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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第七章 お礼
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大切なのはタイミング

 骸骨鎧武者に向けて、今度は慎重に進んでいく。

 それと、突然の素早い斬撃にいつでも対処出来るように心構えもしっかりと。

 見る事出来るし反応も出来るけど、少しでも気を抜けば骸骨鎧武者に斬られるのは間違いない。


 隣の部屋に戻った事で骸骨鎧武者は一旦刀を納刀していたが、近付けば再び抜いて俺にその切っ先を向けてくる。

 ……先端恐怖症になりそうなくらい怖い。

 それでも俺は近付いていき……骸骨鎧武者の放つ斬撃を回避する。


 今度は服も斬られていない。

 きちんと避ける事が出来た。

 でも、一回回避した程度で喜んではいけない。

 恐れず前に。


 まずは骸骨鎧武者の放つ斬撃の速度に体を馴染ませていく。

 速いが連続は不得意なのか、攻撃の合間に少しだけ余裕がある。

 といっても、それで近付けるような合間ではないけど。


⦅今のマスターの身体能力だからこそ、そのような合間を感じ取る事が出来るのです。漸く運動不足が解消されてきましたね、マスター。さぁ、ここで一気に全てを解消しましょう⦆


 そのためにここに来た訳じゃないよね?

 いくらセミナスさんでも、外からこの黒い神殿内部の――たとえば構造や居る魔物の事はわからないはず。

 ……これ幸いと喜んでいるのだろうか?


⦅そのような思考をしている余裕があるのですか?⦆


 そうでした。

 骸骨鎧武者の斬撃を回避する事に集中。

 一撃一撃を回避し続けながら思う。


 それにしても、俺はここまできてもギリギリというか、一撃でも食らったらほぼアウトみたいな状態だな。

 回避特化だからこそ、だろうけど。

 それしか選択肢がなかったとも言える。


 そうして体が骸骨鎧武者の斬撃速度に慣れ始めた頃、俺は次の事を考えた。

 ……どう勝てば良いの? と。

 慣れ始めたといっても、こちらから攻撃出来るような隙は見えない。

 少なくとも俺には。


 でも俺にはセミナスさんが居る。

 きっと既に骸骨鎧武者の攻略を見出しているはずだ。


⦅………………⦆


 おっと、ここでまさかの沈黙。

 予想外の事に俺の体も動きが少しだけ乱れ、服の一部がスパッと斬られた。

 あれ? セミナスさん?


⦅……ファイト!⦆


 うん。応援ありがとう。

 でも、今はそうじゃない。

 俺一人ではどうしようも出来ないので、攻略法が欲しいんですけど?

 もちろん、セミナスさんもそれはわかっているはず。


⦅申し訳ございません。リビングアーマーの時とは違い、攻撃速度が違い過ぎるため、今の私の力はマスターの安全に……つまり、斬られないようにする事に全て向けられています⦆


 うん。それは大事。本当に大事。

 大事な事だから、大事を二回言った。

 あれ? なんか大事大事で逆に大事じゃないような……いや、気のせいか。

 乱発はよくない。


 それに、何事だろうが次に何が起こるかわからないのだ。本当に。

 死なないと思ったヤツが突然死ぬ、みたいな展開もある訳だし。

 ……待って! 今の考えはフラグじゃないから!

 声に出していないんだから、セーフだよね!


⦅私の力が万全の状態であり、マスターが望むのであれば、そのようなフラグはへし折ってあげましょう⦆


 セミナスさんがそう言ってくれるなら安堵だ。


⦅ただ、著しく制限されている今は無理です⦆


 急に不安になるような事は言わないで。


⦅今は緩んでいる場合ではありませんので⦆


 確かにその通り。

 安堵している場合じゃない。

 そもそも、俺の回避にだって限界はある。


 その一つが体力。

 特に今は神経をすり減らしながらなので、いつもよりも消耗が激しい。

 十中八九、先にダウンするのは俺だ。

 相手は骸骨だから、スタミナが存在するかも怪しいし。


 体力切れで体の動きを少しでも鈍らそうものなら、その隙を狙われてザンッと一閃されて終わりになる。

 そうなる前にどうにかしないと。

 ……でも、勝ち筋が見えない。


 つくづく攻撃力のない自分が恨めしい。

 ……目を閉じての攻撃は?


