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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第七章 お礼
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心の中にそっと仕舞う

「ふむふむ。ワンお姉様は知っていますが、これが一番下の妹であるエイトですか」


 眠っているエイトの顔を、ツゥが確認するようにジッと見ている。

 俺が地下に行ってツゥを目覚めさせるまで、そう時間はかかっていない。

 なので、当然エイトとワンはまだ寝ている。

 書き残されたメモを確認。


 ……まだ大体お昼くらいには起きそうかな。

 それで、セミナスさん。これでもう寄り道というか、用事は済んだ感じ?

 次に向かうのは、軍事国ネスの王都?


⦅はい。一直線に向かいます⦆


 予定通り?


⦅概ねそうです。神の解放が思っていたよりも早くに済みましたので、予定よりも早く着く可能性はあります⦆


 まぁ、早く着くのは別に良いんじゃない?

 それで、教えて貰えるなら教えて欲しいんだけど、軍事国ネスではどんな事が起こるの?


⦅……きっと何かが起こるでしょう⦆


 ふわっとした返答。

 まぁ、教えてくれるとは思ってなかったので、別に構わない。

 いつも通り、行けばわかる。


⦅運動不足も解消しましたし、いつも通りで大丈夫です⦆


 うん。わざわざ運動不足解消を言うって事は、また動く事になるのかな?

 疲れそうな予感。

 ……いやいや、余計な事は考えない。

 倒れなければ良いや。


「少しよろしいですか? アキミチ様」


 ツゥが話しかけてきたので答える。


「ん? どうかした?」

「アキミチ様は先ほどからどこか思考しているかのように黙っていましたが、これはご説明にあったスキル『セミナスさん』と話していた、と解釈して良いのですか?」

「うん。そうだよ」

「私も話す事は出来るでしょうか?」

「ごめんね。まだ出来ないんだ。対応するスキルがないみたいで」


 そう答えると、そうですか、とツゥが納得する。


「アキミチ様の未来の妻……つまり、私にとっても将来の主ですし、ご挨拶をと思ったのですが」

⦅素晴らしい心掛けです、マスター。褒めてあげましょう。それと、私が『これからよろしくお願いします。特化二型……いえ、ツゥの働きに期待している』とも⦆


 セミナスさんが名前呼びだとぉー!

 今までそんな事はなかったのに!

 それもいきなり!


⦅マスターが望むのであれば、マスターの事も名前で呼びますが? ですが、そこはやはり婚礼のあとに⦆


 いえ、大丈夫です。今のままで良いです。

 ……それにしても、セミナスさんの事は多少というか、そこまで深く……それこそ、どういうスキル程度の内容で、どんな性格かは伝えていない。

 なのに、このセミナスさんの性格を考慮しての発言というか、的確に喜びそうなクリティカルワードを言うなんて……。


 まさか、あんな僅かな情報でそこまで辿り着いたのか?


「どうかされましたか? アキミチ様。セミナスさんが、私の事を何か言っているのでしょうか?」


 微笑みを浮かべながら、ツゥが声をかけてくる。

 ……その微笑みが、どことなく黒く見えているのは気のせいであって欲しい。

 とりあえず、セミナスさんの言葉を伝えておく。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 と、ツゥが俺に向かって一礼。

 まぁ、俺の中に居るようなモノだしね。

 ……ただ、俺の中で疑惑が生まれてしまった。

 まさか、全て計算された行動じゃないよね?


 もしそうだったら怖い……怖いが、これは考え方一つだろう。

 味方なら心強い事この上ない。

 それに、俺の中でツゥと出会わせてみたい人が居る。

 魔族の国の宰相さんだ。


 どんな会話を繰り広げるのか……興味がある。

 EB同盟再強化の話の終盤で各国が集まるから、その時に出会うのは確実。

 その機会はあるという事か……。


 よし。気にしない事にしよう。

 黒く見える事は、そっと胸の奥に仕舞った。


 こんなやり取りをしつつも、エイトとワンが起きるまでにはまだ時間がある。

 考えてみれば、まだ俺は朝食も食べていない。

 なので、ツゥにご飯の用意を手伝って貰った。

 ……手際、めっちゃ良い。


     ―――


 ツゥが現状に関して質問してくるので、答えていく。

 わからない時は、セミナスさん頼り。

 そうしている内に、エイトとワンが目覚める。


「おはようございます、ワンお姉様。お久しぶりです」

「んぁ?」


 寝惚けているようなので、少々お待ち下さい。


「おはようございます、エイト。初めまして。あなたの姉の一人です」

「……どこのどちら様でしょうか? 姉姉詐欺ですか?」


 いや、姉だから。正真正銘エイトの姉だから、信じてあげなさい。


「おぉ! ツゥじぇねぇか! 久しぶりだな。元気だったか? なんだ、お前。こんなところに居たのか?」


 きちんと目覚めたワンが、ツゥにそう声をかける。

 ツゥは嬉しそうに、どういうところに居たのかを説明し始めた。

 その間に、エイトがスススッと俺の傍に。


「あれが、エイトの姉の内の一人ですか?」

「そうだよ」

「本当に? ご主人様も認めている?」

「俺が認めているかどうかは関係なくない? でもまぁ、本当にそうなのは間違いないよ」

「そうですか。……ふむ」


 エイトが観察するようにツゥを見る。

 そんな風に姉を見るんじゃありません。


「しかし、それだと少々困りました」

「何が?」


 困るような事なんかないと思うけど?


「エイトは将来、ワン姉のように育つと思っていたのですが……」


 そう言って、エイトはワンの胸付近を見て、ツゥの胸付近を見て、最後に自身の胸付近を見る。


「少々、将来に不安を覚えます」


 いや、そもそも成長自体しないと思うんだけど?

 それでもそういう事が起こった場合、それは成長ではなく改造……魔改造と表現すべきだと思う。

 ……まぁ、言葉にはしないけど。


 なので、俺がエイトに言えるのはこれだけだ。


「それ、本人の前では言うなよ。気にしている事かもしれないし、何がスイッチかわからないんだからな」

「もちろんです。たとえ姉妹の間でも、しっかりと分別が付けられるのがエイトですので」


 ……そうかな?

 ……本人がそう思っているのなら、きっとそうなんだろう。

 あっ、あと、これだけは言っておかないと。


「出来るだけ仲良くな」

「その点は問題ありません。姉~!」


 エイトが両腕を大きく開いて、ツゥに突撃。

 ツゥが嬉しそうにエイトを優しく抱きとめる。

 どっかで見た光景だな。


 とりあえず、エイト、ワン、ツゥの話が終わったところで、軍事国ネスに向けて出発する事を告げる。

 別に汚れてはいないけど、小屋の掃除もしておく。


⦅状態保存の魔法がかけられていますので、掃除の必要はありませんが?⦆


 気持ちの問題です。

 終わり次第、出発した。


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