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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十章 集合
299/590

話した時と場所が悪かった

「どうであった?」


 ダンス披露が終わり、広場に拍手喝采が起こったあと、DDは案の定俺に感想を求めてきた。

 なので、ここは正直に言っておこう。


「なんとなく凄い技術のダンスっぽかったけど、ここからだと空中が見づらくてよくわかんなかった」

「……確かにそうだ!」


 気付いてなかったのか。


 という事で、何故かDDは俺の前で改めて踊った。

 追加公演に周囲は沸き、踊るDDに拍手を送る。


 今回のDDのダンスは、これといった特色はない。

 寧ろ、アクロバット飛行を披露しながら曲を弾いたジースくんたちの方が目立っていたくらいだ。


 ただ、DDの方に特色がなかったとはいえ、それはこれまで見せられ続けてきた事によって、見慣れただけなのかもしれない。

 技術的な面を見れば、最初の時より確実に上手くなっているし、手の位置とか細かい部分にまでこだわっているのがわかる。


 技のバリエーションも増えているし、今回は凄くなかったという訳ではないのだ。

 単に、ジースくんたちの方が目新しかっただけ。


 だから、その……群がっている人数がジースくんたちの方が多いからといって、殺気の込められた目で見ないように。

 曲担当として頑張っているんだし、偶にはスポットライトを浴びても良いじゃない。

 それにほら、向こうは五体だし、それぞれ一体の人気に換算したら――。


『キャー! キャー!』


 ……こっちと違って黄色い歓声が多いな。

 五体の中でも特にジースくんの周囲から聞こえてくる。


「まぁ、魂から奏でられる旋律を形にしただけ、みたいな」


 しかも、なんか訳のわからない事が聞こえてくる。

 もしかしたら、女性たちに囲まれて調子に乗っちゃったのかもしれない。


 DDから、こいつらは……みたいな雰囲気が醸し出されている。

 ……このまま調子に乗せると、DDが叱りそうだ。

 でも、叱られないとわからない事だってある。


 なので、別の事をDDに告げる。


「ちょっと……向こうで話が……」


 ここだと人目があり過ぎるからね。

 詩夕たちにも協力してもらって人を遠ざけ、広場から少し離れたところへ。

 そこで話し始め……。


「広場、というか、ジースくんたちが調子に乗ってそうだというのはわかるけど、少しだけこちらに集中して欲しい」

「だが、しかし!」

「なんだったら、叱る時に俺も協力するから」

「約束だからな! 絶対だからな! 破ったら許さないからな!」


 ……早まったかもしれない。

 けど、このままだと話が進まないのは確か。


 ……ごめんよ。ジースくんたち。


⦅お任せください。心に響いて残る結果となるように尽力しましょう⦆


 ……えっと、もしもしセミナスさん?


⦅はいはい。なんでしょうか? マスター⦆


 それは、どう響いて、どんな形で心に残るのかな?


⦅………………⦆


 答えてくれない。

 本当にごめんよ、ジースくんたち。

 多分、トラウマ案件になるよ、これ。


 乗り気なセミナスさんをとめる事は……誰にも出来ない。


 でも、セミナスさんの事だから、きっとジースくんたちにとってもプラスにな……れば良いなと願っておくから。

 心の中で願いつつ、DDに今後の予定について話す。

 具体的には、竜の住処に行きたい、と。


「……ふぅむ。……待てよ。こやつらが居た方が」


 DDが何やら悩みながら俺を見る。

 なんか打算的な目で見られているような気がしないでもない。

 そう思っていると、今度はDDが尋ねてくる。


「……別に連れて行くのは構わんが、あいつがもし殺せと命じれば、私でもとめる事は難しいぞ。逃がすくらいは出来るだろうが」


 え? 何その物騒な話。

 竜の住処に行きたいって話で、なんでそんな話が最初に出てくるの?

 そもそも聞いてないんですけど?


⦅言っていませんので⦆


 うん。結構重大っぽいのに言ってないよね。


⦅そうならない事がわかっている以上、言う必要がありません⦆


 ないんなら……いっか。


「問題ないみたいです」

「そうなのか? 怒ると怖いから、本当に機嫌を損ねないようにな。しかし、私たちの住処に行って、どうするつもりなのだ?」

「さぁ? セミナスさんは行けば良いとしか言わないから。寧ろ、そっちの方が何かピンとくる事はないの?」


 DDは首を傾げるだけ。

 本当にわかっていないようだ。

 セミナスさん?


⦅言ってしまうと驚きと感動が薄れますので、今回は黙秘権を行使します⦆


 いや、さっきもそうだし今までも黙る時は黙っていたよね?


⦅………………⦆


 まだ黙ってしまった。

 まぁ、いつものように行けばわかる事だから別に良いとして、気になるのはDDの方。


「ところで、あいつって……知り合いにそんな怖い竜が?」

「あぁ。あいつは怖いぞ……恐ろしいぞ」


 何かを思い出したのか、DDがガタガタブルブルと震え出した。

 DDが怯えるって……よっぽどじゃないだろうか。


「その……あいつっていうのは一体?」

「……私たち竜の頂点。王。女王竜……私の番だ」


 番って事は……DDは雄だから男性で、相手は雌だから女性。

 つまり、DDの奥さんって事か。


 ………………。

 ………………。


 なんか大丈夫な気がしてきた。

 DDの様子から察するに、尻に敷かれているだけのような気がする。


     ―――


 DDの許可を得たので、早速竜の住処に向けての準備を進めていく。

 EB同盟再強化の話し合いは数日後に始まるらしく、丁度開始するくらいにこちらも出発である。


 話し合いに関しては、セミナスさんから問題なしと太鼓判を押されているので大丈夫だろう。

 まぁ、俺が安易に関わって良いような事ではない。

 なので、こっちはこっちで出発の準備を進めていくのだが、装備品の新調とかはないから、食材とかの生活に必要なのを買い足していくだけだ。


 今回は詩夕たちも一緒だから、たくさん買っておかないと。

 詩夕たちもアイテム袋を持っているので、量に関しては問題ない……が、金銭面で足りるかどうか。


 ……軽く相談すると、ビットル王国を皮切りに、各国から支援金をもらった。

 なんか……すみません。ありがとうございます。


 それと、食材とか必要な物は、ドンラグ商会が格安で用意してくれた。

 最初は無料提供してこようとしてきたけど、さすがにそれは、ね。


 そうして準備を進め、各国の人たちにも出掛ける事を教えると同時に挨拶を交わし、数日後には出発となった。


 王都の外に、俺、詩夕たち、エイトたち、アドルさんたち、DDとジースくんたちが出揃う。

 ここからDDとジースくんたちの背に乗って、竜の住処まで一気に飛んで行く……んだけど。


「えっと、どうしてここに居るんですか?」

「もちろん! 面白そうだからだ!」


 ニッコリと笑みを浮かべるシャインさんが居た。


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― 新着の感想 ―
[良い点] DD四天王クラスだと勘違いしてたけど女王の番だったとは。他に赤、白、翠、黄の竜がいて合体して金竜になるものだとばかり、このリハクの目をもってしても見抜けなかった。
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