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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十章 集合
289/590

まずは一気に言わせてから

 詩夕たちと雑談をしていると、天乃と水連が俺を解放する。

 漸く落ち着いたようだ。


 天乃の理由。

「ちょっと抑えきれなくて」


 ……何が? えっと中二的な事だろうか?

 俺が右腕の包帯的な役割を……はないか。


 水連の理由。

「……ちょっと我慢出来なくて」


 ……何が? 意味がわからない。

 そもそも、何に対してなのか、詳しくべきかもしれないけど……今じゃなくても良い気はする。


 ただ、なんとなくだけど、二人共が同じ事を言っているような気がする。

 どうしたものか。


「今は、これ以上の追及はやめてくれ。二人も色々と一杯一杯だったのだ。今までピンと張っていた緊張の糸が解れたから、という事で頼む」

「漸く明道に会えたんだから、その存在をちゃんと確認したかったんだよ、きっと」


 刀璃と咲穂がそう言ってきた。

 いや、待って。

 そもそも、別に追及はしていなかったんだけど?


 寧ろ、いきなり押し倒されて、何も言わずにここまで居たんだけど?


『なんというか、そういう表情だった』


 刀璃と咲穂だけじゃなく、詩夕たち男性陣からもそう言われる。

 ………………。

 ………………。

 なんで俺は読み取れないのに、周囲に居る人たちは完璧に読み取ってくるんだろうか。


 それに、元の世界に居た時よりも、読み取り力が格段に上がっている気がする。


『気のせい』


 全員が一斉に言う。

 ほらね。この揃っている感。

 どうやら、詩夕たちはこの世界色に染められたようだ。


 でも、いくら読み取られようが、これだけはちゃんと言葉に出して言っておきたい。


「詩夕たち男性陣から聞いてはいたけど、天乃、刀璃、咲穂、水連とも会えて、無事な姿を見れて漸く安堵出来た。こうして全員が揃う事が出来て、嬉しいよ」


 ちょっと涙が出てきそう。

 そう思ったところで、天乃と水連が号泣しながら抱き着いてきた。

 あれ? 振り出しに戻る?


 助けを求めて刀璃と咲穂を見ると、二人も涙ぐみながら同じように抱き着いてくる。

 え? これどうしたら良いの?


 今度は詩夕たち男性陣を見るが、苦笑いを返してくるだけ。


 ……女性陣が泣きやんで、落ち着くまで待った。


     ―――


 女性陣が泣きやみ、落ち着きを取り戻す。

 またふとした拍子に泣きそうな雰囲気があるけど、今は落ち着いてくれた。

 照れ照れと恥ずかしそうに解放されると、何故か俺も恥ずかしくなるんだけど。


 でもその事には触れずに、話を進める。

 といっても、大体は話し終わっているので、あと残っているのは……。


 エイトたちを見ると、心得ています、待っていましたとばかりに前に出てくる。

 ……なんか不安を覚えるので、とまらず一気にいこうと思う。


「詩夕たち男性陣は既に会っているけど、まずこの子がエイト。最初に目覚めさせたホムンクルスがエイトなんだ」

「男性の皆様はお久し振りです。女性の皆様は初めまして。『対大魔王軍戦用殲滅系魔導兵器・汎用型』であり、ご主人様からのご寵愛を今か今かと待ち望んでいる愛玩メイド。エイトです」


 ……うん。樹さんが優しい目で俺を見てくる。


「で、こっちの赤色の髪の女性が、ワン。詩夕たちと別れたあとで目覚めたホムンクルス」

「同じく『対大魔王軍戦用殲滅系魔導兵器』だが、あたいは『特化一型』で、名はワンだ! ホムンクルスの中じゃ、長女! 最近、主にめっちゃラブい気持ちを抱いているぜ! よろしくな!」


 …………うん。樹さん。うんうん頷かない。


「最後が、この水色の髪の女性が、ツゥ。最近目覚めたホムンクルス。あっ、呼ぶ時は発音に気を付けてね」

「二人と同じく『対大魔王軍戦用殲滅系魔導兵器』、私は『特化二型』で、ツゥと申します。最近はアキミチ様から何かしらを求められているようで、熱い視線を向けられる事が多いと感じています」


 ………………うん。樹さん。俺だけは味方だぞって表情を浮かべない。


 それと、やっぱり素通り出来ない。

 色々と修正を施したい。

 でないと、言葉通りに受け取られると面倒そうだ。


 詩夕たち男性陣は大丈夫だと思う。

 エイトの事を知っているし、ワンとツゥの自己紹介を聞いても、そのまま受け取ったりはしない……と思いたい。

 ……樹さんだけは、阿吽の呼吸で理解してくれそうだけど。


 でも、エイトたちと初対面である女性陣は、言葉通りに受け取るかもしれない。

 なので、女性陣に説明を――。


「女性陣集合!」


 する前に、天乃が女性陣だけで集合をかけて、部屋の隅の方へ。

 行ったと思ったら、手招きでエイトたちを呼ぶ。


「「「……」」」


 エイトたちから、どうすれば? と視線で問われたので、とりあえず行ってみれば? と返す。

 エイトたちが合流すると、何やらこそこそと話し合いが始まった。


 時折単語だけ、「異世界なら」とか、「……レム」とか、色々聞こえてくるが、全体の要領は得ない。

 ただ、体が自然と身震いするのは何故だろう。

 俺の意思で身震いしている訳では決してない。


 いや、そもそも、自分の意思で身震いするってどんな状況?

 普通はそんな事しないよね。


 とりあえず、物理的な話し合いにはならないようなので、ホッと安堵。

 するのだが……俺を見る樹さんの表情が更に優しいモノになる。


 その表情……本当にやめませんか。


「……あの話し合い。いつまで続くんだろう」

「納得するまで……だろうね」


 俺の呟きに、詩夕は苦笑しながら答えてくれる。


「とりあえず、直ぐには終わらなそうだから、ゆっくりと待とうじゃないか」

「……それもそうですね」


 樹さんの提案に従って、女性陣の話し合いが終わるまで、男性陣だけで雑談を交わす。

 えっと、魔族の国ってのがあって、そこの王様がアドルさんの義弟なんだけど……。


 ………………。

 ………………。


「こっちの話し合いは終わったよ」


 天乃の声で気付く。

 雑談に熱中していたようだ。


 女性陣に視線を向けると、全員晴れやかな笑が……刀璃と咲穂が妙に疲れているように見えるのは気のせいだろうか?

 でも、それとは逆に、天乃と水連はペカァ~ッと輝いている。

 こころなしか、エイトたちも。


「……どうなったの?」

「綺麗に収まったわ。エイトたちは良い子ね」

「……同志を得た」


 天乃と水連がそう言って、その通りだとエイトたちが頷く。

 肩まで組んで仲の良さをアピール。

 ……なんだろう。


 危険。混ぜ合わせ禁止。

 という言葉が脳裏に浮かぶ。

 もう遅いけど。


「まぁ、仲良くなったのは事実だ。そこは間違いない」

「収まるべき形に収まった、みたいな感じかな?」


 刀璃と咲穂がそう言うって事は、それで間違いはないんだろうけど……俺を不安にさせる要因がある。


「おめでとう! おめでとう!」


 樹さんが立ち上がって、俺に向かって拍手を送っているのだ。

 優しい表情といい、拍手もやめてくれませんか。


⦅受け入れましょう⦆


 ……セミナスさん。何を?


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