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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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あれってどうやって見破るの?

 真新しい木造の建物の入り口横に――稀代の魔法使い・アンディズム様の住居はこちら――と書かれた看板があった。

 自分を様付けするとは……自己主張が激しい? 俺様?


 キャラ付けの可能性が一番高いと思うけど、どちらにしてもなんか面倒臭そうな感じがする。


「アンディズム様! アンディズム様! 御在宅ですか? 遂に旅の方々が現れました! まさかこの村に現れるなんてびっくりですよね! なので、是非ともアンディズム様の瞬間移動魔法を見せて頂けませんか? アンディズム様! アンディズム様!」


 入り口扉をバンバン叩きながら、門番の男性がそう声を張り上げる。

 ちょっ、そういうところ、直した方が良いと思うけど?

 このまま放っておくと、鍵がかかっていても勝手に中に入りそうだな。


「居ないんですか? アンディズム様。入っても良いですか? 入りますよ?」


 ほらね。

 って、ちょっと待って!

 それはアレだよ? 不法侵入だよ?

 法律で駄目だって定められているでしょ?

 ……この世界に法律って、あんのかな。


 いや、でもほら。たとえなかったとしても、人として……という部分に触れると思うんだけど。

 ガッツリ触れると思うんだけど。

 緩いの? この村はそういう事に緩いの?


 というか、一番問題なのは、このままだと俺とアドルさんたちも共犯という形に……。


 ………………。

 ………………。

 アドルさんたちと視線が合い……一つ頷く。


「「「待て待て待て待て!」」」

「大人しくしなさい!」

「うおっ! 急にどうしたんですか?」


 俺、アドルさん、インジャオさんで門番の男性を羽交い絞めにし、ウルルさんには注意をして貰う。

 えぇい! 暴れるな!

 ドタバタやっていると、扉が向こうから開かれる。


 出て来た人物は、ボサボサの茶髪にちょっと長い髭に、気怠そうな目付きの細身の男性。

 三十代くらいかな?

 寝起きなのか、寝間着のような服装だった。


「全く……チミはいつも煩いですね。毎度毎度静かに訪ね……ろ、と……」


 そんな男性の視線が、俺とアドルさんたちを順に見ていき……ウルルさんで止まり、目が大きく見開かれる。


「あ……な……なんて可憐な!」


 そう言った途端、中から出て来た男性は即座に踵を返して中へと引っ込んでいった。


 ………………。

 ………………え? ん? いやいや、え?

 余りの出来事に、俺、アドルさん、インジャオさんは、門番の男性を羽交い絞めしながら、視線を一度合わせてからウルルさんに向ける。


 ウルルさんは恥ずかしそうに頬に手を当て、体をクネクネとさせていた。


「そんな可憐だなんて……本当の事を」

「「……は? どこが?」」

「ウルルはどちらかというと、健康美の方だと思いますけど」

「……あ?」


 ウルルさんの背後に、凶悪な赤い光をこちらに向けて輝かせる肉食獣が見えた。

 俺とアドルさんは、ひぃっ! と直立不動。

 インジャオさんがまぁまぁと宥めるが、まだ治まらない模様。


 しまった。門番の男性を解放してしまった!

 でも、今はそれどころではない。

 どう見ても、ウルルさんは可憐ではないと思う。絶対思う。

 そこに間違いはないはず。

 だよね~、とアドルさんと一緒に自分たちの正当性を主張する。


 ……ん? 健康美?


 疑問に思っていると、家の中に戻った男性が戻ってきた。


「初めまして。狼獣人の可憐なお嬢さん。吾輩はアンディズムと申します。この度、誰も成しえなかった瞬間移動魔法を開発しただけのしがない魔法使いです。これから長い付き合いになるかもしれませんし、どうぞ宜しくお願いしますね」


