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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第九章 亡国・武国ドレワーグ
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だって、次出るかもしれないし

 白い小箱の中に入っていたのは、鍵だった。

 ……鍵という事は、何かを開くためにあるモノだと思うんだけど……これで何を開くの?


⦅その時が来ればわかります。それに、その鍵は特殊でして、使用出来る者が限られています⦆


 セキュリティ対策は万全だね。

 でもそれって、俺は使用出来る側なの? それとも、出来ない側なの?


⦅マスターは、残念ですが使用出来ません⦆


 そっか……え? 出来ないの?

 この話の流れだと、出来る方だと思っていたんだけど。


⦅マスターは、残念ですが使用出来ません⦆


 うん。なんで二回言ったの?

 言う必要ないよね?


⦅念押しといいますか、きちんと理解していただくためです。それと、その鍵は今後に必要ですので、なくさないように気を付けて下さい⦆


 自分が使えない鍵なのに?

 ま、まぁ、セミナスさんがそう言うなら、なくさないようにするけど。

 でも、もし使う時がきたら、俺も試してみようかな。


 もしかしたらのワンチャンがあるかもしれないし。


⦅その思考は、もしかしたら次で最高レアリティが出るかもしれないという理論に酷似しており、確かに0%ではありません。ですが、今回の事に至っては確実に出来ませんので諦めて下さい⦆


 そこまで否定しなくても良いんじゃない?

 ほら、なんていうの?

 人はそこに夢を見る……みたいな?


⦅これも全てはマスターのためです。その時になって傷付かないように⦆


 うん。代わりに今傷付いているかもしれないけどね。


⦅そうなのですか? では、私が癒してあげましょう。さぁ、まずは裸になりなさい。もちろん、下着も脱ぐのですよ。あっ、恥じらいながらだとポイントが高いです⦆


 欲望丸出しっぽいよ。

 それに、自ら傷付けて癒やすなんて……マッチポンプ過ぎる。


⦅下着の代わりにオムツを付けてあげましょう。その時は赤ちゃん言葉が推奨です⦆


 もしもし? セミナスさん。

 なんか変な方向に進んでいっているよ?


⦅変な方向ですか? マスターが望んでいるかと思っていたのですが⦆


 そんな馬鹿な!

 ……いやいや、そんな事はないから。

 それともまさか、俺の深層意識では……いや、そんな事はない。


⦅もちろん、眼鏡も付けますが?⦆


 それはお願いします。

 ……しまった! いや、違う! じゃなくて、違わない!


 ………………。

 ………………ふぅ。落ち着こう。

 セミナスさん。赤ちゃん言葉は違うけど、眼鏡は違わないから。


⦅もちろん。わかっています。私もいつも通りに戻ってきましたので⦆


 ……なるほど。

 魔王との対峙を経て、セミナスさんにも色々と思うところがあったというか、ストレスがあったのかもしれない。


 それはそうか。

 何しろ、現状、魔王が近くに居ると、セミナスさんは力を阻害されるようだし。


 俺との会話で少しでも解消されるのなら、いくらでも付き合うさ。


⦅ありがとうございます⦆


 いえいえ。


⦅それではここで一つだけ。そろそろ晩御飯を食べた方がよろしいかと⦆


 あっ、それもそうだね。

 セミナスさんの言う通り、晩御飯をいただいた。

 うん。冷めても美味い。


     ―――


 更に数日が経ち、鍛錬以外、本格的にやる事がなくなりそうになった頃、漸くEB同盟再強化に関する話し合いが終わる。


「お疲れ様です、アドルさん」

「これで漸く一つの区切りがついた。あとは、実際に始まってみて、ラメゼリア王国と軍事国ネスがどう動くかだ」


 わざわざ俺の部屋に来て、テーブルに突っ伏しながら、アドルさんがそう言う。

 アドルさんから漂ってくる疲労感が、本当に半端ない。

 エイトに紅茶を淹れてもらい、一息吐いてもらう。


「それで、アドルさん。最終的な話し合いの場は」

「これからラメゼリア王国の王城に、各主要国が集う事になる。つまり、ラメゼリア王国の王都に戻る訳だ」


 戻るのは別に良いんだけど……でも、もしかしたら、また詩夕たちに会えるかな?

