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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第二章 竜とエルフ
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仲良くなりました

 アドルさんとインジャオさんは交代しながら、DDと丸三日ダンスバトルを行った。

 うん。丸三日。

 長過ぎる……とは思ったけど、そもそも俺がとめられる訳もない。

 それでも遠回りするよりは早いのが確実らしい。セミナスさん談。


⦅……私をお疑いですか?⦆


 滅相もありません。

 疑う訳ないじゃないですか!

 ……ちなみにだけど、もし疑っていたら?


⦅マスターは何か勘違いをしているようですね。所詮、私はマスターのスキルでしかありません。たかがスキルで、何か出来ると本当にお思いですか?⦆


 いや、そう言われると……ねぇ。


⦅まぁ、私は非常に優れた……いえ、最優秀と言っても良いスキルですので何でも出来ますが⦆


 自意識高いな。

 というか、認めたね。何か出来るって。


⦅はい。可能です。たとえば、マスターが毎日必ず排泄物を踏むようにしたり、マスターが忘れている恥ずかしい過去を眠る前に囁く、という事も⦆


 陰湿! しかも、普通にどっちも嫌だ!

 セミナスさんを怒らせないように気を付けよう。


 というか、なんの話だっけ。

 ……あぁ、そうそう、ダンスバトルが三日続いた話……やっぱり長いな。

 でも、竜たちから聞いた話によると、これでもDDからすれば短い方らしい。

 竜の体力、凄過ぎる。


 俺なら数時間もてば良い方だ。

 いや、そんなにもつかな?

 ……でも、数時間って、一時間も数時間の枠に入るよね?

 それなら……。


「アキミチは駄目だなぁ」

「まぁ、竜と人じゃ元々の力が違うんだし、仕方ないんじゃね?」

「もっと鍛えた方が良いぞ。肉喰え、肉を」


 竜たちが煩い。


「ほっとけ! ちゃんと三食食べてるわ! というか、これでもこの世界に来て、体力は前より付いているから!」

「「「ぷっ、もやしっ子」」」


 この竜共がぁ~!

 ぷるぷると拳を握るが、事実であるし、竜相手では逆立ちしたって勝てない。

 勝てるわけない。

 というか、こうして竜たちと話せるようになっただけでも、充分凄い事だと思うんだけど。


 こうして竜たちと、ある程度気兼ねなく話せるようになった理由は、単純だ。

 一緒に頑張ったからである。

 何を?

 もちろん、色々な事を。


 始まりは、休憩時間の事。

 アドルさんたちが丸三日ダンスバトルをしていたとはいえ、丸々全てという訳ではない。

 適度に休憩時間と睡眠時間を取っていた。

 DD的には丸々でも問題ないそうだけど、最高のパフォーマンスで踊りたい! と、向こうから休憩と睡眠を提案してきたのだ。

 ……あれ? もしかして、意外と話がわかる竜かもしれない。


 という訳で、俺とウルルさんはダンスバトルに参加しない代わりに、アドルさんとインジャオさんの補佐を行う事にした。

 食事の準備をしたり、マッサージをしたり、快適な寝床を作ったりと。


「パンパンになってますね」

「う、うむ……あ、あぁ……そこそこ……そこが良い……」


 何故かアドルさんが途端に老けて見えた事は、俺だけの中に仕舞っておく。

 言うと怒られそうだし。

 ……でも。

 チラッと、もう一方の方を見る。

 そこでは、鎧を脱いだインジャオさんを、ウルルさんがマッサージしている……んだけど……。


「アドルさん」

「……んん……どうした?」

「インジャオさんって全身骨だから筋肉ないですけど、マッサージって必要なんですか?」

「まだまだだな、アキミチは。もっとよく見てみろ」


 言われた通り、よく見てみる。

 すると、ウルルさんが傍に置いている壺から黒い砂を掴み、それをインジャオさんの骨に染み込ませるように揉んでいるのがわかった。


「……見ても意味がわからないんですけど」

「あれはアキミチのおかげだぞ」

「………………ますます意味がわからないんですけど」

「アキミチが気付いただろ? インジャオの骨が鉱物化している事に」

「そうだけど……それが?」

「最近やり始めたそうだが、黒く見える砂は普段噛んでいる棒を細かく削ったモノで、ああいう風に刷り込んでいると骨密度が増す……ような気がするそうだ」


 ……増してどうするんだろう?

 更に強くなるんだろうか?

 でもまぁ、ダンスは激しい動きもあるし、インジャオさんにとってはきっと大切な事なんだ、と思う事にした。

 そうしてマッサージを終えれば、再びダンスバトルへと送り出す。

 俺とウルルさんは、その間に食事の準備などをするのだが、それが終わればもう暇だった。


 そんな休憩時間。

 俺はぼぅ~っとダンスバトルを眺めていたのが、ウルルさんの姿がどこかに消える。

 一体どこに? と思って周囲に視線を向けると、たくさんの石を両腕で抱えたウルルさんが、ほくほく顔でこちらに来るのが見えた。


「……ウルルさん。その石は?」

「これ? さすがは竜の領域近くだよね。手つかずの鉱石がたくさんあったから、貰っておいたの。これだけあれば、当分は困らないわ」

「………………」


 えっと、それは勝手に取ってきて良いんだろうか?


「……大丈夫なんですか? それ」

「大丈夫大丈夫。ギリ、竜の領域には入っていない……と思うから。グレーゾーンってやつね」


 問題ないと笑みを浮かべるウルルさん。

 何とも逞しい行動である。

 いや、これもインジャオさんへの愛が成せる業かな。

 深く追求すると危険かもしれないので、俺も知らぬ存ぜぬで通そう。

 一応、竜の領域ではないという事で、どうかお一つ。


 ただ、やはりダンスバトル中となると、準備が終われば俺とウルルさんは特にやる事がない。


⦅そういう事でしたら、私が解説をしても良いのですが、やっておいて損はない事がございます⦆


 セミナスさんがそう提案してきたので、ダンスバトル中はそれをする事にした。

 といっても、何か特別な事をする訳ではなく、ウルルさんと共に作る食事の量を増やす事である。

 要は、竜達へのおすそ分けだった。


 考えてみれば、ダンスバトルをしている方も大変だが、音楽を奏でる竜たちの方も大変である。

 食事の準備が出来るかも怪しいだろうという事で、俺とウルルさんで用意する事にした。

 口に合えば良いんだけど。

 ………………。

 ………………。

 問題ありませんでした。


「矮小なくせに、俺達の飯を作っただと?」

「「「「うまうま」」」」

「あっちはめっちゃ美味そうに食ってますけど?」

「馬鹿野郎! 俺の分も残しとけよ! というか、DDの兄貴の分は絶対に残しておけよ!」


 なんだかんだと、これがきっかけで竜たちと仲良くなった。

 ダンスバトルが終わる頃には、軽口を言い合えるくらいに。

 特にダンスバトルを乗り切ったアドルさんとインジャオさんは、DDに認められ、手を打ち付け合う挨拶を交わしているぐらいだ。


 認め合ったという事である。


 もちろん、竜の領域内を通してくれる事になったのだが、その前に互いの健闘を称えた宴会が行われた。

 さすがにこちらの手持ちでは材料が足りないため、竜たちによって色々とたくさん持ち込まれる。

 余った分は、俺たちが持ち帰って良いそうだ。


 俺とウルルさんの戦いは、これからが本番だった。

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