あるからといって、活用出来るとは限らない
軍事国ネスに向けて、来た道を戻っていく。
魔物というか大魔王軍が既に再配置されていたのだが、エイトたち、アドルさんたちの奮闘の前には無意味だった。
ほぼ一瞬で倒している辺り、いつも以上に気合が入って張りきっているように見える。
だからだろうか、俺が手を出すまでもないというか、出す暇もない。
⦅吸血鬼と骸骨騎士はより強くなるために、というのもありますが、基本はマスターに対する罪悪感があるからです⦆
神様たちの事なら、もうそこまで気にしていないのに……。
いや、俺は直接的な戦闘能力はないから、別にそれでも構わないっちゃ構わないんだけど。
役割分担って事にしておこう。
⦅度々は参加して下さい。運動不足になりますし、戦闘に関する勘を鈍らせる訳にはいきませんので⦆
わかった。
そうして主に戦闘に関してはエイトたちとアドルさんたちに任せて、下大陸への道案内もアドルさんたちが出来るので、俺としては本格的にやる事がない。
ただついていくだけ。
でも、それは体の方だけで、頭の方は動かしている。
何しろ、新しいスキルをもらったのだ。
その事について、セミナスさんと話し合わなければいけない。
それで、俺はなんのスキルをもらったの?
盾の神様からだし、「盾術」とか?
⦅いえ、そのまま『盾』スキルです⦆
………………。
………………。
⦅おっと、大したことはないと思っていますね?⦆
いや、そんな事はないというか、そのまんまだなって。
⦅そうでもありません。そもそも一言で『盾』といっても、中身は色々と細分化されています。たとえば、マスターが言ったように『盾術』もそうですが、他にも『大盾』や『小盾』、『ギミック盾』や『魔力盾』などもあり、本来であればそれぞれ対応するスキルを得なければいけません⦆
ふむふむ。
剣と大剣が違うように、みたいな感じかな?
⦅その通りです。そんな中、マスターが手に入れた『盾』スキルは、そういう細分化されたモノを全て纏めたモノ。つまり、盾に関するモノであれば、全てを補っている複合スキルなのです⦆
なるほど。
凄いという事はわかった。
⦅盾に関するスキルの最上位に位置する事は間違いありません⦆
それだけ盾の神様に気に入られたって事なんだろう。
……で、「ギミック盾」はそのままの意味だろうけど、「魔力盾」って何?
⦅そのままの意味で、魔力によって形成される半透明の盾です。込められた魔力次第で大小と硬度が決められるだけではなく、形状の変化も可能。自由度も高く、場合によっては使用者に最も合った最強の盾を作り出す事も出来るでしょう⦆
すんごい盾を作り出せるのはわかった。
でもそれにはある一つの懸念がある。
……俺にも出来る?
⦅………………⦆
でしょうね! そうだと思ったよ!
魔力って時点で、俺には無理だろうなって。
⦅いえ、そうでもありません。手のひらサイズのぺらっぺらのなら、可能かもしれません⦆
ぺらっぺらなんだから、盾として防げないよね?
⦅臭いや花粉、塵埃やハウスダストなど、様々なモノを阻む事が出来ます⦆
マスクか!
⦅ただ、維持にも微量ながら魔力を消費しますので、マスターの魔力量だと……その……⦆
言い淀まなくてもわかる。
長時間の維持は難しいのね。
⦅数分もてば良い方かと⦆
短時間すら無理って。
俺に「魔力盾」を生かす力はないって事はわかった。
夢も希望もない。
⦅ですので、ここは一つ、鍛冶の神にでも頼みましょう⦆
それはそれで不安が残るんだけど。
絶対やり過ぎて、余計な機能を付けてくるよね。
⦅その辺りは織り込み済みです。そもそも私に扱えない武具は存在しませんので⦆
扱う、扱わない以前の話だと思うんだけど。
⦅マスター。扱えるからこそ、『未来予測』で読み切る事が出来るのです⦆
そういう問題?
でも、確かめようはない。
とりあえず、鍛冶の神様に盾を作ってもらうって事で良いのかな?
⦅はい。といっても、先に素材が必要ですが⦆
それはそうだ。
さすがの神様でも、無から有は創れないって事か。
⦅いえ、武技の中には体力と魔力を大きく使用する事で、強力な武具を創り出すのもありますので、一概にそうとも言えませんが、そういうのは大抵維持も大変なのです。その点、素材を使用した方が、強力なモノを常時使用出来ますので、そちらを選択しただけです⦆
確かにそれなら素材からの方が良いね。
という事は、セミナスさんの中では既に選別が終わっているんでしょ?
⦅はい。終わっています⦆
だと思った。
ついでに言えば、今後の予定も?
⦅もちろん。マスターのスケジュール管理はばっちりです⦆
頼もしいセミナスさんが帰ってきた感じがする。
今後の事を聞きながら、軍事国ネスまで戻った。
―――
軍事国ネスの王都に着くと同時に王城、執務室へ。
この国のトップであるガラナさんに、新たに剣の神様と盾の神様を解放した事を伝える。
「まずは、ご苦労であった。上大陸は大変だっただろう」
多分だけど、ガラナさんは上大陸に蔓延る大魔王軍の事を言っているんだろう。
でも、俺としては道中はほとんど戦っていないし、副官たちを倒したのはアドルさんとインジャオさんだ。
「いえ、皆が居ましたから」
なので、これが正解……のはず。
というか、なんで俺が受け答え?
こういうのって……立場的に俺たちの中で一番上はアドルさんだと思うけど。
「……美味い。腕が上がっている」
「ありがとうございます」
アドルさんに視線を向ければ、エイトに淹れてもらった紅茶を飲んで褒めていた。
他の皆も同じように紅茶を楽しんでいるが、そこにガラナさんの執事であるクルジュさんも交じっている。
安全圏だからって、気を抜き過ぎじゃない?
ガラナさんも飲みたそうにそわそわしているし。
「……それで、ガラナさんたちの方は、もう準備は終わったんですか?」
「あ、あぁ。明日か明後日には出発出来るだろう」
明日か、明後日か……。
それまでどうしてようかな。
いや、別に先行しても構わないんじゃないかな?
と思っていると、執務室の扉を開けてシュラさんが駆け込んできて、俺の両肩を掴む。
「神様を復活させてきたと聞いた! どの神様だ! 棒の神様か!」
「いや、えっと、剣の神様と盾の神様ですけど」
正直に答えると、シュラさんががっくりと項垂れる。
期待させていたのなら……なんか申し訳ない。
でも、俺も直前まで知らないので。
それと、今はうしろを気にした方が良いと思う。
「とても大切なお客様を前にして、挨拶もなしに先ほどのような態度は許容出来ませんね」
クルジュがニッコリと微笑んでいる。
ただ、その笑みが怖く見えるのは……きっと俺だけじゃない。
シュラさんは、クルジュさんに連れ去られていった。
きっと説教だろう。
それがわかっているからこそ、そこには誰も触れない。
……まぁ、わざわざ先行する事はないか。
時には落ち着いた行動が必要だと、シュラさんが身を以て教えてくれた。
ガラナさんたちと一緒に向かう事にする。




