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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十章 集合
296/590

ただ見学するだけ……だったのに

 俺はもう一歩も動けないので休憩しつつ、シャインさんによる、詩夕たちの鍛錬の様子を見学する。

 俺以上のしごき……鍛錬を受けていた。


 なんというか、より実践的な感じ。

 シャインさんが普通にボコっているとも言えるけど。


 特に樹さんがひど……凄い。

 徹底的って言葉が、この場合は正しいかもしれない。

 同じ拳術スキル持ちだからだろうか?

 それとも……。


 チラッと視線を鍛錬場から外して、詩夕たちと一緒に来たシャインさんの娘さんのグロリアさんが、頑張る樹さんを応援している。

 ……きっと、その辺りも関係しているのだろうと推測。


 カッコいいところ、見せて下さい。樹さん。

 具体的には、シャインさんに一発……入れる前にフルボッコされている。

 詩夕たちよりも念入りだ。

 よ、容赦がない。


 ………………ファ、ファイト!

 それでも立ち上がる樹さんを、心の中で応援しておいた。


 他にも、常水とカノートさんの鍛錬は、なんというか技の応酬みたいな感じで見応えがある。

 あとは、咲穂にグロリアさんが付いているようだ。


 シャインさんにボコられたあと、残る詩夕、天乃、刀璃、水連は、シュラさんが相手取っていた。

 詩夕たちが来た時に紹介を済ませてあるので、コミュニケーション的に問題はないけれど、シュラさんが一通り自分を紹介したあと、何故か詩夕たちは揃って俺を見てきたのだけは、意味がわからないというか不思議。


「そっくり」とか「似ている」とか言っていたけど、そもそも性別が違うのだから、全然違うと思うんだけど。

 シュラさんも俺の意見に同意。


 ……それにしても、一対四でやり合えるシュラさんが凄いのか、この世界の強者であるシュラさんを相手に四人でやり合えている詩夕たちが凄いのか……俺には判断が付かない。


 でも、強くなったんだなぁ、詩夕たち。

 凄く頑張ったから、なんて言葉では表せないくらいの努力があったに違いない。


 そういえば、俺が解放した神様たちも役に立ったのだろうか?

 対応しているのは……槍の神様、弓の女神様、刀の女神様、剣の神様くらいかな?

 あれ? 剣の神様はもう詩夕たちと会っている……よね?


 聞くのが怖いので、聞かないでおこう。

 もしまだだった場合、尋ねたタイミングで来るかもしれないし。


 けど、詩夕たちの鍛錬を見ると、まだ足りないのがよくわかる。

 あとは、拳術に対応している神様、棒術に対応している神様、魔法に対応している神様は最低でも解放した方が良いかもしれない。


 まっ、その辺りはセミナスさんも織り込み済みだろうし、その内解放されるだろう。

 うんうん。と頷く。


 きっと、そうして考えていたのが引き金になったのかもしれない。

 鍛錬場に神様たちが降臨した。


「溢れる万能性! 槍の神!」

「………………」

「巻き起こせ! 血の大嵐! 刀の女神!」

「わはははははっ! 主人公参上! 剣の神!」


 全員がポーズを取りながら言う。

 相変わらず、弓の女神様は恥ずかしそうだけど、それなりに付き合ってくれるんだよね。


「我ら四柱! そう! 四柱という事は、我らはそのまま四天の」


 槍の神様は最後まで言えなかった。

 シャインさんが殴り飛ばした樹さんが衝突して、そのまま巻き込んで飛んで行ったからである。


「鍛錬中に鍛錬場にいきなり現れるのが悪い!」


 シャインさんの自己弁論。

 でも、俺もそれに賛成。

 いきなり現れてポーズを取り出した神様たちの方が悪いと思う。


 だが、今この場で一番問題なのは、そこじゃない。


「槍も脇役でしかない! 脇役が退場したまで! 主人公たる俺が居れば万事解決だ!」


 剣の神様が居る事である。

 詩夕たちの反応を見るに……やっぱり初対面のようだ。


 というか、剣の神様が現れた事で、エイトたちが俺の後方に即座に移動してきた。

 ……盾にしている訳じゃないよね?


「アレは拒否します」

「頼むぜ、主」

「アキミチ様担当ですので」


 うん。盾にする気満々だ。

 剣の神様がこちらに来たら、俺を突き出すだろう。

 確かに、盾スキルもある事だし、俺が適任かもしれない。


 でも、取るべき対処がそもそも間違っているよ、エイトたち。


「もしこっちに来たら、俺を担いで逃げて」


 未だ体力が回復したとはいえないので、全力疾走はちょっと。


「「「かしこまりました」」」


 清々しいほどの即答だった。

 そんなエイトたちの行動に習ったのか、詩夕たちも同じように俺の後ろに移動してくる。

 やっぱり、詩夕たちも剣の神様の主人公発言に、色々と思うところがあるのかもしれない。


 槍の神様とぶつかった樹さんがなんでもないようにこちらに来る辺り、こういう状況に随分と慣れたんだなと思う。

 その槍の神様は、シャインさんとバチバチ火花を散らしていた。


 ……カノートさんといい、シャインさんは槍全般と相性でも悪いのだろうか?

 常水が心配……って今はそっちを気にしている場合じゃない!


「いやいや、そもそも詩夕たちは剣の神様と初対面なんだし、まずは自分たちでしっかりと挨拶するのが当然じゃないかな?」

「なら、明道経由でお願い出来ないかな?」


 詩夕がにっこりと笑みを浮かべてそう言う。

 他の皆もそれで異論はないと頷いている。


「そこは、ほら……今俺は体力的に動けないから」

「なら運ぶよ」


 うんうんと頷く皆。

 ええい、どうしても俺を矢面に立たせたい訳か。

 だがしかし、俺にも策はあるのだ。


「でもほら、あれは剣の神様だから、スキル的にあれから色々習う事になる詩夕が対応するべきじゃないかな?」

「いや、それは……そうだけど……別の剣の神様に出来ないかな?」


 そんな神様が居るのなら、俺もそっちでお願いします。

 ただ、俺の主張が正しかったのか、詩夕以外の面々が俺側に付く。

 また、何人かはここぞとばかりに行動を起こした。


「槍の神様。鍛錬をお願いします」

「刀の女神様。本日もお願いします」

「弓の女神様。よろしく!」

「シャインさん……もう少し頑張ります」


 一人、更なる地獄に向かったけど、常水、刀璃、咲穂、樹さんが新たな戦線を求めて離脱。

 いや、ある意味復帰?


 この波に、他も乗る。


「シュラさん。棒の使い方について色々聞きたいのですが?」

「……お願いします」


 棍棒と棒は違うと思うけど、天乃、水連の提案を快く受けるシュラさん。

 残るエイトたちは、グロリアさんとカノートさんの家の執事さんを連れて、食事の準備があると鍛錬場から去って行く。


 全員、行動に迷いがない。

 俺も体力が万全であれば、離脱を選択していた。

 というか、エイトたちは俺も一緒に連れて行ってと言ったのに……。


 ……あれがこっちに来たら、という限定条件だったのがいけなかったのかもしれない。

 いや、こうなれば這ってでも。


 と思ったのだが、ここまでくると逆に覚悟が固まるのか、詩夕が意を決した表情で剣の神様の下へ向かおうとする。

 両肩ががっくり落ちているけど。


 ………………。

 ………………。

 まぁ、一回も二回も同じか。


「詩夕!」


 ………………。

 ………………。

 俺の盾スキルが輝いた、と思いたい。


 というか、詩夕! 鍛錬までは付き合わないから!


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