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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第九章 亡国・武国ドレワーグ
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それは暴論じゃない?

「集合」


 エイトたちとアドルさんを呼び寄せる。

 出てきた瞬間に「主人公」発言した神様には、待ってもらう。


「良いだろう。主人公の登場だ。心構えが必要だろう」


 うんうんと頷いて勝手に納得する神様。

 ……まぁ、待ってくれるのなら、別に構わない。


 エイトたち、アドルさんと円陣を組む。


「えっと、まずは確認なんだけど、神様で良いんだよね?」

「発せられる雰囲気は、間違いなく神だ」


 アドルさんが肯定して、エイトたちも頷く。

 まぁ、確かにそうなんだけど。


「なら、いきなりの『主人公』発言はどういう事?」


 ……様にはなっていたけどね。


⦅私の中ではマスターが主人公ですが?⦆


 いや、今はそういう話じゃなからね、セミナスさん。

 エイトたちとアドルさんは、その問いに答えない。

 なんというか、本当にわからない感じだ。


「いやいや、待ってよ。エイトたちは、神様たちに造られたんだよね? 神様一覧とか、そういう情報源みたいなのがあるんじゃないの?」

「残念ですが、ありません」

「あたいにもねぇな」

「直接関わった方たちや、見聞きした方たちの記憶はありますが」


 残念ながらないようだ。


「アドルさんなら、神様たちと共闘した時とかあるんじゃないですか?」

「それはもちろん前の戦争でも共闘した事はあったが……あんな神とは関わった事がないな。剣の神だろう? あれは」

「まぁ、剣を装備しているし、そうだと思います」


 これまでのパターンに当てはめるなら、剣の神で間違いないと思う。

 そうか、まずはそこの確認からか。

 セミナスさん?


⦅答えても良いですが、アレも自ら名乗りたいと思いますし、聞く事を推奨します⦆


 尋ねるしかない訳ね。

 そう結論付けていると、視線を感じる。


 エイトたちとアドルさんが、俺をジッと見ていた。

 ………………いやいや、ちょっと待って。


「え? 俺が声かけるんですか?」


 揃ってこくりと頷かれた。


「いやいや、ちょっと待って。別に俺じゃなくてもよくない? ほら、皆は入れない結界内じゃない訳だし、これは皆にとってもチャンスなんじゃ?」


 なんのチャンスかはわからないけど。

 ただ、その言葉で誰も行こうとはしない。

 動こうともしない。


 ず、ずるくない?

 このままでは多数決で押し切られてそうだ。


「わはははははっ! 主人公、参上!」


 またそんな事を言った神様。

 何事かと思って視線を向ければ、インジャオさんとウルルさんが驚いていた。

 いや、インジャオさんの様子は雰囲気だけど、ウルルさんはピーンと耳と尻尾が逆立っているから間違いないと思う。


 二人は神様に向けて、ちょっと待って、とジェスチャーして、こちらに駆け寄って来る。

 即座に円陣を組める辺り、俺たちの連帯感はかなりのモノだと思う。


「アキミチ。アレの相手をお願いします」

「なんであんなのを放置してんの?」


 うん。なんで迷いもなく俺を名指し?

 ここにはエイトたちとアドルさんも居るのに。

 連帯感というか、俺たちの結束はどこにいった?


 それに、二人共、仮にも神様を相手に、アレとかあんなの呼ばわりして良いの?

 というか、なんで俺に言ってくるの?

