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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第八章 軍事国ネス
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事前に確認しないと大変な事になる時がある

 エイトたちが俺にへばり付いて眠ったままなので動けない。

 ならもういっその事、寝ようと思った。


 ………………。

 ………………。

 まぁ、寝れないよね。起きたばっかりだし。


 でもなぁ、エイトたちが起きるのはもう少し時間がかかる、

 なのに、俺は身動き出来ない。

 ……暇だ。散歩でもしたい気分。


 あっ、だからエイトたちは俺を物理的に押さえている訳か。

 勝手に居無くならないように。

 でも、そこは一言言いたい。


 俺だって、勝手にウロウロはしないよ。

 きっと自由に動けた場合は、適当にぶらつく訳ではなく、今だったらインジャオさんに会いに行っていたと思う。

 アドルさんじゃないのは、話し合いの最中だと思うからだ。


 なので、心配はいらないと思うんだけど……と考えていると眠気が……。


 ………………。

 ………………。

 起きた。


 エイトたちはまだ動いていない。寝ている。

 俺が再び眠った時間がそう長くなかったって事か。

 仮眠を取ったようなモノ。


 そとどれくらいでエイトたちは起きるんだろう。

 ちょっと確認。セミナスさーん。


⦅……ここで……こうなって……あそこに向かい……世界樹……⦆


 何やら考え事の最中のようだ。

 今後の進路でも模索しているのかもしれないから、邪魔をしちゃいけない。


 それにしても、今の俺の状況って……あれだね。

 頭にエイト、左にワン、右にツゥが居て……これで左右それぞれに誰かが居れば、巨大合体ロボみたいに見えないだろうか?


 そんな馬鹿な事を考えている内に、また眠った。


 ………………。

 ………………。

 何かが動く気配で目が覚めたので、周囲を確認。

 視界は真っ暗じゃなかった。


「おはようございます、ご主人様」

「うん。おはよう」


 エイトからの朝の挨拶に答える。

 こちらを見ているエイトの顔は直ぐ下にあった。

 というか、エイトが俺に抱き着いている……いや、へばり付いている感じ。


「……朝から何やってんの?」

「ご主人様の心音から、無事かどうかを確認しています」

「言い方を変えれば?」

「ここぞとばかりに抱き着いています」


 うん。正直でよろしい。


「あと、あわよくば、この現場を他の者たちに見られる事によって、周囲の外堀を埋めようという魂胆です」

「言い方を変えれば?」

「既成事実を求めています」


 そこはどっちにしても正直に言わなくて良い。

 ただ、これまでの付き合いで、なんとなくだけど思う事がある。

 エイトはこういう冗談を言わないというか、言った時は本気で実行するつもりなのではないか? という事だ。


 なので、今俺の身は危険かもしれない。

 起き上がってエイトを引き離したいが……両腕も動かない。


「えーと。ワンとツゥもおはよう」

「おはよ、主」

「おはようございます、アキミチ様」


 朝の挨拶は返してくれるのに、何故動こうとしないのか。

 ……素直に言ってみよう。


「えっと、このままだと動けないので、放してくれませんか?」

「いくら主でも、それには従えないな。あたいたちがあとから聞いて、どれだけ心配したかと」

「アキミチ様を一人にした事も後悔していますので、そういう事を諸々含めた行動として、受け入れて下さい」


 ワンもツゥも動く気はないようだ。

 しかし、それだと困る事態になる予感。

 というより、もう既にそういう兆候を感じる。


「エイト、ワン、ツゥ。うん。心配してくれるのは嬉しい。でも、ここまでしなくても良いんじゃないかな? 見張るなら、少し離れた位置でも出来るし」

「いいえ。それは許容出来ません。また同じような事があっては対応出来ませんので」

「そうだぞ、主。下手をすれば死んでいたんだ」

「暫くはこのままでお願いします」


 駄目か。

 真面目なツゥですら、引く様子がない。

 でも、このままは本当に駄目なんです。


「そこをどうにか」

「「「駄目です(だ)」」」


 ……うーん。仕方ない。

 そろそろ限界なので、正直に言おう。


「トイレに行きたいんです」


 正直に言うと、ワンとツゥが離れてくれる。


「……エイト?」

「ご主人様は寝起きです。また、体力を全て使い切るような出来事のあとの寝起きなのですから、体が思うように動かない可能性があると思います。なので、ここはエイトが補佐に」

