表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第八章 軍事国ネス
230/590

求めるのは快適さか、心の休まりか

ここから章が変わります。

 それなりに時間がかかるかと思っていたが、後半はさくさくっと進む事が出来たため、予定よりも早く軍事国ネスの王都に辿り着いた。

 外から見る限り、王都を囲む壁は高くて厚そうだ。

 それに、王都というよりは砦と言った方が良いような外観だ。

 中に入るための巨大な門を守る門番さんたちも、どことなく屈強そうに見える。


 ……どことなく世紀末っぽい感じの屈強さに見えるのは、多分俺の見間違いだろう。

 考えてみれば、ここから上大陸に進攻している訳だから前線基地みたいなモノだし、俗に言う荒くれ者みたいな感じの人たちが多いのかもしれない。

 ……絡まれたらどうしよう。


⦅その時は、最終的に相手が泣いて土下座、人としての尊厳を少しずつ徹底的に叩き折り尽くされる事になるでしょう⦆


 セミナスさんを敵に回すとそういう事になるようだ。


 そして、シュラさんは馬車でそのまま突撃しようとしていたようだが、カリーナさんが待ったをかける。

 カリーナさんが無事に戻って来ている事を邪魔者たちは知らないはずだから、そのまま知らせず、姉である女王のところに行きたいそうだ。

 状況を利用しようってヤツかな。


⦅良いと思います⦆


 セミナスさんが賛同したので、俺も同意するように手を上げる。

 次いでエイト、ワン、ツゥも手を上げた。

 最後にシュラさんも同意しますと手を上げる。

 手を下げてどう……いや、やらない。


 というか、それに反応しているのが俺だけだった。

 ここが異世界なんだと改めて確認。

 出来るだけ姿も見せない方が良いかもしれないと、気温が低い時に使おうと思っていたフード付きローブをアイテム袋の中から取り出して渡す。


 ありがとうございますと受け取ったカリーナさんとシュラさんはローブを羽織って、フードをすっぽりと被る。

 これでパッと見は、二人だとわからない……と思う。

 という一応の処置をしてから、王都に入るための列に大人しく並ぶ。


 さくさく進むが、少し時間はかかりそうだ。

 なので、今の内にセミナスさんにアドルさんたちの事を確認して貰ったが、どうやらここに来るのは、二、三日後らしい。

 随分と早く来たものだ。


 でも早く来たという事は、その間はどうしよう。

 何かやる事でもあれば、そのまま時間潰しになるんだけど。


⦅問題ありません。やる事はあり⦆


 観光かな?

 やっぱり王都というだけあって広そうだし、観光し甲斐がある。

 ……ん? 何か言った? セミナスさん。


⦅マスターは、どれだけ観光がしたいのですか?⦆


 え? 観光、楽しいじゃない。

 色んなモノを見るのって、それだけで楽しいと思うけど?


⦅確かにそうかもしれませんが……いえ、マスターですしね⦆


 それで納得されるのは、なんか納得がいかない。


⦅ですが、ここで残念なお知らせです。吸血鬼たちが来るのを待っている間、観光をする暇はないでしょう⦆


 ……どうやら、何かあるようだ。

 それは一体なんだろうと考えている間に、俺たちの順番が来た。


 門番たちが確認してくるが、カリーナさんとシュラさんが少しだけ顔を見せると、どうやら二人の事を知っていたようで動きが固まる。

 あっ、これは叫びそうだ、と思ったので、先に「シーッ」と唇に人差し指を当てて牽制。

 それで意図が伝わり、門番たちは慌てて両手で口を塞ぐ。


 それも過剰反応だと思うけど……馬車で陰になっているし、多分バレていないと思う。

 門番たちにカリーナさんがこそこそっと事情を伝え、難なく王都に入る事が出来た。


 カリーナさんの説明によると、軍事国ネスの王都はヒョウタンを横に置いた形をしているようだ。

 右にある大きい円の方が王都で、左にある小さい円の方に王城がある。


 王都内は、他の王都と比べてもそう遜色はなく、同じくらい発展しているように見えた。

 一階建てが多いとか、共通点は多々あるが、そんな中で特色を挙げるとするならば、どことなく忙しい感じだろうか?

