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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第七章 お礼
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途中からそういう場所だと思っていました

 小屋で一泊する事にした。

 しっかりとした作りに安心感。

 ちゃんとしたトイレもあるし、ベッドは……問題が再燃するので使わずに、寝袋で対処。

 これでオールクリア……ではなかった。


「良いか! 覗くなよ! 絶対覗くなよ!」


 お風呂が外付け鉄缶なので、丸見えなのだ。

 エイトとワンの協力で入れるようにはしたが、何もせずに入る訳にはいかない。

 幸いというべきか、アイテム袋の中に大きな布と紐を入れていたので、それと木の棒を使う。

 本来は毛布代わりというか、折りたたんだり、包まれば温かいかな? と思っただけだったのだが……それはいつか使う時があればだ。


 二本の木の棒を立て、その間を紐で繋ぎ、その紐に大きな布をかけて遮蔽物とした。

 薄っすら透けて見えるのは仕方ない。


「大きな布に遮蔽されていますので見えていません」


 エイトがそう答える。

 うん。だから大きな布の向こうで、エイトとワンが居る事も薄っすら透けて見えているんだって。

 だから、入浴する前に俺は言う。


「小屋の中に戻れ」

「ですが、エイトはメイドです。ご主人様のお背中を流す役目があります」

「そんな役目はない」

「いえ、そんなはずは……はっ! つまり、お背中を流す役目ではなく、前を」

「それもない!」


 このままでは入れないので、ワンに協力を求める。


「ワン! エイトを連れて小屋に」

「……え? いや、しかし………………だが……本当にそれで喜ぶのか?」


 何やらエイトがワンに囁き、ワンが驚いているようだ。

 ろくな囁きじゃないような気がする。


「あのよ、主」

「……何?」

「その……あたいの胸で洗」

「戻れぇ~!」


 なんて事を提案するんだ。

 しかも、ワンもやろうとしない。


 無事にお風呂に入るまで、大変だった。

 でも、やっぱりお風呂は最高だった。


     ―――


 翌朝。目が覚めると、エイトとワンは揃って眠っていた。

 紙に書き残されていたが、丁度二人の睡眠周期が被ったらしい。

 まぁ、そういう事もあるだろう。

 安全面に関しては、エイト調べで、元々この小屋を中心にした周囲に魔物除けの結界が張られているようなので、大丈夫だと書かれている。


 別に起こしてくれても良いと思ったのだが、自然起床までの残り時間を踏まえると、つい先ほど寝たばかりのようだ。

 そろそろ俺が起きると考えて、起こさなかったのだろう。

 ここが安全だとわかっているからこそ、というのもあるかもしれない。


 でも、本当に安全な場所でよかった。

 さすがに魔物に襲われて、二人を担いで逃げ切るのは難しい。

 いや、セミナスさんなら、どうにか逃げ切る方法を導き出してくれそうだけど。


⦅おはようございます。そして、導き出します⦆


 おはようございます。ほら、やっぱりね。

 まぁ、襲われないのが一番だけど。


⦅問題ありません。汎用型が調べた通り、ここは安全地帯ですので。大魔王軍の将軍レベルならまだしも、そこらの野良魔物程度ではどうする事も出来ません⦆


 なるほど。でも、そこで疑問が一つ。

 一体誰がそんな強力な結界を張ったのか? って事だ。

 その辺りはどうなの?


⦅それはもちろん、神です。ここにあるモノを守るために⦆


 神様が? ここにあるモノを?

 周囲を確認。

 ……この小屋を、って事かな?

 そうなると……わかった! 目の前に巨大湖もあるし、ここは神様たちの避暑地だから?


⦅違います⦆


 わかったとか言った自分を殴りたい。


⦅そもそも、ここは入り口でしかありません⦆


 ……入り口?


⦅はい。ですが、その入り口を開く前に、まずは寝袋で寝ている汎用型と特化一型をベッドの上にでも寝かせて下さい⦆


 起こさないように、優しくベッドの上に。

 多分、起きないだろうけど。

 ちなみに、強制起床の件もこれまでと似たような事が書かれているが、俺がそれを実行する事はない。


⦅では、次いで本棚の前に移動し、私が言う通りの順番で本を手に取って戻していって下さい⦆


 指示通りに本棚の前に。

 改めて確認すると、本棚には不自然な隙間が至るところにある。

 ここに本を移動させていくようだ。


 まずは、この本を……ここに。

 奥まできちんと差し込むと、カチッとスイッチ音。

 ……これ、どういう仕掛けなの?


⦅正しいサイズと重量の本を、特定の場所に順番通りに差し込む事で作動する仕掛けとなっています。次いで、その本は……⦆


 あっ、ここね。

 しかし、凄い仕掛けだ。

 もしかしたら、状態保存の魔法がかけられていたのは、この仕掛けのためだったのかもしれない。

 でないと、本のサイズと重量は維持出来ないだろうし。

 そして、次で最後ですと言うセミナスの指示通りの場所に本を差し込む。


 すると、ガコンッ! と大きな音が鳴ったかと思うと、小屋中央部の床の一部がスライドするように動き、地下に向かう階段が現れた。

 丁度二人が寝袋で寝ていたところだったので、ベッドに移動させていなかったら落ちていたな、これ。


 ……それで、やっぱりここを下りていくの?


⦅はい。その通りです⦆


 地下に向かって下りていく。

 明かりに関しては、なんか光る石がところどころに設置されているので問題ない。

 なんか、黒い神殿内部を思い出す。

 でも、ここを作ったのは神様だと、セミナスさんは言った。


⦅はい。言いました。実際、この強固な状態保存の魔法を施したのも神です⦆


 ぴたりと足がとまる。

 ……なんだろう。不意に嫌な予感というか、面倒になりそうな予感がする。

 戻って閉じて、見なかった事にしても良いですか?


⦅駄目です。今後のために必要な要素の一つですので、見なかった事には出来ません。早く進んで下さい⦆


 ですよね。

 というか、ここまでの仕掛けと神が関わっている事で、俺は気付いてしまったよ。

 この先にある、というか居るのは、まず間違いなく――。


 歩を進めた先にあったのは、扉。

 鍵はかかっていないので、そのまま開けて中を確認。

 そこそこ広いけど何もない部屋の中央。

 人が寝れるような大きさの台座があり、実際にそこで横たわっている人が居る。


 近寄って確認。

 肩口で揃えられた水色の髪に、非常に整った大人っぽい顔立ち。

 起伏は乏しいが、ローブを纏う魔法使いっぽい服装がよく似合っている女性。

 だが、何より重要なのは、眼鏡装備であるという事。


 やっぱ眼鏡って良い……じゃなくて、賢そうな女性に見える。

 セミナスさん。これってやっぱり?


⦅はい。そこで横たわっているのは神造生命体ホムンクルスの一体、特化二型です⦆


 やっぱり、ここはそういう場所だったか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ワンやエイトだけでもツッコミ過労死しそうなのにまだ増えるのか!? いやさ、今度の眼鏡美人は面倒見のいいツッコミアシスタントに違いない!(フラグ)
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