「必要ないから」


 両腕が解放されて自由なので、エイトを引き離す。

 さすがにエイトも本気では……。


「ガッチリ掴んで離れない!」

「全てをエイトに委ねるまではこのままです。もちろん、その旨を書状に残して、押印もお願いします」

「絶対に逃がさない構え!」


 このままでは本当にヤバいので、ワンとツゥに協力を求める。


「なっ! あ、主は、妹だけじゃなく、あたいにも手伝えってのか! わ、わかった。触れってんなら触るし、見とけってんなら見てやる!」

「いや、トイレを手伝えってんじゃなくて、エイトを引き離すのを手伝えって事だから!」


 変な勘違いをしないように。

 それと、前向きにやろうとしない!


「アキミチ様。私もボケた方が良いでしょうか?」

「いや、出来ればツゥは普通に手伝ってくれると助かります」

「ですが、それだとつまらない神造生命体ホムンクルスだと思われないでしょうか?」

「思いません!」


 気にし過ぎだから。

 ツゥはね、そんな事を考えずに、俺と一緒に突っ込み側に回ってくれれば良いんだよ。


 ワンとツゥの協力を得てエイトを引き離し、トイレに……。


「………………」

「「「………………」」」

「今更だけどトイレどこ? というか、ここどこ?」

「ここは軍事国ネスの王城内にある一室です」

「ここの王様が、主を休ませる場所はここが相応しいって言ってな」

「ここは寝室ですので、そちらの扉を出て、右手側にある入り口の直ぐ横にございます」


 なるほど。

 ここは王城の一室で、トイレは入り口横ね。

 ありがとうと頭を下げて、今度こそトイレに向かう。


 トイレから出ると、再びエイトたちに捕まった。

 エイトが胸に、ワンとツゥが両サイドに。


「……わかった。わかったから。どうすれば解放してくれるの?」

「このままエイトを肉装甲として使うのはどうでしょうか?」

「どんな装甲だよ! そもそも人をそんな風に使う気はないから」

「あたいは主の近くに居れて嬉しいぜ」

「うん。そういう反応は困る~」


 エイトとワンは駄目っぽい。

 でも、ツゥは違った。


「では、こういうのはどうですか? 今後、常にというのは難しいでしょうから、出来れば一人で行動する事を控えるというのは?」


 ツゥが、そう妥協点を提案してきた。

 エイトとワンに視線を向ければ、それで手を打ちましょうと頷きが返される。


 ………………。

 ………………。

 まぁ、仕方ないか。

 それに、セミナスさんが魔王に阻害される今の状況では、エイトたちの誰かが傍に居てくれるのは心強い。


 わかったと頷くと、エイト、ワン、ツゥが、小指を前に出してきた。

 俺を含めた四人で、小指を絡ませるように重ね合う。


「ゆーびきーりげんまん。嘘吐いたら」

「『俺はロリBBA一択です』という看板を持って、どこかの王都を一周してもらいます」

「『あたいを目覚めさせた詠唱文』を、どこかの王都のど真ん中で叫んでもらおうか」

「『アキミチ様の性癖・ベスト5』を、華々しく公表していただきましょう」

⦅『貴金属』でも買っていただきましょうか⦆

「いや、ちょっ! ……あれ? 今セミナスさんも」

「「「ゆーびきった!」」」

⦅これで破れぬ約束が成立しました⦆


 え? 成立したの? これで?

 かなり一方的だと思うんだけど……まぁ、こういうのがあった方が、きちんと守ろうという意識に繋がると思って、何も追及しなかった。


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