⦅今は無理です。あれは一連の動きを把握しておかないと危険ですので。同時に相手の心を乱すためにも行う事で、それで動きを読みやすくしているのです。ですが、それが通じる相手とは思いません⦆


 そこまで考えての行動だったのか。

 普通に、俺の攻撃開始装置を入れるための行動かと思っていた。

 でも確かに、目の前の骸骨鎧武者に感情があるかどうか怪しい。


 普通はここまで攻撃が避けられると、逆に冷静になったり、憤慨したりする場合が多い。

 けれど、骸骨鎧武者にはそれが見られない。

 まるで機械のように正確で、一切乱れがない。

 このままでは本当に不味い。


 それじゃあ、目を閉じないとなると、次は?


⦅……申し訳ございません。まだ見つける事が出来ませんので、いざという時は撤退をお願いします⦆


 了解! 命を大切にしていこう。

 幸いにして、アイテム袋の中に食糧はあるのだ。

 今日駄目でも明日がある。


 ……せめて、ここに俺以外……入れるのは限られているから、それこそ親友たちの誰かが居てくれればと思って………………ん? あれ?

 何か引っかかる事がある。

 この状況を打開するような何か……。


⦅何に引っかかったのか、早く……ナ~ウ!⦆


 そう急かさないで……あっ、わかった。

 推測? 可能性? の話だよ! セミナスさん。


⦅………………⦆


 ピンと来ていないのがわかる。

 えっと、前にセミナスさんが言ってくれたでしょ?

 それこそ、リビングアーマーの時に。


⦅なるほど。理解しました。封印されている神を解放して、肉の盾として利用する訳ですね⦆


 うん。そっちじゃない。

 これまでの事を踏まえると、光る玉に封印されているのは戦闘系の神様だ。

 なら、骸骨鎧武者の首から提げられている光る玉も、その可能性が高い。

 だからここは先に神様を解放して、協力して貰えば良いという訳である。


⦅良い案かと⦆


 ありがとう。

 でも、問題がない訳じゃない。

 光る玉を奪い取る隙がないのだ。

 ……どうしよう。


⦅ふむ。そういう事でしたら……今の段階でダメージを与えられるかはわかりませんが、一つ案があります⦆


 聞きましょう。

 ………………。

 ………………。

 えっと、もしタイミングを間違えば?


⦅死にます⦆


 ですよね。

 でも、俺もセミナスさんの提案に賛成です。

 いつもの事だけど、俺の命……預けたよ。セミナスさん。


⦅体も預けて頂いて構いませんよ?⦆


 どういう意味かな?

 深くは追及せず、骸骨鎧武者から一旦離れて呼吸を整える。

 最後に大きく息を吐き、前へ。


 行動は先ほどと同じで回避一択。

 でも、今回はタイミングを見計らってなので、より消耗度が高い。

 速めにお願いします。


⦅今の私はそう何手先も読めませんので、それまで耐え、今です! 目を閉じて!⦆


 骸骨鎧武者の斬撃を回避し、目を閉じる。


⦅頭上でパンッ!⦆


 パンッ! と両手を重ねる。

 両手の間に、何かを挟んだ感触。

 そっと目を開ければ、挟んだのは骸骨鎧武者の刀。

 真剣白刃取りの完成。


 さすがのタイミングです。セミナスさん。


⦅お褒めに与り光栄です。マスター⦆


 そして俺は最後の仕上げを行う。

 余計な事をしやがって、という思いを思い出して……。

 刀を挟んだまま倒れるように体勢を崩し、足を使って横から刀を蹴り折った。


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