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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第二章 竜とエルフ
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エルフ!

 森の中の開けた場所に下りると、そこで戦っていた二人もさすがに気付き、動きを止めてこちらを見ていた。


 ……よっこいしょ。


 ジースくんから下りて、俺もその二人を見る。

 二人はエルフだった。

 そりゃそうだ。

 だってここ、エルフの森らしいし。


 それに、耳が長い……耳が長いな。

 大事な事なので、二回言った。

 というか、あれだけ長い耳って、仕組みがどうなっているんだろう?

 軟骨? コリコリしてる?


 いや、待って。

 ………………。

 ………………。

 耳掃除って、どうするの?


 いや、長い分、時間がかかるのはわかる。

 俺が言いたいのはそれじゃなくて、膝枕で耳掃除をして貰う時だ。

 そのままだと邪魔だろうし、くたっと折るの?

 それとも別の………………はっ! まさか、太ももの間に挟む? とか?


 それはそれで興奮するような……。


⦅業の懐が深そうですね、マスター⦆


 いや、これはそういう事じゃ……ちょっと待って。

 懐が深そう?

 まだ他にも色々とあるように言うのはやめて欲しい。

 ただ、今わかる事は、どちらも女性で美人であるという事だ。


 一人は、少しぼさぼさの金髪に、緑色の目、少々目付きが鋭く、軽装を身に纏っているが、筋肉質な体付きをしているのが見るだけでわかった。

 腹筋とか、バッキバキに割れてそう。


 一人は、長く整えられた金髪に、緑色の目、優しい目元に、もう一人と同じ形の軽装を身に纏っているが、まだまだ筋肉質じゃないというか、全体的に柔らかそう。

 抱き心地が最高! とか言われそう。


 ただ、この二人には共通点が多い。

 目付きの違いはあるが何となく顔立ちが似ているし、胸が小さくてお尻が大きいなど、特徴もどことなく似ている。

 身長は、長く整えられた金髪の方が、頭一つ分高いけど。


 だからだろうか、はたから見れば、双子か姉妹にしか見えない。

 どっちだろ?


 というか、これからエルフとのコミュニケーションだけど、大丈夫だろうか?

 これまでの事を考えると………………無理っぽい。

 自信がなくなってしまった。

 特に言葉関係で……。


⦅問題ありません。いつも通りに振る舞えば良いのです⦆


 え? そうなの?

 まぁ、セミナスさんがそう言うなら。

 それに、今は頼れる仲間たちであるアドルさんたちが居るので問題ない。

 コミュニケーションよ。かかってきなさい!


 ところで、ここが目的地であるエルフの森で合っているよね?


⦅はい。その通りです⦆


 なら、ここで何をすれば良いの?


⦅ここでマスターがすべき事を行うには、まだ条件が揃っていません。行うべき時を見誤れば、全てが徒労に終わってしまいます。その時が来ればお知らせしますので、少々お待ち下さい⦆


 ん。わかった。

 ……でも、一体何をするんだろう?

 んん~……と悩むが、一番の問題は別にある。

 ……場の雰囲気がもの凄く悪い。

 具体的に言うと、DDとぼさぼさ金髪のエルフが、メンチを切り合っていた。


「危うく当たるところであったぞ。矮小な分際で竜を狙うとは、どうなるかわかっているのだろうな」

「はっ! 事故だろ! 勝手にこっちのせいにすんじゃねぇよ! そもそも、あんなのを危うく当たるところだったとか言う辺り、竜といっても大した事ないんだな」

「ああぁん!」

「おぉ!」


 バチバチと火花が散っていた。

 こえ~……。

 しかし、あのエルフ凄いな。

 竜って、この世界での不可侵みたいな存在でしょ?

