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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第二章 竜とエルフ
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緊急回避!

「それでアキミチよ。そのシユウとツネミズは、どこに居るのだ?」

「………………」


 DDからの問いに、俺は首を傾げる。

 それは寧ろ、俺が知りたい。

 確認するようにアドルさんへ視線を向けるが、同じ反応だった。


「武技の神からまた会えるとは言われたけど、どこに居るかまでは……」


 正直に答えた。

 というか、この世界の地理なんてわからないので、どこに居るかとか聞かれても困る。

 わかってる? 俺、異世界出身。

 しかも、草原、森、黒い神殿、竜の領域近く、しか行った事ないんだよ?

 町になんて一歩も足を踏み入れていない。

 わかる訳ないじゃん。


「そうですね。アキミチが聞いた、武技の神の言動から察するに、戦いが起こっている場所であると思われます。恐らくは、東西の陸続きのどちらか……もしくはその付近に居るのではないかと」


 アドルさんがそう補足してくれた。

 ……そうなのか、じゃあ、エルフの森に行くのは止めて、そっちに行こうよ。


⦅駄目です。寧ろ、今のマスターでは死にます⦆


 駄目だって。そして、死ぬだって。

 そういや遠回りすると死ぬんだっけ?

 やっぱ止めておこう。

 親友たちには早く会いたいけど、生きて会わないと。


「つまり、東のビットル王国か、西の」

「国の名に興味はない。そもそも国だろうがなんだろうが、竜にとっては関係ないのだからな」


 アドルさんの言葉を遮って、DDがそう言う。

 そうですね。

 竜のパワー凄いですもんね。

 世俗とか関係ない、とかかな。


「……とりあえず、人の多いところへ向かえば良いか」


 DDが考えるように顎に手を当て、そう呟く。

 間違いなく、騒ぎになると思う。

 それも大騒ぎ。


 ……とりあえず、俺は無関係ですと言い張ろう。

 アドルさんも同じ事を思ったのか、あれ? もしかして余計な事を? と考えているように見える。

 確かに、俺は「わからない」だったけど、アドルさんは「どちらか」と場所を示していた。

 ……やってしまった! と、アドルさんが天を仰いでいる。


 そんな感じで、今日はこのまま寝て、明日出発する事になった。


     ◇


 翌日、早速出発する。

 ただし、面倒なのは間違いない。

 何しろ、目の前にあるのは空に浮かぶ雲よりも標高がある山。

 頂上が見えない。

 さすがに頂上経由で行く訳ではないだろうが、麓でもそれなりに危険そうな場所っぽく見えるので、通り抜けるだけでも大変そうだ。


 ただ、険しい山を登る事はなかった。


「ついでだ。目的地まで乗せていってやろう」


 そう言って、DDが自分の背中を指し示す。

 見れば、他の仲良くなった竜たちも、同じように自分の背中を示して、漢の顔を見せている。


「……ついで? 何の?」

「決まっているだろう。これから私達はシユウとツネミズを捜しに行くのだ!」


 DDの言葉に、竜たちがその通りだ! と、ニカッと良い笑みを浮かべる。

 やる気に満ち溢れていた。

 ……やっちまったかもしれない。

 色んな方面の色んな人に、色んな迷惑をかけそうだなぁ。

 もしもの時はお願いします! とアドルさんにアイコンタクトを送った。


 ……無理無理。と返される。


 ただ、DDからの申し出はありがたかったし、セミナスさんも特に止めはしなかったので、その言葉に甘える事になった。


 竜の背に乗り、空を舞う。


「うおおおおおぉぉぉっ!」


 思わず叫んでしまった。

 でも、それぐらい絶景である。

 空の上から直に地上を見るって……なんか凄い。

 いやもう、凄いとしか言えない。

 飛行機……じゃなくて、パラシュートを使って降りる時って、こんな感じの風景が見えているのだろうか。


 それにガッシリとした竜の背。

 ……大きな背中だ。

 ……安定感というか、安心感がある。

 竜って存在に、色んな人が惚れ込むのもわかるような……わかっちゃいけないような……。


 ……それにしても、乗って暫くしてから気付いた事がある。


「ねぇ、『ジース』くん。なんで俺は普通に乗っているだけなのに平気なの? 普通、風圧とかそういうので飛ばされると思うんだけど? もしかして、俺の中の隠された力が遂に目覚め、世界最強へと覚醒」