 別に神様担当という訳じゃないと思うんだけど。


 ……ただ、俺に集中する視線に耐えられない。


「み、皆で挑めば怖くない」

「申し訳ございません、ご主人様。エイトは、エイトたちを造り出した変態共で一杯一杯です」

「あたいもそうだな。他の馬鹿を相手したくねぇぜ」

「締め上げる時以外は関わりたくありません」


 ……う、うん。まぁ、エイトたちはそうだよね。

 これは仕方ない。

 ならアドルさんたち、と視線を向ければ、何故か逸らされる。


「わ、私はほら……アレだ、アレ……そう、まだ先ほどの戦いの良いんが残っていてな。うん。疲れが……」

「自分も同じく。ちょっと骨の調子が」

「二人がそんな感じだから、目を離す訳にはいかなくて」


 だったら、目を見て言おうか。

 ……はぁ、仕方ない。俺が行くしかないようだ。


 円陣から離れ、神様の下へ。


「えっと、神様?」

「あぁ、俺は神! 主人公だ!」


 だいぶ痛い神様である。

 封印されている間に、どこかで頭でもぶつけてしまったのだろうか?


 刀の女神様が随分とまともに見えてしまう。

 というか、解放した神様たちは来ないの?

 新たに解放した時、武技の神様がよく来ていたのに、どうして今回に限ってまだ現れないのか。


「それで……えっと、剣の神様、という事で良いですかね?」

「当然だ! だからこそ、俺が主人公なのだ!」


 ババーン! とポーズをとる剣の神様。

 う~ん……だからこその意味がわからない。


 エイトたちとアドルさんたちに助力を願い出ようと視線を向けるが、サッと逸らされる。


「その、『主人公』ってどういう事なんでしょうか?」

「そんなのは決まっているだろう! 寧ろ、何故わからない!」

「……勉強不足なので」

「自分の足りない部分を素直に認めるのは良い事だ! 誇って良いぞ!」


 ……なんだろう。

 イラッとした。


「それで、どうして主人公なのかを知りたいのですが?」

「それは簡単だ! 見たところ、君は異世界人だろう?」

「……そうですけど、見ただけでわかるんですか?」

「どことなく、この世界の者とは魂の造りが違うのだ!」


 うん。さっぱり意味がわからない。

 でも、これまでの神様たちの中で、一番それっぽい事を言ったのは確か。

 自ら主人公と言うだけの事はあるのか?


「寧ろ、異世界人で何故わからない! 嘆かわしい!」


 たとえそうであったとしても、わからんモノはわからんと言うしかないし、だからこそ聞いているんだけど。


「では問おう! ファンタジーと言えば?」

「……魔法?」

「違わないが違う! ファンタジーといえば剣だ! 魔法が必ずあるとは限らないが、剣は必ずある!」


 ……いや、それはさすがに暴論というか、確かめようがないような気がするんだけど。

 でも、言いたい事はわかる。


 何しろ、ファンタジーものの大半は、剣と魔法の世界が謳い文句だし。


「故に! 剣といえば主役だし、その剣を司る神である俺は、主人公だという事だ!」


 再度、ババーン! とポーズを取る剣の神様。

 あぁ、なるほど。馬鹿なんだな、と思った。


 そこで、謁見の間の入口から入ってくる者が居た。


「なんでこんなところで神の気配が……大魔王軍をかわしながら来るのは大変だってのに。僕は大して強く……」


 武技の神様とバッチリ目が合う。

 俺を見て……剣の神様を見て……もう一度俺を見る。

 明らかに面倒くさそうな表情。


 武技の神様は、意外と良識があるのかもしれない。


「ん? おぉ! 武技の」

「ちょっと待って!」


 剣の神様の喜び声をとめた武技の神様は、ここを避けるように遠回りにそそくさと移動して、エイトたちとアドルさんたちに合流。

 円陣を組み、こそこそと話し合いを始める。

 多分、状況確認だと思う。


 それにしても、そんな行動を取るって事は、やっぱり良識はないかも……いや、あるからこそ、先にそっちに行ったのかもしれない。


 とりあえず、こっちに来る気配が見えないので、剣の神様に今の世界状況を伝えようと思ったが、もう一つ光る玉を持っていた事に気付く。


 どうせ説明するなら一度にやった方が良いだろうと判断して、もう一つの光る玉をぽいっと放り投げた。


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