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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第七章 お礼
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大体やらかした事はある

 隣の部屋は、それなりに広いだけの普通の部屋。

 変な装飾もなく、質素。

 今開けている扉の反対側に、同じく扉があるだけ。

 ただ、部屋の中央付近に、異質な存在が居た。


 すっごく簡単に言えば、インジャオさんの日本版……いや、表現がちょっと違うか。

 インジャオさんの鎧武者版って感じ。

 全身が骨――スケルトンが和風鎧を身に纏っているのだ。

 ご丁寧に、腰は刀と脇差があった。


 ……どうしよう。普通にカッコイイ。

 首から光る玉を提げているのが気になるけど。

 ……光る玉が邪魔な装飾だな。

 ない方がカッコイイのは間違いない。


⦅アレに神が封印されているのですが?⦆


 ………………あ、あぁ。う、うん。

 そういや、他の神様が居る、みたいな事を言っていたっけ。

 大丈夫。覚えているよ。うん。


⦅………………⦆


 ここで黙るのはやめようか。

 でも、これまでの話から推測すると……。


「あれをどうにかしないと、ここから出られない感じですか?」


 鍛冶の神様に確認。


「あぁ。前に試した事があるが、部屋に入った者を見境なく襲いかかってくる」

「……それなら、そっちの扉から出て、地下からどうにか」

「それも無理じゃ」


 そう言って、鍛冶の神様があと付け扉に向かって開けようとするが、鍵がかかったかのように開かない。

 職人モグラが開けるが、そこに透明の壁があるかのように、鍛冶の神様は通る事が出来ずにいる。


「どうやら、内部をどれだけ弄ろうが、本質的な部分は変わっておらん。正しい手順以外では出られんようになっている」


 どうやらそうっぽい。

 それはつまり、あの骸骨鎧武者をどうにかしないといけないという事だ。

 別の神様の解放にも繋がるし。


「それと、なんとか隙を突いて試してはみたが、ワシやこいつでは向こうの扉を開けられん」


 そっちも試したのか。

 でもそれだったら、職人モグラだけでも別ルートで出れば……いや、駄目か。

 普通、魔物は討伐対象だし、出ても入れないんじゃ意味がない。

 結局、骸骨鎧武者をどうにかしなければ、という最初に戻る訳か。


 ……どうにか出来るの?


⦅今の私ではどのような戦いになるのか知る事が出来ませんので、実際にやり合ってみないとわからないとしか言えません⦆


 だよね。


⦅ですが、そう悲観するような事でもありません。ここに侵入する前の『未来予測』では、ほとんどの場合で成功しています。ですので、ここに来たのです⦆


 なるほど。

 でもそれって、失敗の可能性もあるって事だよね?


