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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第八章 軍事国ネス
258/590

どれだけ心配をかけたかは、その時はわからない

 ………………。

 ………………。

 意識が覚醒するのがわかる。


⦅おはようございます。マスター⦆


 おはようございます、セミナスさん。

 ……おはようございます?


 でも、目は開けているのに視界は暗い。

 まだ夜じゃないかな?

 それに、何やら柔らかい感触が鼻に当たるというか、頭部全体に覆い被さっているような感じ。


 左手を動かそうとする。動かない。

 右手を動かそうとする。動かない。

 両方とも、何かに捕まれている感じ。

 こちらもやわっこい。


 謎が謎を呼ぶこの状況。

 ……えーと、セミナスさん。


⦅はい。なんでしょうか?⦆


 俺は今、どういう状況なのでしょうか?

 それに、どうして寝ていたのかわかりません。


⦅そうですね。まずはよく思い出してみましょう。深く、心の奥に溶け込むように記憶を呼び起こすのです。……初めて性癖を自覚した時の事を教えて下さい⦆


 ……あれはそう。小学六年生の時。

 登校している時、バスに乗っていた高校生の綺麗なお姉さんが、不意に眼鏡をかけた。

 眼鏡をかけるとより綺麗に、キラキラと輝いて見えて……そこから、眼鏡にも色んな種類があって、眼鏡一つだけでもがらりと雰囲気が変わる事にって、これは違うよね!


 どう考えても今思い出すべき記憶は別にあると思うんだけど。


⦅失礼しました。その通りです。マスターが眼鏡好きなのは既に周知の事実でした⦆


 うんうん……ちょっと待って。

 周知の事実って事は、誰もが知っているって事?


⦅はい。マスターの周囲では、割と知られている事です⦆


 そうなんだ。まぁ、別に知られて困るような事じゃないから、別に良いか。


⦅では、改めて。深く、心の奥に溶け込むように記憶を呼び起こすのです。……無意識下の、マニアックな性癖を教えなさい⦆


 ……マニアックかどうかはわからないけど、なんか手というか、綺麗な爪を見ると少しだけムラムラしま……セミナスさん?


⦅失礼しました。つい口が軽やかに滑って⦆


 つるっつるですね。


⦅ですが、もし体を手に入れたなら、手と爪のお手入れは入念に行おうと思います⦆


 それは……お願いします。

 じゃなくて。

 というか、もうきちんと思い出したから。


 それで、軍事国ネス軍は勝ったの? 魔王と相対したインジャオさんは? 俺はどうなっているの?


⦅一つずつ答えていきましょう。まず、軍事国ネス軍が勝利を得ました。侵攻してきた大魔王軍は壊滅しています。現在は、逃げ出した大魔王軍が近隣に潜んでいないか、国内を見回っている最中です⦆


 勝ったのか。よかった。


⦅マスターが頑張った結果でしょう。軍事国ネス軍だけでは敗北していました。汎用型たちと神共だけでも勝利を得ていたでしょうが、そこに竜たちと獣人たちの加勢が加わった事で、死者、負傷者共に想定よりも下回っています。快勝と言っても良いでしょう⦆


 そっか。勝った事は嬉しいけど、やっぱり死者や負傷者は出ているよね。


⦅戦争ですので。ですが、負傷者は既に治癒されていますし、死者に対する弔いに関しては国としてきちんと対応しているようですので、マスターがそこまで気に病む必要はありません。それに、死者に対する何よりの供養は、この世界を平和にする事なのですから⦆


 ……うん。ありがとう。

 それじゃあ、獣人国の人たちは? もう帰ったの?


⦅神共は去りましたが、獣人国の者たちはまだこの国に残っています。吸血鬼を交えて、そのままEB同盟に関する話し合いを行っています⦆


 行動が速い。

 話し合いを行っているという事は、事前に絶対来ると言っていたウルトランさんが居るのかな。

 ……まぁ、ああいうタイプは、戦いとなると絶対に何がなんでも来そうだから、不思議ではないけど。


 一国の王としてはどうかと思うが、そこら辺は国の特色という事で納得しておこう。

 獣人国で一番強いのが、王になる訳だし。


 それで、インジャオさんの方は?


