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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第九章 亡国・武国ドレワーグ
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さくさくっと進みます

 戦場となった平原を越え、ルクイン砦に到着する。

 大魔王軍がやったのか、かなり穴だらけのボロボロで、砦として機能しているのか怪しい。

 けれど、現在急ピッチで復興中。


 俺たちの姿を見た人が、ここは通れないととめに来るが、そこはガラナさんから受け取った書簡で一発だった。

 この場で最も偉い人が出て来る。


「こんな時に上大陸に行きたいなんて正気か? お前ら。まぁ、ガラナ陛下の許可もあるし、別に通る分には構わんが、気を付けて行けよ」


 言葉遣いは荒いが、俺たちの身を心配しているのは、なんとなく伝わってくる。

 ついでに自己紹介も聞いたのだが、侯爵家当主で聖騎士らしい。

 多分だけど、かなり上の地位の人じゃないだろうか?

 でも、そうは見えない。


 何故なら、侯爵家当主で聖騎士というだけじゃなく、精悍な顔付きの渋い系のおじさんなのだが、今の姿は作業着で土塗れ。

 体格も良いので、寧ろ親方って呼びたくなる雰囲気だ。


「親方~! ここの梁を見てくれませんか~!」

「ちょっと待ってろ! 直ぐ行くから!」


 いや、実際に呼ばれていた。

 そこら辺を許容している辺り、器の大きさを感じる。


 どうぞどうぞと、親か……現場監督に行って下さいと促して、俺たちはルクイン砦を越えて上大陸に入る。


     ―――


 そこまでは順調だった。

 でも、上大陸に入ってからは違う。


「なんでこんなに魔物が居るんだよ!」


 思わず叫んでします。

 それくらい、魔物との、大魔王軍とのエンカウント率が高かった。

 少し進んでは鉢合わせ。少し進んでは鉢合わせるような状態。


⦅これで少ない方です。頑張って切り抜けて下さい。あっ、頭を下げて、視界に入った魔物の足をすくい上げて下さい⦆


 セミナスさんの指示で、俺はどうにかこうにか魔物を相手に奮闘しているのだが、その間にエイトたちとアドルさんたちが一気に魔物を倒していた。

 俺もそれぐらい出来るようになりたい。


 ただ、エイトたちとアドルさんたちは、何やら戦い足りないと呟いている。

 充分だと思うのは、俺だけだろうか?


 そんな感じで次々と大魔王軍を相手にしているため、一日に進める距離は全然だった。

 このペースで間に合うの?


⦅問題ありません。そもそも、大魔王軍の少ないルートを選んで進んでいますので⦆


 これで? と言いたくなった。

 それぐらい、大魔王軍と相対している。


 そもそも、どうしてこんなに大魔王軍が居るのだろうか?

 ……上大陸だから?


⦅そうではありません。軍事国ネスは、こちら側の攻め手側。となると、大魔王軍は守り手側になりますので、当然備えています。また、今は戦闘直後ですので余計に……ですね⦆


 なるほど。

 それにしても、こうまで戦闘が続くと……なんか申し訳なくなってくる。


 結局のところ、俺はまともに魔物を倒す力がないのだと。

 力があれば俺が倒すべきようなところまで、エイトたちやアドルさんたちに任せてしまう。


「お気にするようでしたら、労いをお願いします」

「労い?」


 俺の悩みを察したのか、エイトがそんな事を言い出した。


「……一応聞いておくけど、どんな労いを?」

「全身オイルマッサージを」

「うん。やらない」


 即否定したが、話を聞いていたワンやツゥも参加する。


「主! 主! なら、あたいは絶対折れない木刀をくれ!」

「それは可能なんだろ……いや、物騒だな!」

「アキミチ様。私は大量の本と、それを入れるアイテム袋が欲しいです」

「それも可能なんだろうけど……高くない?」


 いや、エイトは倫理的に不可能だけど、ワンとツゥは叶えようと思えば叶えられそうな気がする。

 ……でも、ワンのはやっぱり厳しいかな?

 ツゥのも金銭面でちょっと……。


「なら、私は最高級ワインでももらおうかな」

「自分は新品の鎧でもお願いしましょうか」

「はいはーい! 私はインジャオと一緒に過ごせるリゾート地が欲しい!」


 ここぞとばかりにアドルさんたちまで。

 アドルさんとインジャオさんのは現実的に可能だと思うけど、ウルルさんのはえげつない。

 リゾート地に行きたいじゃなくて、欲しい、だ。

 まさかの土地を要求とは……。


 こっちの地価ってどうなっているんだろう?

 そもそも、そういうのがあるか知らないけど。


 とりあえず、話半分で聞いておいた。


 というか、なんでみんな、そんな実現不可能な事ばっかり要求してくるんだろうか。

 中には可能なのもあるけど、大体は俺の出来る範囲を超えていると思うんだけど。


⦅マスターには私が付いていますからね。私なら出来ると思っているでしょう⦆


 それはあるかもしれない。

 ……で、出来るの?


⦅出来るか出来ないかであれば、もちろん出来ます。なんの問題もありません。全て合法的に入手可能です⦆


 合法ってところに怖さを感じる。

 でも、セミナスさん頼りの要求というのなら納得だ。


⦅マスターが望み、ある程度の時間さえいただければ、全て手に入れますが?⦆


 いえ、大丈夫です。

 こういうのは、まず気持ちが大事だ。

 気持ちがこもっていれば、どんなモノでも喜んでくれるはず……多分。


 労いに関しては、今直ぐ出来る訳じゃないので、追々としておいた。


 上大陸を進む上で、今問題なのは就寝時だ。

 何しろ、現在ここは大魔王軍が占領している場所。

 至るところに大魔王軍の魔物が居る。

 火を焚けば目印になって見つかるし。


 そんな危険なところで眠れる訳がない。

 と思っていたのだが……。


「………………ご主人様……らめぇ……」

「……アキミチ様……お片付けを……」

「………………」

「……インジャオ……ちゅき……」


 エイトとツゥ、アドルさんとウルルさんが、がっつり寝てやがる。

 周囲の環境なんか関係ないとでもいうように。


 ……神経、図太くない?


「主。気にしてても仕方ねぇよ。襲われる時は襲われるんだ。そこを気にして休めないって方が不味い。悪循環だぜ」

「そうですよ。アキミチ。どんな状況でも、休める時があるのならしっかり休まないと」


 見張りとして起きているワンとインジャオさんが、そう言ってきた。

 確かにそうかもしれない。

 ちゃんと休まないと、体が持たない。


「いざという時は任せな、主! あたいが抱えて逃げてやるよ!」

「あぁ、そういえば、最初の時に自分がアキミチを抱えましたね。懐かしい」

「なんだその話! 詳しく!」


 仲が良いのは良い事だ、と思っておこう。

 二人が言うように、休める時に休んでおいた方が良いのは確か。

 異変があれば、セミナスさんが緊急連絡してくれると思うし。


⦅お任せ下さい⦆


 それに、この中で一番体力ないの、俺だし。

 おやすみなさ~い、と眠る。


 そんな感じで進んでいき、セミナスさんの指示する方向に向かっていくと、ルクイン砦から更に北……荒廃した町に辿り着いた。


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