表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第七章 お礼
216/590

見えない部分って……無限の可能性があるよね

 ……ゆっくりと意識が覚醒していく。

 確か昨日は、鍛冶の神様と刀の女神様を解放して……ついでに職人モグラもか。

 とにかく、神様の数が増えるのは、この世界にとってきっと良い事だろう。

 で、疲れていたから、そのままテントで野宿。


 ……うん。間違っていない。

 まずは寝袋からもぞもぞと這い出る。

 ……ベッドが良い事に変わりはないけど、この寝袋もよかった。

 でもこれ、そこそこの値段のモノなんだけど……これより上の寝袋の寝心地って、どんなレベルなんだろう?


 ………………まぁ、考えてもわからないモノはわからない。

 それに、こういうモノ全般って、求めだしたらキリがない。

 一番性能が良いモノを選んだはずなのに、少ししたらもっと性能が上のモノが出る。

 天井知らずというか、道具はどこまでも進化していくからなぁ……。


 ……朝。起きたばかりだからだろうか。

 思考が変だ。

 まずは顔を洗ってシャンとしよう。

 そう思ってテントを出……ちょっと待って。


 なんかテント内に寝袋がもう一つある。

 誰が寝ているのかを確認。

 といっても、エイトかワンのどっちか……エイトか。


 エイトがスヤスヤと眠っている。

 寝袋の上には、紙が一枚。

 手に取って確認。


「エイトの自然起床まで あと『00:53:31』。

 強制起床を選択する方はご主人様の濃厚なキスが必要です。

 また、持ち運ぶ際はお姫様抱っこを推奨します。

 今回は寝袋フォーム。果たして、寝袋の中はどうなっているのでしょうか?」


 あと一時間くらいで起きるようなので、とりあえず自然起床選択は変わらない。

 いや、そもそも強制起床をするつもりは一切ないけど。

 それにしても、最後の一文。

 寝袋の中がどうなっているかって、意味がわからない。


 別にどうもなっていないと思……ちょっと待って。

 なんか意味がわかったかもしれない。

 もしかしてだけど……寝袋の中の恰好を言及しているのか?

 つまり、服を着ていない……下着か、裸か。


 確かに、世の中には下着じゃないと駄目とか、裸じゃないと駄目とか、寝る時の恰好にこだわりを持つ人は居る。

 ……いやでも、王城では普通にそのままで寝ていたから、エイトにそんなこだわりはない。

 それでも聞いてくるという事は、わざと。意図したモノ。


 なんだろう……この弄ばれている感。

 寝袋の中が、メイド服か、下着か、裸か……俺が気付いて悩ませるために、この最後の一文が書かれた気がする。

 だからこそ、ここでの俺の選択は……悩まないの一択。


 紙の元の位置――エイトの寝袋の上にそっと戻す。

 気付かなかった事にしよう。

 起きて直ぐ、顔を洗うためにテントを出た事にしよう。

 そうしよう。


 うんうんと頷き、テントを出る。

 一つのテント内で寝ていた事は……まぁ、仕方ない。

 そもそも、テントは一つしかないのだから。

 アイテム袋の容量的に、一つしか入れられなかったというのもある。


「おっ、起きたようだな。はよ。主」

「あぁ、おはよう。ワン」


 昨日から出ているテーブルセットで、のんびりとしていたワンから朝の挨拶をされたので返す。


「顔洗いたいんだけど、この近くのどっかに川とかある?」

「あぁ、それなら、あっちに少し行ったところにあるぜ」


 なるほど。あっちね。

 エイトが起きていれば、魔法で水を出して貰うのだが、寝ているから仕方ない。

 アイテム袋の中からタオルを取り出す。


「一応、ここら辺の魔物は全部燃やし尽くしたけど、新たに現れないとも限らない。主は攻撃能力ないんだし、気を付けろよ」

「わかっているよ。全力でここまで逃げるから」

「燃やし尽くしてやるよ」


 その時は是非ともお願いしますと思いながら、ワンが指し示した方向に向かう。

 直ぐに川は見つかり、顔を洗って戻る。

 何も起こらなかった事にホッと安堵。

 まぁ、そんなフラグが立っていたら、そもそもセミナスさんが注意するだろうから、何も起きないだろうとわかっていたけど。


 ご飯はエイトが起きてからにして、それまでワンと雑談をしながら時間を潰す。

 ほどなくして、エイトがテントから出て来た。

 思わず服装を確認。

 ……うん。いつものメイド服で一安心。


「おはようございます、ご主人様。さて、ここで一つお聞きしたいのですが、今私がメイド服を着ているかどうか、視線で確認しませんでしたか?」

「していません」


 否定は堂々と。

 微塵も疑われてはいけない。


「本当に?」

「………………」

「おかしいですね? ご主人様であれば、私の寝袋の中が気になって、裸なのか、下着なのか、紐水着なのか、悩みに悩み抜いて悶々とした朝を迎えたと思ったのですが?」

「迎えていません」


 全く……悶々となんて……いや、ちょっと待って。

 紐水着って何?


「ちなみにですが、正解は」

「言わなくて良いです」

「なるほど。もう少し妄想を楽しみたい。もしくは自ら確認したいという事ですね。わかりました。これはご主人様からの挑戦ですね。ご主人様のご期待に応えるよう、過激な服装をご用意しておきますので、いつでもご確認下さい」

「そんな挑戦はしていないから、用意しなくて大丈夫です」


 ……いや、それでもエイトは用意していそうだ。

 もう一言加えておこう。


「あと、風邪を引かないように」


 なんとなくだけど、エイトは肌色面積が多そうな服を選びそうなので。


「安心して下さい。神造生命体ホムンクルスは風邪を引きません」


 その前に、そういう恰好をしないって選択をして欲しいんだけどな……。

 とりあえず、エイトも起きたのでご飯だ。

 エイトとワンが用意するそうなので、俺は今の内に今後の予定をセミナスさんに尋ねる。


 という訳で、これから軍事国ネスに向かって、アドルさんたちとの合流を目指す、で良いんだよね?


⦅今のところの目的はそうですが、まだ寄り道は続きます⦆


 え? 続くの?

 でも、これはそもそもお礼のための行動で、そのお礼はもう終わったんでしょ?


⦅このお礼はついでと言いますか、元々予定として組み込んでいましたので、丁度良いと利用したに過ぎません。神解放は必要な事ですので⦆


 確かに。


⦅お礼ではありませんが、寄り道はまだ続きます。まだ向かうべきところがありますので⦆


 そうなんだ。

 ちなみに、どういうところ? 何をしに?


⦅お楽しみに⦆


 うん。そう言うと思った。

 なら、楽しみに待っていよう。


 ………………。

 ………………。

 確認だけど、本当に楽しみにしていて良いんだよね?


⦅………………⦆


 そこで黙られると不安になるんだけど。

 まぁ、行ってみればわかる事か。


 エイトとワンが用意してくれたご飯を食べ、テントやテーブルセットなどを仕舞ってから出発した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