 それにそういう重要な場だと全員で来ると思うし、前回は会えなかった天乃たちにも会えるかもしれない。

 元気にやっているんだろうか?


 とりあえず、これから戻るという事で良いんだよね?


⦅はい。問題ありません……言いたいですが、その前に折角ここまで来たのですから、向かっておきたい場所があります。また来るのは面倒ですからね⦆


 向かっておきたい場所? どこに?


⦅上大陸です⦆


 ……つまり、大魔王軍が居る上大陸に入る、と?


⦅その通りです。ただ、元々マスターがこの世界に現れた場所が上大陸なのですから、そう気にしなくても良いのでは?⦆


 確かに。それはそうだ。

 でも、元々居たのと、これから向かうのとでは、心構えが必要というか。


⦅それに、ここでの話し合いが終わったとはいえ、直ぐに出発する訳ではありません。出発するにも色々と準備が必要です。これから向かえば、その準備が終わる頃には戻ってこれるでしょう⦆


 言いたい事はわかるけど、とりあえず何しに行くか聞いても?


⦅そうですね。今回は特別に、神を解放しに行きます。明確な戦力アップを図りたいので⦆


 なるほど。

 まぁ、そういう事なら願ったりだけど、それは俺とエイトたちだけで?


⦅いえ、そこの吸血鬼に、骸骨騎士と獣人メイドも必要なので連れて行きます。汎用型たちではマスターの安全に不安がありますので。それに、吸血鬼たちにとっても良い刺激になるでしょう⦆


 そっか、わかっ……刺激?

 それに、エイトたちでは不安って……どういった刺激でしょうか?


⦅教えてしまっては刺激になりません⦆


 ドッキリ系なのかな?


⦅違います。が、更なる強さを求めるのであれば、モチベーションのためにも必要な事……いえ、あまり多くを語っても仕方ありません。行けばわかります⦆


 ……神様解放以外に、一体何があるんだろうか?

 とりあえず、アドルさんに伝えてみた。


「構わんぞ。ここから先の準備は、軍事国ネスや獣人国、魔族国が行う準備であり、私たちは身軽だからな。神の解放も本来の目的であるし、何より私たちに刺激となるような事が起こるのだろう? 望むところだ」


 アドルさんはやる気のようだ。

 ここ最近は話し合いばっかりで、大魔王軍戦の時も満足するような戦いじゃなかったのかもしれない。

 色々溜まっているんだろう。


 体を思いっきり動かしたいと思っていても仕方ない。


「じゃあ、行きましょうか」


 多分、あの時感じた恐怖は残っている。

 でも、代わりによくわかった。

 あれを……大魔王軍をどうにかしないと、この世界は平和にならないんだと。


 それに、俺一人で挑む訳じゃない。

 エイトたちに、アドルさんたちも居る。


 ……まぁ、黒い神殿内に入るのは俺一人だけど。


⦅私も居ますが?⦆


 うん。そうだよね。

 俺には、頼れるセミナスさんが付いている。


 大丈夫。


 そう信じて、一歩ずつ前に踏み出していこう。


「それで、これからというのは、この今からなのか? それとも、明日の朝からか?」


 どっちなの?


⦅明日からです⦆


 そうなんだ。

 でも、準備とか?


⦅必要ありません。必要な物はアイテム袋の中に入っています⦆


 それもそうだ。

 アドルさんの方も、明日の朝からで問題ないと返答。

 鍛錬から戻ってきたインジャオさんとウルルさんにもこの事を伝えて、問題ないとの返答を受ける。


 出かける事になったので、お世話になっている身としてはガラナさんにも言っておかないと、と思ったのだが、クルジュさんに尋ねると既に就寝してしまったそうだ。

 なので、伝言として伝えてもらう事にして、俺たちも明日からに備えてさっさと寝た。


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