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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第九章 亡国・武国ドレワーグ
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意図はちゃんと伝わっているよね?

 新しいスキルをもらった。

 それはとても良い事だ。


 でも、そこから盾の神様も立ち直ったというか、熱く盾について語り出して、妙に俺に絡んでくるようになったので、剣の神様を呼ぶ。


「………………」


 静かになったというか、電池の切れたおもちゃのように動かない。

 落ち込んだ体育座りが妙に様になる神様である。


 ただ、俺の言葉は聞こえているようなので、まずは剣の神様と盾の神様に対して、現状の説明……? 自分たちが封印されてからで?


 ………………いや、そこら辺からは知らないんだけど。

 いつ起こったかも知らないし。


「武国ドレワーグが落ちてからか……」


 ギョッとした。

 いつの間にか、アドルさんが隣に立っていて、話し始めたのだ。


 アドルさんの語る内容を簡単に言えば、武国ドレワーグが落ちた事で、実質的に上大陸は大魔王軍に支配されたと言っても過言ではなくなり、瞬く間に下大陸に侵攻してきて、なんとか押し返し、封印される前に残した預言の神様の伝言通りに勇者が召喚され……というところで、俺にバトンタッチしてきた。


「では、ここから先はアキミチに……」

「いや、そのままアドルさんが」


 去ろうとするアドルさんの服を掴もうと手を伸ばす。

 パシッと軽く弾かれ、アドルさんは円陣に戻った。

 頑張った! と激励ムードで迎えられている。


 ……これが終わったら、俺もそれで出迎えて欲しい。


 そう思いながら、剣の神様と盾の神様に、これまでの事を説明する。


「……という訳です」

「つまり、主人公の登場という訳だな! 安心して任せろ! 全て斬り裂いてくれるわ!」


 うん。駄目だ。

 剣の神様はわかっていない気がする。

 そもそも、魔王に対しては、強さもそうだが結界をどうにかしないといけないという問題があるのに。


「……頼れるのは盾の神様ですので、頑張って下さい」

「ぼ、僕に頼るの?」

「はい。盾の神様しかいません」

「わ、分かった。頑張る」


 盾の神様がグッと拳を握る。

 ちょっとだけ前向きだけど、俺の意図はちゃんと伝わっているんだろうか?


 恐らくだけど、やっぱり剣と盾はワンセットだし、盾の神様は剣の神様と行動を共にする事が多いと思う。

 現に、一緒の場所に封印されていたし。


 となると、剣の神様の暴走をとめられるのは、必然的に一番近くにいる盾の神様という事になる。

 なので、盾の神様に頑張って欲しいと言ったんだけど……大丈夫だろうか?


 いや、疑うのはよくない。

 疑いを見せると、盾の神様は落ち込みそうだ。

 伝わったと信じよう。


「それじゃ、行こうか」


 話が終わるのを待っていましたとばかりに、俺の隣に立っていた武技の神様がそう言う。


「アキミチもお疲れ」


 握手を求められたので、応じる。


「じゃ、そういう事で」

「いやいや待て待て」


 今度は逃がさない、とばかりに武技の神様の腕を掴む。


「説明とか全部こっち任せというか、俺任せっておかしくない?」

「でもほら、これまでアキミチだったし」

「結界内だったからね。でも、周囲をよく見て下さい。ここに結界はありません」

「わぁ~、本当だぁ~」


 まるで初めて知ったかのように言う。

 いや、ここに来れている時点で、それがわかっていたと思うけど?


「でも、アキミチ」

「なんですか?」

「……これからの苦労はこっちなんだよね」


 武技の神様から表情が消える。


「特に剣のは……身体のと仲が良いんだよね」


 その追加情報に、俺はそっと手を離した。

 必要な事だったとはいえ……申し訳ない。

 心の中で謝っておく。


「……それじゃ、行くよ」

「そうか! 身体の神も解放されているのか! 久々に会えるのが楽しみだ!」

「……僕の解放を喜んでくれる誰かは居るんだろうか」


 そんな事を言いながら、武技の神様が剣の神様と盾の神様を連れて、謁見の間から出て行った。

 その後姿に向けて敬礼して、俺は見送る。


     ―――


「お疲れ様でした、ご主人様。エイトはご主人様に守られたような気分を抱いています」

「うん。守った気分は一切抱いていない」

「いやぁ~、助かったぜ、主。ああいう面倒なのを相手にするのは本当に面倒でよ」

「だからって、俺だけに任せるのは違くない?」

「アキミチ様の手腕。勉強させていただきました」

「だったら、実際に応対すれば、もっと勉強になると思うけど?」


 神様たちが居なくなった途端に来たよね。

 まぁ、エイトたちを造った神様たちの事を考えると、特定の神様に苦手意識を持ってもおかしくはない。


 でも。


「俺たちは仲間だよね?」

「いえ、エイトはご主人様の愛人ラマンです」

「いえ、違います」

「あたいは主の剣であり、拳だぜ!」

「そこは人と人の関係でお願いします」

「アキミチ様の望む関係に」

「じゃあ、俺と一緒に突っ込み側に回って」


 段々とツゥも染められているような気がする。

 姉妹の絆が強いのだろう。


 アドルさんたちもこっちに来て声をかけてくる。


「お疲れ様だ、アキミチ」

「逃げた事、忘れません」

「頼りになるね、アキミチは」

「こんな事で頼られても」

「次は必ず参加するから、一緒に頑張ろう」

「今回限りの出来事だと思いますけど?」


 次回からは、また結界の中のような気がする。


⦅今のところは……その通りです。今回は稀なケースと言えましょう⦆


 希望を摘み取るのが早い。

 芽が出た瞬間に刈り取られた。

 もう少し愛でる時間があっても良いと思うんだけど。


 ただ、戦闘面では特にだが、普段でも皆に頼る事は多いし、まぁこれくらいなら、と思ってしまう部分もある。


「………………」


 というような事を思っているのを、読み取られているような気がする。

 それに、「もう良いです」みたいな事を言われるのを、待っているかのような視線。


 ……ここは怒った方が良いかな?


⦅逆でいきましょう⦆


 ……逆? ……逆って事は……。


「もう良いですよ。気にしていません。皆の役に立ったのなら、それだけで充分です」


 ニッコリと優しい笑みを浮かべながら言ってみる。


『……グッ』


 全員が胸を押さえた。

 罪悪感を抱いたのかもしれない。

 ……ただ、インジャオさんは全身骨だけど……まぁ、それこそ気にしなくても良い事だ。


 このあと、全員から謝られた。


⦅……ここから更に罪悪感を刺激して、泣いて土下座にまで持っていく事も出来ますが、いかが致しますか?⦆


 やめて下さい。

 改めて、もう気にしていないと伝える。


「それで、アドルさんとインジャオさんは刺激になりましたか?」

「あぁ、充分な。それと同時に思い知らされた。あの頃より随分と強くなったと思っていたが、副官を相手にあれだけ手間取ってしまっては……今のままではあの魔王には到底太刀打ち出来ん」

「自分も同意見です。もう充分な強さを得たと慢心してしまっていたのかもしれません」


 そして、アドルさんとインジャオさんは、強くなりたいとセミナスさんにお願いしてくる。

 一緒にウルルさんも。


 セミナスさんもそれを了承。

 伝えるのは俺だけど。


⦅……ふふふ⦆


 セミナスさんの狙い通りとしか言えない。


 それで最初の指示は、軍事国ネスに戻る事。

 ここでやるべき事はもう終えているそうだ。


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