使って喋るとか、ちょっとホラーなんですけど!

 そんな事出来ないよね? セミナスさん!


⦅………………⦆


 否定して~!

 お願いだから否定して~!

 俺も否定を願いつつも、出来るんだろうなぁ……と思っていたけど、そこは否定して欲しかった。


⦅わかりました。でしたら答えましょう。出来ま⦆


 待って! いきなり言わないで!

 まだ心の準備が出来ていないから!

 いや、違う! もう言わなくて良いから!

 聞いたら後戻り出来なくなっちゃう!


⦅仕方ありません。マスターがそう願うのであれば、私はこの回答を控えたいと思います⦆


 ありがとう……本当にありがとう!

 知らない方が幸せな事って、きっとあると思うんだ。


 と、そこで、アドルさんたちから怪しむような視線を向けられている事に気付く。

 何その視線………………あっ!


「何も言わないという事は、やはり」

「駄目ですよ、アドル様。これ以上の追及は酷というモノです」

「見守りましょう。優しく見守りましょう」

「いや、違うから! 勘違いしてるから! 俺! 俺です! 本当に俺だから! ちょっ、優しい眼差し向けんな! わかってるからなって頷くな! 間違えてるから! その優しさ、間違えてるから!」


 くそ~! 俺だってやれる時はやれるはずだ!

 だってほら……その、ね……アレだよ……ほら………………そうだ!

 直近なら、ミノタウロスを単独撃破したし!

 ……まぁ、事前に用意された装備のおかげという一因もあるけど。


⦅マスターの記憶を閲覧して確認しましたが、一因というよりは、ほぼ九割⦆


 あ~あ~、聞こえな~い!


「それにしても、結界を使用して出来るように振る舞うとは……許せないな、これは。アキミチもそうだろう?」

「結界を見つけたのは偶然でしょうけど、神封印の場を見つけたのなら、報告を挙げるのが通例ですのに……己の利益のみを求めるのは許せません。ね? アキミチ」

「やっぱりろくでもないヤツだった! これは懲らしめないと! 徹底的に懲らしめないと! もちろん、アキミチも協力してくれるよね?」

「え? あ、はい……」


 勢いに押されて返事をしてしまった。

 まぁ、懲らしめるのは俺も賛成だけど。


 という訳で、更に顔を突き合わせ、アドルさんたちと軽く相談した。

 結果――。


「「「「お世話になります」」」」

「あいよ。部屋は全部空いてるから好きなところを使いな」


 村で一泊する事になった。

 アンディズムに関しては「大変参考になりました。色々と考えなければいけないため、一旦お暇させて頂きます」と、あの場は解散している。

 今は、この村唯一の宿屋に来ていた。

 二階建ての木造だけど、門番の男性が言っていたほどボロいようには見えない。

 実際、使う部屋を選ぶために適当に開けて中を見て回ったけど……どの部屋も綺麗に手入れされていた。


 あっ、俺、この角部屋で。


 そして、今後の行動についてだが、アドルさんたちはルガニに関する情報収集を行う事になった。

 得られる情報によって対処を考えるそうだ。

 まぁ、俺はこの世界のルールなんてモノはまだよくわからないから、アドルさんたちに任せようと思う。

 俺はその間に、神様解放を行うのだ。

 セミナスさんが何も言わないので、この行動に問題はないっぽい。


 よし、頑張るぞ!


 アドルさんが選んだ一番広い部屋に集まり、部屋の中央で全員手を重ね……。


「「「「えいえいおー!」」」」


 やる気を漲らせる。

 ちなみに、アドルさんは一人だが、インジャオさんとウルルさんは同室だ。

 ……親友たちが恋しい。

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