 それを前にして一歩も引かないなんて。


 ……このまま一戦するのだろうか? と思ったのだが、そうはならなかった。


「やれやれ、何事かと思えば、竜の来訪とは。これは驚いた。状況の説明をお願いしたいのだが……」


 森の中からエルフの集団が現れ、その先頭に立つ、二十代半ばくらいの優男風の男性エルフが、大きく溜息を吐いた。


     ◇


「つまり、グロリアを鍛えている最中に段々と熱が入り、前々から邪魔に思っていた、訓練場にあった岩塊を投げた、と」

「そうそう」

「それでグロリアが避けて……その先に竜たちが飛んでいて、危うく当たるところだった、と」

「そんな感じ」

「そうしたら、竜たちが下りて来て怒っている、と」

「当たった訳でもないのに、短気だよな、竜って」

「当たり前だ! この大馬鹿者がっ!」


 ぼさぼさ髪の女性エルフが、優男風の男性エルフにめっちゃ怒られていた。

 でも、怒られている女性エルフの方は全然堪えていない。

 反省している素振りが一切見えなかった。

 寧ろ、早く終わらないかなぁ……と辟易しているように見える。


 それで、グロリア? って呼ばれている、整った髪の女性エルフの方は、苦笑を浮かべてそれを見ていた。

 まるで、やんちゃな妹を微笑ましく見ている姉のようだ。


 全く反省していない女性エルフを見て、優男風の男性エルフが頭を抱えて大きく溜息を吐く。


「……帰って来たと思ったらコレか。……これだからシャインは」


 ………………。

 ………………え? 今、なんて呼んだ?

 俺の聞き間違えでなければ、「シャイン」って言った?

 ………………。


「………………シャインって! 見た目には合っているけど、性格が違い過ぎる!」


 名前と受けた印象が違い過ぎる。

 もっと別に似合いそうな名前がありそうだけど。


 ただ、油断というか、気が抜けていた可能性はある。

 ただ、セミナスさんがいつも通りにって言っていたし、DDにも普通に接していたのが影響していたのかもしれない。


「私の名前に文句があるのか? ん?」


 ニッコニコと笑みを浮かべながら俺の肩をガッチリ掴んで逃がさないようにする、ぼさぼさ髪の女性エルフが目の前に居た。

 危機感が欠如していた可能性がある。

 全然動きが見えなかったです。


「……いや、その……」


 サッと目を逸らす。

 この笑みはなんかヤバイ! と本能が訴えかけている。

 危険な状況のため、誰かに助けて貰わないと!

 周囲を窺う。


 第一候補は、先程叱っていた優男風の男性エルフである。


「久し振りだな、ラクロ」

「あぁ、前に会ったのはいつぐらいだったか。インジャオとウルルも壮健でなにより」


 アドルさんたちが挨拶を交わしていた。

 あのエルフは「ラクロ」って名前で、アドルさん達の知り合いだったのかじゃない!


 何で今!

 どうして今!

 スイマー!


 ……あぁ、もう、勝手に思考が……。

 というか、この状況見えているよね!

 わざとか! わざとなのか!


 これは不味いと、ジースくん含む竜たちに視線を向ける。

 ……DDを宥めていた。

 駄目だ。あっちに救援は頼めない。

 どうしたものかと悩む前に、グロリアと呼ばれていた女性エルフが、まぁまぁと取りなしてくれた。


「落ち着いて下さい、お母様」


 ………………。

 駄目だ。我慢……がま……。


「姉妹じゃなくて母娘かよ! しかも母親の方がちっちゃ」


 くっ。さっきの今ではとめられなかった。

 この口の馬鹿!


「お前、中々面白い事を言うじゃないか?」

「あっ、やっ、その、すみません! ついぽろっと! ありますよね、こういう事って! だから暴力反対! てか、ちょっとやる事からあるから、死ぬのは不味いので出来ればギリギリ生かしておいて貰えるとありがたいかなぁ~」

「……へぇ、何をやるつもりだ? 正直に言え」

「いや、その……神様解放を……それが俺の役割らしいので」

「………………へぇ~」


 シャインと呼ばれた女性エルフが、肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべる。

 何となく、こう……面白い玩具を見つけた! みたいな……。


 グロリアと呼ばれた女性エルフは、何故か驚いた表情を浮かべる。


「詳しく教えて貰おうじゃないか」


 逃がす気はさらさらないようだ。

 ……何かロックオンされた。

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