⦅100%の結果など稀です。だからといって失敗の可能性に捉われてはいけません。マスターの奮闘次第で、未来はいくらでも変化するのですから⦆


 ……まぁ、そうだね。

 それに、結局ここから出るためには。


⦅鎧武者とやり合って、倒すしかありません⦆


 よし、とやる気を漲らせて、体に活力を加える。

 軽く準備運動をしつつ、鍛冶の神様に尋ねた。


「鍛冶の神様。戦闘は……」

「満足な装備もない状態で、ワシがやれると思うか?」

「ですよね」


 そうだと思った。


「それじゃ、そっちの職人モグラは」

「職人モグラ? 弟子の事か? ははっ! そいつは面白い名だ。お前もこれからそう名乗れ」


 鍛冶の神様の言葉に合わせて、職人モグラがこくこくと頷く。

 喜んでいるっぽいけど……。


「あぁ、すまんすまん。だが、戦闘は無理だ」

「でしょうね。どう考えても戦闘が出来るようには見えない」


 俺が一人でやるしかないようだ。

 準備運動を終え、大きく息を吐き……鎧武者が居る部屋に入る。

 扉は閉められなかった。

 鍛冶の神様と職人モグラが、こちらを見ているから。


「ここの扉は開けておくぞ。どうやら、そいつは部屋から出ないようだ。いざという時はこっちに逃げてこい」


 あっ、見たいだけで扉を開けている訳じゃないのね。

 でも、いざという時の逃げ道があるのは助かる。

 扉を開けていてくれる鍛冶の神様と職人モグラに対して頷きを返し、鎧武者に近付いていく。

 すると、鎧武者が反応して刀を抜き、俺と対峙するように構える。


 ……普通に怖い。


⦅恐れずに前へ踏み込んで下さい。逃げ腰は逆に危険です⦆


 えっと、盾とかは?


⦅………………頑張って読み取りましたが、斬り裂かれるだけのようですので邪魔なだけです。大丈夫。マスターの今の身体能力であれば回避可能です⦆


 セミナスさんの言葉を信じて一歩前に踏み込む。

 ヒュン――と鎧武者が刀を横薙ぎに振るう。

 俺の胸辺りの服がスパッと斬れた。


 急いで隣の部屋に戻る。


「ちょっ! いきなりスパッと斬ってきましたけど!」


 見えなくはなかったんだけど、いきなりの事で反応が遅れて動けなかった。

 鍛冶の神様が一つ頷く。


「うむ。警告だろうな」

「……警告?」

「次に近付けば首をはねると」


 更に怖くなるような事を言わないで欲しいんですけど。


「え? あれ、意思あるんですか?」

「ない。扉と自身に近付く者を攻撃するようだ」


 知っていたんなら、最初に教えておいて下さいよ。


「それにしても綺麗に斬れたな」

「そうですね」


 折角の服が。

 あとで縫わないといけないけど……俺は無理だ。

 エイトかワンなら出来るかな?


「さすがはワシが研いだ刀だ」


 ………………。

 ………………。

 うん。ちょっと待って。

 今、なんか変な事言ったよ、この鍛冶の神様。


「今、なんて言いました?」

「ん? ワシが研いだ刀」

「……えっと、どういう事ですか?」

「いや、あの鎧武者の刀だが、当初はボロボロというかギザギザでまともな刀ではなくてな。さすがにそれは鍛冶を司る神として、そのような武器は許せないと研いだ」


 ふんっ! と胸を張る鍛冶の神様。

 なるほどね~。鍛冶の神様として許せなかった訳か……いや、そんな自慢するような内容じゃないよね?

 寧ろ、何やってくれてんの? て感じの内容だから。


「というか、そのまま取り上げたままでいればよかったのに」

「はっ! 武器が悪いんじゃねぇ。使うヤツが悪いだけだ」


 良い事言った、みたいな雰囲気を醸し出そうとしているけど、俺は騙されない。

 この世界の神様の中に、何もやらかさない神様は居ないのだろうか?


「でも、よく刀を取る事が出来ましたね」


 是非とも、今そうして欲しいと願いを込めて聞く。


「あぁ、それは弟子が取ってきた」


 そうです、と職人モグラが頷く。

 なら今も、と思ったが、そう上手くはいかないらしい。


「でも今は無理だ。当初は魔物仲間と認定されていたようだが、扉で出ようとしたあとからは敵認定されている」


 これもその通り、と職人モグラが頷く。

 いやもう、ほんと色々やらかしてくれたな、という感想。

 最初にそれが出来ていたら、どれだけ助かったか……いや、違うか。


 考えてみれば、そもそも今は裏口から入ったようなモノ。

 ちゃんと入っていれば、まず出会っていたのは骸骨鎧武者の方だ。

 そうだったなら、当然裏事情は知らなかった訳だし、文句を言っても仕方ない……と思っておく事にした。


 どっちにしても、骸骨鎧武者を倒さなければいけない事に変わりはない。

 もう一度大きく息を吐き、骸骨鎧武者に挑む。


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