⦅結果としては、引き分けという形でしょうか。互いに相手を認識した段階で、魔王が姿を消しました。骸骨騎士も、今回はマスターの代わりに魔王の注意を引き付けるのを目的にしていたため、あとを追うような真似はしていません。ただ、現在の彼我の戦力差をおぼろげながら感じ取ったようで、もっと強くなるために鍛錬をしています⦆


 つまり、魔王はインジャオさんよりも強いって事?


⦅行動がそれを証明しています。残念ながら、阻害されてしまう私では、正確な答えを用意する事が出来ません⦆


 魔王……どれだけ強いんだか。

 そんなのにも、詩夕たちは相対する訳か。


 ………………。

 ………………。

 みんなを強化するために動くのも良いけど、俺自身も強くなるために動いていかないと。

 今直ぐ思い付くのは、盾の神様を解放する事かな。


⦅そうですね。あとは私も能力向上を、一つの目的として動こうと思います⦆


 頼もしいです。

 でもまぁ、アドルさんたちも来ているなら、あとで色々話さないとね。

 ……という事は、DDたちも居るんだ。


⦅現在、王都の方で興行中。侵攻してきた大魔王軍に致命的なダメージを与えた英雄としてかなり注目を集めており、着々と増えていっています⦆


 何が増えているのかは聞かない。

 言われなくてもわかる。

 エルフの里でDDたちを引き留めるために咄嗟に言った事とはいえ、まさかここまで広がるとは。


 世の中、何がどうなるかわからないもんだ。


 ……でも、とりあえず、DDに言いたい。

 わざわざ俺に見せなくても良いんだよ?


⦅それは無理です。DDは口に出しませんが、どうやらマスターの審美眼をかなり信頼しているようで、とりあえずある程度踊れるようになれば、マスターに見せてその反応を窺っているようですので⦆


 傍迷惑な、と思うが、どこか嬉しいと思ってしまうのは……褒められているというか、認められているようなモノなので、きっと仕方ない。

 まぁ、それに、下大陸にある大きな国は大体寄った。

 軍事国ネスでのダンスを見れば、当分は何も起こらないと思う。


 のんびり出来るな~。


⦅……フッ⦆


 その、そうなると良いですね、みたない息の吐き方は何?

 不安になるんですけど。


 それで、これが重要なんだけど、今俺はどうなっているの?

 視界は真っ暗だし、体が全く動かないんだけど。


⦅まず、マスターは魔王と対面した事で思っていた以上に消耗していたようです。そのため、こうして回復するまでに丸一日を要しました⦆


 魔王のプレッシャーにでもやられたかな?

 確かに怖かった。普通に怖かった。

 というか、どうして魔王が居るんだよ!


 普通魔王って、居城とかで待ち構えているモノなんじゃないの?


⦅マスター。それはゲームだったらの話です。魔王も生きている以上、どのような行動を取るかは予測不可能です……今の私では⦆


 うん。読めなかった事をかなりに気にしているようだ。

 別の話題にしよう。


 それで、視界が真っ暗で、俺の体が動かない理由は?


⦅それは簡単です。マスターが魔王に出会っていた事を知った汎用型が頭部にへばり付き、特化一型が左腕を、ツゥが右腕を挟み込んで眠っているからです。これはマスターの身を心配する故の行動ですので、大目に見ていただけると⦆


 そっか。エイトたちにもかなり心配をかけてしまったようだ。

 それならまぁ、これも仕方……ちょっと待って。

 え? 俺が身動き出来ない状態で眠っているの? 三人共?


⦅はい。自分たちが眠っている間にどこかに行かれるのは嫌だ。もしくは、眠っているマスターを完璧に守るための布陣。だそうです)


 そんな布陣だよ! と言いたいけど……まぁ、仕方ないか。

 それだけ心配をかけた訳だから、甘んじて受け入れよう。


 ちなみにだけど、エイトたちが目覚めるまでどれくらい?


⦅あと三時間弱です⦆


 よし。もう一眠りしよう。


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