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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第二章 竜とエルフ
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別章 飛来する存在

 大魔王軍襲来の報告に来た騎士は、明日には姿を見せると思われます、と追加の報告も行う。

 この報告に、ビットル王国は慌てふためいた。

 何しろ、先の戦いからそれほど日が開けていないため、治療を受けている者の方が多く、万全の態勢とは言い辛いのだから。

 詩夕たちが短期間で万全の状態まで回復したのは、「勇者」スキルがあればこそである。


 そのため、戦闘可能状態なのは前回の半分にも満たない。

 報告によれば大魔王軍も前回より数は少ないが、個で比べた場合の戦力比率が大きく違う以上、楽観視出来る要素足りえなかった。


 それでも、ここは三大国の一つ、ビットル王国。

 人類を守る盾の国である以上、迎え撃つという選択しかない。

 急ピッチで戦闘準備が進められていった。



 手伝いを申し出た詩夕と常水は、武器庫で損傷のチェックを行う。

 ちなみに、女性陣は食事の手伝いに向かい、樹はフィライアに連行された。

 一緒に馬車に乗る気満々だったのに、延期になったが事が原因だと思われる。

 詩夕と常水は、一切関わりませんと樹を見送ってチェックを始めた。


「……大丈夫か? 詩夕。俺たちの中で一番消耗していたのだから無理はするなよ」


 詩夕が嬉しそうに笑みを浮かべた。


「僕は大丈夫だよ、常水。『勇者』スキルの影響で回復力もかなり上がっているから」

「それなら良いが……無理をしていると判断したら、たとえどのような戦況だろうと後ろに回すからな」

「わかっているよ。常水の判断を信じるから、僕が無理していると思ったら問答無用で止めてくれて構わないよ」

「自分で止まる気はないのか?」

「ないね。無茶してどうにかなるなら、普通に無茶すると思うし。それは常水も同じだろ?」

「否定は出来ないな」


 揃って笑う二人。

 雰囲気が少し明るくなるが、それは直ぐに引き締まる。


「それにしても、間を空けずに来る辺り、後詰めか?」

「そうだと思うよ。まぁ、僕たちは戦える力は得たけど、そういう部分はまだ素人だから、決め付けない方が良いかもしれないけどね。ただ、僕たちの情報を得ている可能性はあると思う」

「どういう……あぁ、そうだな。その可能性は大いに高い」


 なるほど、と常水は思った。


 先の戦いで現れた大魔王軍の全てを討ち取っていない以上、逃走した魔物が合流して情報を得た可能性があるのだ。

 つまり、甲冑オークは「特殊武技」を放つ者によって殺られたという事を。


「でも、後詰めだから大した事ない、と考えない方が良いのは間違いないね。向こうの状況はわからないけど、こちら側は余裕なんてこれっぽっちもないし、僕たちは未だ、押せば簡単に落とされるだけの崖っぷちに立っているんだから。でしょ?」

「そうだな」


 詩夕と常水は笑みを浮かべ、やってやろうぜ! と互いの腕を軽くぶつけ合う。


 そして、時間が許す限りの可能な準備を終え、詩夕たちとビットル王国軍は、再び大魔王軍と対峙した。


     ◇


 詩夕たちを含むビットル王国軍が新たに来た大魔王軍と対峙した場所は、前回と同じく平原であるため、前回の傷跡がいくつも残り、壮絶な戦いがあった事を物語っていた。

 対峙する双方の総数は同数程度だが、それはビットル王国軍側からすれば危機的状況でしかない。

 個の戦力を比べれば、天秤は大魔王軍側に大きく傾くのだから。


「……全く、厳しい世界に召喚されたな」

「だからこそ、僕たちで優しい世界にしないとね」


 常水の言葉に、詩夕が笑みを浮かべてそう返す。

 また、詩夕の言葉に、他の者たちもその通りだと頷いた。


 すると、ビットル王国軍側からは太鼓の音が鳴り出し、大魔王軍側からは角笛が吹かれる。

 戦闘開始の合図に、双方共に構えを取り、己を鼓舞するように力一杯叫ぶ。


 そして、双方同時に一歩前に踏み出した時、平原の中央を六つの巨大な影が過ぎり、突風が巻き起こる。

 一体何が? と詩夕が視線を向けた先に居たのは、空中で旋回している六体の竜。


「は、ははは……凄い……本物の竜だ」


 子供のような笑みに目を輝かせる詩夕。


「まさか、だな。実際に見えている以上、現実として受け止めるしかない」

「ねぇ、刀璃。私の目がおかしくなった訳じゃないよね?」

「安心しろ、天乃。私にも見えている」

「水連。いきなり現れたけど、あれって敵かな? 味方かな?」

「……味方であって欲しい。敵に回すとか、考えたくない」

「うおおおぉぉぉ! 竜だ! ドラゴンだ! ザ・ファンタジーだ!」


 樹はかなり興奮していた。

 常水もどことなく興奮しているようだが、注意深く観察している。

 ただ、女性陣は冷静だった。


 ビットル王国軍と大魔王軍も、突然現れた竜たちに動揺が走って動きが止まる。

 その間に竜たちが動いた。


 向かった先は――大魔王軍側。

 先頭を飛ぶ黒い竜が炎のブレスを吐き燃やし、続く五体の竜が炎の塊を吐き出して駄目押しを加えていく。

 圧倒的な蹂躙劇を見る詩夕たちは、黒い竜の背に人が乗っている事に気付いた。

 それも二人。

 その二人は、黒い竜の背から弓を引いて矢を射り、的確に魔物を射殺していく。


 大魔王軍が全滅するのに、そう時間はかからなかった。


 すると、黒い竜以外の竜たちは、方々に飛び立っていく。

 恐らく、取り逃した魔物が居ないかどうか、確認させにいったのだろう。

 黒い竜の方はそのままビットル王国軍の前で下り、ゆっくりと頭を振る。

 何かを確認するように……。


 その間に、黒い竜の背に乗っていた二人も降りて姿を現す。

 この世界最強の存在である竜の背に何故人が乗っている? とビットル王国軍は微かにざわめき、事情がわからない詩夕たちはその様子に戸惑う。

 すると、黒い竜が大きく息を吸い、大声でビットル王国軍に尋ねる。


「シユウとツネミズというのは、どこに居る?」


 その問いに一番驚いたのは当事者二人である。

 詩夕と常水は、聞き間違いではないよね? と顔を見合わせた。

 女性陣と樹も、え? この二人? と詩夕と常水を見ている。


 ただ、このまま何も行動しないのは不味いだろうと判断し、詩夕と常水は意を決して前に出た。

 前に出て来た詩夕と常水を、黒い竜がジッと見る。


「貴様達が、シユウとツネミズか?」

「はい。その通りです」

「何故、名を知っているのですか? 武技の神様から」

「うむ。アキミチから聞いた」


 アキミチという言葉に、詩夕たちは驚きの表情を浮かべる。

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