 何やらポーズを付け、言い切ると同時に白い歯がキラリと光る。

 その風貌は先ほどまでと違って、身綺麗になっていた。

 ボサボサだった髪は綺麗に整えられ、髭は何やらくりんとカールっている。

 目にも何やら力が宿っているように見えるし、服装も貴族が着るような立派なモノになっていた。


 しかし、俺にはわかる。

 いや、見切ったと言って良いだろう。

 間違いない……あの服、一張羅だ。


 そう見切ったあと、言われたウルルさんに視線を向ける。

 ……引いてた。

 嫌悪感が顔に出過ぎている。

 それに気付かない一張羅の男性――アンディズム……さん? 様? ……いや、なんか呼び捨てで良いや。


 ただ、気付いて欲しい。

 インジャオさんがドス黒いオーラを発している事を。


 俺とアドルさんは、危機を感じて同時に一歩後ろに下がる。

 気が合うね、俺たち。


「吾輩の下に来られたという事は、瞬間移動魔法を見たいという事ですね? 可憐なお嬢さんのためなら、いくらでも披露しましょう。ささ、こちらへ」


 そう言って、アンディズムが俺たち、というかウルルさんを誘導するように片手を振る。

 ウルルさんの嫌悪感が更にアップ。

 人に向けてはいけない表情を浮かべている。

 対するアンディズムの表情は崩れない。

 ……強い。ハートが。


 ウルルさんが集合をかけてきたので、すごすごと集まって、こそこそと話し合う。


「心の底から嫌なんですけど? 心の底から嫌なんですけど? もう出て行きません?」

「「「………………」」」


 切実さを感じる。

 ただ、インジャオさんだけは力強く頷いた。

 俺とアドルさんは異論を述べる。


「……でも、行かなきゃ魔法見れないし」

「見ない事には、使えるかどうかの判断が出来ん。今後のためにも、確認は必要だ」

「うぅ……そうですよね」


 嫌々ながらも同意したウルルさんは、インジャオさんを盾にして、アンディズムのあとを付いていく。俺とアドルさんも。

 インジャオさんは頼られて嬉しそうだけど……殺る気は満々っぽい。


 ちなみに、門番の男性はアンディズムがしっしっと追い払った。


 アンディズムが向かった先は、村からそう離れていない場所。

 そこの特徴を挙げるなら、ところどころ戦闘跡が見え隠れし、少し遠くに林というか森があって、景観をぶち壊す黒い神殿が建っているくらいかな。


「ここ近年の学説なのですが、魔力は大気中だけではなく、地中にも川のように流れている、というモノがありまして、吾輩もその説を推しているのです。何故なら、この場所こそ、その地中を流れる魔力が集まる箇所の一つなのですから。故に、この場所でなら吾輩の瞬間移動魔法も発動出来るのですよ。何しろ、まだまだ魔力消費が激しく、改良の余地がまだまだある発展途上魔法なので」


 アンディズムが自嘲するように肩をすくめるが、どことなく自慢しているように聞こえるのは、きっと気のせいじゃないと思う。


「「「……ここ近年の学説」」」


 アドルさんたちが考え込む。

 ……なんか、元の世界でも似たようなのがあったような……まぁ、良いか。


「それでは、早速その魔法を見せてくれ」

「………………」


 アドルさんの言葉に、アンディズムは肩をすくめて固まった。

 ………………。

 ………………。

 お願いします、と俺とアドルさんはウルルさんに視線を向ける。


「はぁ………………あの、魔法を見せて欲しいのですが?」

「かしこまりました!」


 アンディズムの調子の良さにインジャオさんがイライラしているような……ちょっと待って。

 あれ? なんだろう。

 なんか、自分で思った事に引っかかる部分があったんだけど。


「狼獣人の可憐なお嬢様のために、吾輩の魔法をお見せしましょう!」

「……うぇ」


 なんだろう……一体何に引っかかったのか……。

 喉くらいにまで上がってはいるんだけど……。


「いきます! はあああぁぁぁ………………瞬間移動魔法! はっ!」

「「「なっ! 後ろに小さく跳んだかと思えば姿が消えた!」」」


 んん~………………。

 ………………。

 あっ! わかった!


「はっ!」

「「「前に跳ぶようにして現れた!」」」


 どうしてこんなところに戦闘跡があるのか疑問に……疑問に………………本当にこれが引っかかったんだろうか?

 なんか違う気がする。

 いや、確かに、戦闘跡があるのは不思議だけど。


「瞬間移動魔法の証明として、こちらの剣をお持ちしました。こちらは下大陸西部、軍事国ネス近郊にある戦場に棄てられていた剣でございます! さっ、どうぞ。好きなだけ手に取って確かめて下さい。戦闘の心得のある方なら一目でわかるはずです」

「……う~む。確証は得ないが……意図的に使い古した跡はないな」

「そうですね。偽装ではなく、本当に使い潰した状態ですし、この剣が戦闘に使われていたのは間違いないと思います」

「気分が悪いので、もう帰りませんか?」


 けど、他にあるモノなんて、黒い神殿くらいしか……。

 ………………。

 ………………。

 あああああぁぁぁぁぁっ! 黒い神殿といえば!


「……となると、本当に」

「その断言は難しいですね。ただ、偽物であるという証明も出来ないのは事実です」

「早く帰りたい……この場から去りたいという私の思いも事実ですよ」


 黒い神殿といえば、神様が封印されている場所!

 その周囲には、この世界の人たちだと侵入出来ない結界が施されている。

 という事は、その結界を上手く利用しているんじゃないだろうか?

 ………………つまり、魔法でも手品でもなんでもない訳か。


 ……まぁ、魔法ならアドルさんたちがどうにかするだろうし、手品だった場合は逆に困るんだけどね。

 何しろ、手品のタネを見破るとか、俺には出来ないし、出来た事もない。

 いくら見てもさっぱりだったからなぁ。


 詩夕や常水は、普通に見破っていたけど。

 二人から説明もされるんだけど、いざ実際に見ても上手く誘導されて無理だったし。

 だから暴くのをやめて、見たままを楽しむ事にしたんだよな。


 でも、セミナスさんだったら、普通に暴きそうだよね。


⦅見抜けないモノはないと自負しています⦆


 否定出来ない。


 と思考が逸れた。

 確か、最初に説明を受けた時、インジャオさんが結界の向こう側に出たと言っていたから……たとえば、結界の向こう側に何か小道具を用意しておいて、これは〇〇から持ってきましたとか言えば……信じるかもしれない。


 ……って、今はそれもどうでも良くない?

 だって、黒い神殿があるって事は……そこに神様が封印されているって事だよね!

 インチキ魔法の証明より、そっちの方が重要じゃない?


 おぉ、まさか、適当な場所から森を出て、一番近くにあった村に神様が封印されているなんて偶然、きっとセミナスさんでも驚きだね!


⦅この私に、偶然が起こると本当に思っているのですか?⦆


 ……いえ、思いません。

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