 個々がではなく、全体的に。


 そう思った事をカリーナさんに尋ねる。


「そうですね。いつもはもう少し落ち着いているのですが、そろそろ上大陸に向けて進攻する予定があるのかもしれません。そのための準備で慌ただしいのだと思われます」

「そうなんだ。というか、かもって事はカリーナさんも確証はない感じ?」

「進攻の全てに関わっている訳ではありませんし、今の私はEB同盟正常化……いえ、再強化に向けて動いていますので」


 王都に来るまでの間に、それなりの信頼関係を築けたようで何より。


「シェラが信じている、という前提を忘れないように。アドミリアル様が現れて事情を窺うまでは、完全に信じた訳ではありませんので」


 手厳しい。

 俺を信じているというシュラさんは、このまま王城に向かおうとしていたが、俺はそれに待ったをかける。

 宿の確保が先だ。


 という訳で、アドルさんたちとの待ち合わせ場所である……なんだっけ?


⦅宿屋『癒しの盾』です⦆


 そうそう。それそれ。


「……という訳で、宿屋『癒しの盾』に向かって下さい」

「あそこか! あそこは確かに良い宿屋だ! 私の中じゃ、この王都内一と言っても良い!」


 シュラさんベタ褒め。

 ならそこに、と思ったが、カリーナさんから再び待ったが入る。


「宿に行く必要はありますが、そのまま宿泊する必要はありません」

「……俺たちに野宿しろと?」

「そうではなく、王城に空き部屋がいくつもありますので、そちらをご利用下さい。急なお客様が来られても問題ないように、清掃もきちんとしていますので」


 ……別に悪いとは言わないけど、やっぱり王城だと落ち着かないんだよね。

 それに待ち合わせもあるし。


「アドミリアル様との待ち合わせは、宿に伝言を残し、王城にすればどこにも問題はありません。それに、EB同盟再強化の話をするのなら、近くに居た方が良いのではないでしょうか?」


 いやまぁ、それは確かにそうだけど。

 でも、やっぱり、どちらが良いかと問われれば、俺は普通に町の宿の方が良い。

 そっちの方が、気が休まると思う。


 というか、俺は別に王城じゃなくても良いような気がする。

 EB同盟再強化の話し合いに関しては、アドルさんたちが居れば良い訳だし、そこに俺は必要ない。


 と思っていると、エイトがカリーナさんにこそこそと耳打ち。

 なるほど。と一つ頷いたカリーナさんが、俺に視線を向けてくる。


「王城の方がふかふかベッドですし、広い浴場を独り占め出来ますよ?」

「そちらでお願いします」


 しまった。瞬間的に応じてしまった。

 直ぐにお断りしようとしたが、言質を取りましたと、どこか黒い笑みを浮かべるカリーナさんを見て、もう駄目だと諦める。


 仮にもご主人様と仰ぐなら、情報の流出は避けて欲しいんだけど。


「というか、エイトたちは王城の方がよかったの?」

「城の方が、新たな学んだ技術が活かせそうですので」

「あたいはどっちでも良いけど、のんびり風呂に入れるなら、そっちの方が良いな」

「人の生活がどこまで発展したのか興味があります」


 三者三葉の意見。

 でも待って欲しい。

 ワンとツゥは別に問題ないけど、エイトの新たな学んだ技術って何?

 ……あの宰相ぉ! 一体いつの間にぃ!


 いつかやり返してやると息巻いている間に、馬車は宿屋「癒しの盾」に寄って伝言をお願いし、王城に向かった。


ここで報告するのを忘れていました。

一昨日ですが、本作「この行く道は明るい道」の書籍が発売されました。

ちょこちょこ内容追加して、書き下ろしも頑張りました。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