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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第九章 亡国・武国ドレワーグ
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刺激になる事は人それぞれ

 廃城の謁見の間に居たのは、二体の鬼の魔物。

 ゴツイ顔の筋骨隆々の男性型で、こちらの二倍近くの体躯。

 姿形はそっくりなので、見分けはつかない。

 それに、なんというか、謁見の間はこちらに合わせた作りなので、遠近感がおかしい。


 しかも、どちらも武装していて、動きを阻害しない程度の鎧を身に付けていた。

 醸し出されている雰囲気も、他の魔物とは違うというか、簡単に言えば強そうだ。


 また、装備している物が違う。

 一体は大剣を持ち、もう一体は大盾を持っている。


 それと注目すべきは、鎧の胸部。それぞれ光り輝く玉が装着されていた。

 あれに神様が封印されているのは間違いない。


 そして、これまで通りに対応しているのなら、あの光り輝く玉に封印されているのは、剣の神様と盾の神様だろう。


 国の騎士や兵士さんたちは、やっぱり剣を使う人が多かったので、これでもし剣の神様が解放されたら、大幅な戦力アップが見込める。

 盾の神様も同様で、大幅な防御力アップだ。


 うんうんと頷き、アドルさんとインジャオさんに声をかける。


「……なんか強そうですけど、大丈夫ですか? いけそう?」

「………………大丈夫だろう」

「………………まぁ、いけると思います」


 なんでそんな不安そうなの?

 もっとこう、自信満々でも良いような気がするけど?


「多分だけど、セミナスさんが刺激になるって言っていたのを気にしているんだと思うよ」


 ウルルさんがこそっと教えてくれた。

 なるほど。そうかもしれない。

 でも、アドルさんとインジャオさんに任せる事になったのだから、行ってもらわないと困る。


 まずは、アドルさんとインジャオさんに、胸部にある光り輝く玉に神様が封印されている事を伝えた。

 頷きが返される。


 じゃあ、行ってください、と手を振って促す。

 俺だけじゃなく、エイトたちとウルルさんも。

 仕方ないな、とアドルさんとインジャオさんは謁見の間に入っていった。


 アドルさんは自分を指差して、大盾を持つ鬼の魔物を指差す。

 インジャオさんは自分を指差して、大剣を持つ鬼の魔物を指差す。


 どっちがどっちを相手にするのか、決めたのかな。


「ほぅ……まさかこんなところに人が現れるとはな」

「初めての客だ。存分にもてなし、死を与えてやろう」


 しゃ、しゃべったぁ~!

 ……いや、驚いてみたけど、別に不思議な事じゃないか。

 魔王もしゃべっていたし、ラメゼリア王国の時も普通にしゃべるのが居たし。


 でも、それよりも。


「……初めてって言っていたけど、これまで俺たちみたいな人は来なかったって事?」

「そうみたいね。まぁ、言ってしまえば辺鄙なところだし、軍事国ネスも攻めあぐねていたようだから、ここまで来れなかったんじゃない?」

「なるほど」


 ウルルさんとこそこそ話し合う。

 エイトたちも同意見なのか、そうだろうと頷く。


「それで、お前たち二人だけで我らに挑むつもりか?」

「なんとも剛毅な事だが、そこの陰でこそこそしている者たちに助力を乞うても構わないぞ」


 俺たちの事がバレていらっしゃるぅ~!

 どうする? 俺たちも出て行った方が良い?


⦅必要ありません⦆


 なら出て行かないでおこう。


「出てこなくて構わんぞ」

「えぇ。自分たちだけで充分です」


 アドルさんとインジャオさんが、俺たちに向けてそう言う。

 た、頼りになるぅ~!


「か、かっこいい……」


 ウルルさんの呟きが聞こえた。

 インジャオさんを見る目がハートになっている。


「エイトも頼りになると証明してきます」

「こらこら、待て待て」


 エイトが謁見の間に入ろうとするので、掴んでとめる。


「そうでした。エイトは今、ご主人様の肉壁でした」

「それは違うって言っただろ」


 出て行かないと決めたので、こそっと謁見の間の様子を窺う。


 それにしても、どうしてアドルさんとインジャオさんの二人なんだろうか?

 俺たちも協力した方がより確実だと思うんだけど、セミナスさんがアドルさんとインジャオさんだけにしたのには、きっと理由があるはずだ。


「どのような刺激になるかは知らないが、さっさと倒して終わらせるか」

「そうですね。無駄に時間をかけても仕方ありませんし」


 アドルさんとインジャオさんの会話が聞こえた事で、鬼の魔物二体が反応する。


「随分と強気な発言だ。矮小な存在で、我らを倒せるつもりでいるとは。滑稽だと教えてやろう」

「我らはそれぞれ勇猛なる魔王様方の副官の一体。その力を、死という結果によって知るが良い」


 鬼の魔物二体がそれぞれ構えを取る。


 ……ま、魔王の副官の一体?

 それって結構ヤバい部類の相手では?


⦅いえ、私の力が阻害されていませんので、大した事はありません⦆


 そこが基準なんだ。

 とりあえず、俺とウルルさんは驚きで目を大きく開く。

 でも、エイトたちが普通だったので、そうでもないのかも? と思ってしまう。


 ただ、アドルさんとインジャオさんは大きく反応していた。

 なんというか、圧力が一気に増したような感じ。


「……魔王の副官だと?」

「……どちらも、ですか?」


 アドルさんとインジャオさんの問いに、まずは大剣を持った鬼の魔物が、大剣を振り回して別の構えを取ってから答える。


「如何にも。我は『魔王ヘルアト・ディダーク様』に仕え、『剣極鬼けんごくき』と名乗る事を許された者」


 俺も対峙した魔王の名を、インジャオさんから教えてもらった。

 その名が出た事に更に驚く。

 自然と身が固くなる。

 インジャオさんもピリピリしているように見えた。


 次いで、大盾を持った鬼の魔物が、大盾を回して別の構えを取ってから答える。


「我は『魔王リガジー・フューリー様』に仕え、『盾極鬼たてごくき』と名乗る事を許された者」


 別の名が出てきた。

 でも、出会った事がないのでピンとこない。


 だからだろうか。

 アドルさんが盾を持った鬼の魔物に尋ねる。


「……一つ聞こう。その『魔王リガジー・フューリー』とやらは、赤い髪の体格の良いヤツの事か?」

「ほぅ。出会った事があるのか? その通りだ。我が主君は灼熱のような赤い髪だ」

「そうか……」


 そう呟いたアドルさんは少しだけ黙り……一気に圧力が増す。

 見ているだけで怖いくらいに。


「そうか……確かにこれは良い刺激だ。あいつの副官というのなら容赦はしない」

「えぇ。丁度良いです」


 そして、アドルさんとインジャオさん、鬼の魔物二体の戦いが始まった。


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