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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十章 集合
298/590

普通に登場する訳がない

 ドンラグ商会の貴金属コーナーで財布の中身を守ってから数日が経った。

 鍛錬は毎日続き、より激しくなっている。

 主に、シャインさんの影響で。


 まだいける! まだいける! と限界の限界以上を要求してくるという理不尽。

 詩夕たちがここまで強くなった理由の一端を垣間見たような気分である。

 俺の倍くらいは動いているし。


 多分、詩夕たちの中で、誰にも勝てないんじゃないかな? 俺。


⦅私を使用した上での短期決戦であれば、体力は関係ありませんので問題なく勝てます。全員蹴散らしてみせましょう⦆


 蹴散らさなくて良いから。

 そもそも詩夕たちとそんな事にはならないから、考えるだけ無駄である。


 あと、鍛錬メンバーにアドルさんが追加された。

 もっと模擬戦しろ! というセミナスさんの指示によって。

 なので、シャインさんやカノートさんとよくやり合っている。


 勝敗は……どっこいどっこい?

 誰も本気じゃないのはわかる。


「本気だと模擬戦ではなくなるからな」

「私は別に本気でも構わないが」

「殺したいほど憎い訳じゃないからね」


 うん。勝敗とか、別に良いじゃないか。

 皆、強い。それで充分。

 この話題には、迂闊に振れないようにしよう。


 アドルさんに関しては、これからも行動を共にする訳だし、詩夕たちとの仲も深まるから、鍛錬に参加するのは良い事だと思う。

 鍛錬終わりに、樹さんと一緒にシャインさんの厳しさを嘆き、よく追い回されているけど。


 インジャオさんとウルルさんは、詩夕たちに挨拶したあと、最近の日課である鉱石掘りに奮闘中だ。


 そうして鍛錬は朝、昼からは自由時間となった。

 といっても、観光が続くだけ。

 ラメゼリア王国が三大国と呼ばれるだけあって、その王都は広大だ。


 同じ三大国の軍事国ネスの王都よりも広いし、世界最大ではないだろうか?

 もう一つの三大国であるビットル王国の王都は見た事ないけど、詩夕たちがそこよりも広いと言っているので、世界一なのは間違いないと思う。


 なので、数日では到底見きれないので毎日新鮮である。

 でも、一つだけ不満なのは、男性陣とエイトたちだけじゃなく、何故か女性陣も俺に道案内をさせようとしないのだ。


「道案内を」

『多数決で決したから』


 数の暴力だ。

 少数派の意見も尊重して欲しい。

 俺一人しか居ないけど。


⦅私もこれに関しては多数派の意見を賛同します⦆


 本当に俺一人しか居ないけど。


 そして、待ちに待った? 日が来る。


     ―――


 その日の朝。

 起きると、カノートさん家の執事さんから教えられる。


「どうやら本日のお昼頃、DD様たちが来訪されるようです」

「そうなんですか?」

「はい。そういう予告が王城に届きました」


 予告してくるってどういう事?

 何かあるのかな? セミナスさん。


⦅………………⦆


 ……セミナスさん?


⦅私よりも先にマスターに情報を渡すとは……どうやら、ここにも敵が居たようですね。排除に動きます⦆


 動いちゃいけません。

 それで何かあるの?


⦅……あの竜が予告してくるなど、その理由は一つしかありません。人を集めて見せたいのです⦆


 何を? と聞くまでもないだろう。

 エイトたちと共に、カノートさん家の執事さんから場所を聞いて向かう。


 そこは以前にも行った、王城が見える広場だった。

 既に大勢の人が居て、屋台まで既にある。


 元からあったのか、それとも急遽なのか……とりあえず、商魂たくましいという事は確か。

 詩夕たちが居たので合流する。


「どんな事をするか知ってる?」

「いや、僕たちも朝知ったばかりだから。それに、ここでDD様たちと別れてからの事は知らないし」


 だよね。えっと、軍事国ネスまでずっと後追いで現れたんだよ。

 やってる事は変わってないから安心はして欲しい。

 今も、ダンスが基準だから。


「だけど何故か、俺に観せるばかりで、参加させてくれないんだよね」

「……あはは」


 その苦笑いは何かな? 詩夕。

 ちょっと詳しい話をしようか。

 と思った時、行進曲のような高らかとした音が鳴り響く。


 間違いなくこの行進曲に合わせて登場してくるはず。

 そう思って周囲を警戒……したんだけど、なんか奇妙だ。


 何が奇妙かっていうと、俺以外の全員が空を見ているのである。

 詩夕たちも、エイトたちも。


 ……えっと、もしかしてだけど……俺以外には事前通知でもされていたのかな?

 それとも、これも勘ってヤツ?

 なんか納得出来ないけど、とりあえず俺も空を見る。


 すると、遠くの方からこちらに向けて飛来してくるモノが居た。

 それも五つ。

 ……ジースくんたちかな?


 ……当たっていた。

 隊列を組んだジースくんたちが、器用に楽器を弾きながら俺たち……というか、王都の上をそれなりの速度で飛んで行く。


 と思ったら、曲に合わせて方向転換し、再度王都の上を飛んで行き、時折ドリルのように回転したり、ジェットコースターのように縦に一回転したりし始める。

 もちろん、それらも行進曲に合わせて、隊列も乱さずに。


 ……なんだっけ、こういうの。

 元は飛行機というか、戦闘機というか……あっ! そうそう! アクロバット飛行ってヤツだ!


 ジースくんたちが披露しているのは、まさしくソレだった。

 音楽を弾きながら、器用だなぁ。

 派手な動きに関しては、周囲から大きな拍手が送られている。


 ……これも、詩夕たちが教えたのだろうか?


⦅いえ、自力で辿り着いたようです⦆


 それは素直に凄い。

 なので、俺も拍手を送る。


 ……けど、俺もそうだが周囲の人たちも随分と慣れたモノだ。

 相手は竜で、この世界最強の種族でもある。


 それが隊列を組んで王都の上を飛び回っているのに。

 普通は恐怖案件じゃなかろうか?


 ただ……なんだろう。

 時折、上から視線を感じるというか、チラチラと様子を窺われているような気がする。


 そんなに俺の意見を求められても困るんだけど。

 大した感受性じゃないよ? 俺。


 いや、決して、ジースくんたちのアクロバット飛行が未熟って訳じゃないから。

 なので、空に向かって、そのまま最後まで頑張って下さい、という意味を込めて親指を立ててみせる。


 ……二割増しくらい動きにキレが。

 疲れるよ? と思うのだが、その前に現れる。

 そう、DDが。


 ジースくんたちが五角形を描くように散らばると、その更に上からDDが舞い下りてくる。

 五角形の中心付近でとまり、そのまま空中で踊り始めた。

 ジースくんたちの弾く曲が、ダンスミュージックに変化する。


 ………………。

 ………………。

 周囲の人たちは喜んでいるというか、盛り上がっていた。


 いや、確かに、ここ最近のDDのダンスの中で、一番キレッキレだとは思う。

 思うけど……見づらい。

 空中にカメラがあればシチュエーションとしては最高かもしれないけど。


 というか、盛り上がっている皆はどうやって下からのダンスを認識してんの?

 空間認識能力……で良いのかわからないけど、そういう能力高過ぎない?

 それとも、そういう雰囲気に従っているだけだろうか。


 わからないけど、どうせ終わったら感想を聞かれるのだし、その辺りの事をビシッと言ってみようかと思った。


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