「あっ、それはないよ。俺が魔法でアキミチを守っているだけだから」

「なるほど。ありがとう」

「いえいえ」


 俺の問いに答えてくれたのは、俺が背に乗っている竜だ。

 一番うまが合ったので仲良くなり、ダンスバトルが始まる時に、細長い棒を叩いて合図を出していた竜である。

 DDよりは小さいけど、他の竜たちよりも少し大きい。


 なんでも、DDに次ぐダンスの腕前らしく、「次期エース」と他の竜たちが呼んでいたので、それを縮めて「ジース」と呼ぶと、それがあっという間に定着した。


 ……DDを抜いて「エース」になったら、「エース」と普通に呼ばれるのだろうか?

 そう呟くと、DDがもの凄い目でジースくんを睨んでいた。

 ……その時も謝ったけど、もう一度謝っておこう。

 ごめんよ、ジースくん。


 ちなみに、先頭を行くDDの背にはアドルさんが乗っていて、エルフの森の場所を指し示しながら教えているようだ。

 ついでに言っておくと、当初、インジャオさんとウルルさんは、同じ竜の背に乗ろうとしていた。


 でも、それを竜たちが激しく拒否。

 ペッ! と唾を吐いて、集団ボイコットし始めた。

 気持ちはわかる。


 自分の背の上でイチャつかれるとか……どんな拷問だよ!

 という訳で、インジャオさんとウルルさんは別々の竜に乗っている。

 これに関しての弁護は必要ない。

 必要性が一切ない。


「ところでジースくん。ここまで来といてなんだけど、竜の領域に入りそうなのを見張っていなくて良いの?」

「あぁ、大丈夫。アキミチ達が寝ている間に、他のを呼んでおいたから。領域から離れる許可も、きちんと竜王様から貰ったし、どこにも問題ないよ」


 行動が速いね。

 そして、やっぱり居るんだね、竜王。

 出来れば、そういうのとは関わらない人生を送りたいけど。


⦅………………⦆


 セミナスさんの沈黙が怖い。

 否定しないという事は、竜王と関わる事が確定しているのだろうか?


 そんな事を考えている内に、DDと竜たちが下降し始める。

 早いな。もう着いたの?

 飛ぶって……凄過ぎる。

 それとも、思っている以上にDDと竜たちの速度があるのか、エルフの森が近くにあったのか……その両方かもしれない。


⦅マスター! その竜に今直ぐしがみ付いて下さい!⦆

「アキミチ! しっかりと俺にしがみ付いて!」


 セミナスさんとジースくんの焦る言葉に反応して、しっかりとしがみ付く。

 瞬間、ぐるぐると世界が回る。


 止まったと思えば、直ぐ傍を巨大な塊が横切っていった。


「……ふぅ、危なくぶつかるところだった。ぶつかっても俺は平気だけど、今は背にアキミチが居るしね」


 どうやら、俺を慮っての緊急回避行動を取ってくれたようだ。

 吐きそうだけど。

 ……吐いて良いかな?

 今なら空をキラキラと輝かせる事が出来そうなんだけど。

 でも、それはさすがにと我慢して、感謝の言葉を告げる。


「それはありがとう。でも今の何?」

「岩塊かな? こっちを狙ったモノじゃなさそうだけどね」


 そう言うジースくんは、下を見ていた。

 なので、俺も窺うようにそっと見てみる。


 地上にある森の中のポッカリと開けた場所で、何やら戦っている二人が居た。

 地面が抉れているし、そこから岩塊が飛んできたのは間違いないと思う。

 ……どうやら、こちらにはまだ気付いていないようだ。


 DDを先頭にして、竜たちはそこに向かって下降していった。

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