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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第七章 お礼
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万全の攻略法なんてない

 目の前にある高い壁は、天井にはついていない。

 なので、少し距離を取れば奥の方が見えるので、上に向かう階段らしきモノが見える。

 ただ問題なのは、ちょっとした距離があるのと、この高い壁の横幅もそれなりにあるため、今居るここが広大な空間となっている事だ。


 つまり、階段までそれなりの距離があるという事である。

 あと問題なのは、高い壁の向こうに何があるかだが……入口らしき切れ目があるので、そこから自分の目で確認するしかない。

 なので、周囲の様子を窺いつつ、注意深く進んで確認。


 ………………細い通路が枝分かれしていて。

 ………………至るところで曲がりくねっていると。

 うん。これ、迷路だ。

 それも巨大な。


 ……まぁ、普段なら迷っていたかもしれない。

 詩夕、常水と行った遊園地の中にあった迷路でも迷って……いや、迷っていないけど、脱出するのに時間は多少かかった。


⦅相変わらず認めませんね⦆


 何を認めれば良いのか、さっぱりわからない。

 ……そうじゃなくて。

 でも、今は違う。

 今の俺にはセミナスさんが居るのだ。


 巨大迷路だろうが迷う訳がない。


⦅申し訳ございません。ここも特殊な結界の影響下にあるようで、私の力が著しく制限されています。曲がり角の先に何があるかくらいならわかりますが、この迷路の全貌の把握は出来ません⦆


 おっと。どうやら、これは巨大迷路攻略に時間がかかりそうだ。

 ……なんて事はない。

 何故なら、俺は詩夕から迷路攻略法を聞いている。


 それは、左手を壁に付けたまま進んでいく事。


⦅なるほど。確かに時間はかかるでしょうが、壁に沿ったまま進んでいけば出口に着くのは確実。私も確実な手段の方を推奨します⦆


 ……普通に進むと俺が絶対迷うと思っているから、確実な方を選んだ訳じゃないよね?


⦅大切なのは、出口に辿り着き、神を解放する事です。マスター⦆


 ……確かに。それが大事だ。

 変に疑う事をやめ、左手を壁に当てながら、迷路の中を進んでいく。


 なんか、変に土が盛られている場所があったり、建築資材っぽいのが置かれているな。

 ………………。

 ………………。

 入口に戻って来た。


「……あれ?」


 思わず声が出てしまう。

 いやいや、待って待って。どういう事?

 この方法でいけば、出口に辿り着くんじゃないの?


⦅私が考えたところ、それは完全な攻略法ではありません。その攻略法にはいくつか欠点があります。一つ、迷路内部で階層が存在している場合。一つ、隠し扉や仕掛けが作動しないと進めない場合、一つ、目的地が触れている壁とくっついていない……たとえば中央部分などにある場合などです⦆


 ……そういえば、詩夕もこれは完全な攻略法じゃない、みたいな事を言っていたっけ。

 あと、そういうのに頼らず、楽しむのが一番だとも。

 ……楽しんでいる場合じゃない!

 これ、割と命の危機ではないだろうか?


 幸いにして、アイテム袋は持ってきている。

 でも、中身は有限だ。

 ここから早く出るに越した事はない。


 左手の攻略法が使えない以上、次は勘に頼るしかない。


⦅……致し方ありません、か⦆


 なんでそんな苦渋の選択を強いられたような感じの言い方?

 もっと俺を信じて欲しい。


 再度、迷路にチャレンジ。

 ………………。

 ………………。

 三方を壁に囲まれ、もう一方は今来た道。


 うーん……迷った。


⦅マスターの進んだ経路は覚えていますので、まずは入口に戻りましょう。指示する方に進んで下さい⦆


 はい。

 セミナスさんの指示で、入口に戻る。

 ……ん? あれ?

 普通に戻れたけど、セミナスさんは曲がり角の先しかわからないんじゃ?


⦅マスターが二度も赴きましたので、その間に私がマスターの歩幅や歩数、進行方向などから迷路内をマッピングしておきました⦆


 えっと、紙とペンで?


⦅そんなモノがある訳ないじゃないですか。もちろん、私の思考の中で、です⦆


 普通に凄いと思う。

 少なくとも、俺には出来ない。


⦅ですが、マッピングした事で問題が一つ浮上しました⦆


 どんな問題でしょう?


⦅先ほど攻略法の欠点を挙げましたが、その中の一つ、隠し扉でもない限り、この迷路は攻略出来ません。どこをどう進もうが完全なる袋小路であり、階段の場所まで辿り着く事は出来ません⦆


 え? 何それ?

 それじゃ、どうしようもなくない?


⦅ただ、可能性の中で最も高いのは、この迷路が未完成なのではないかという事です⦆


 未完成?

 つまり、まだ造られている最中って事?


⦅ところどころで、それらしい跡が残っていました⦆


 あぁ、あの建築資材とかか。

 でも、一体誰が? と思ったところで壁の一部がバガンッ! と開き、そこから俺と同じくらい大きなモグラが出て来た。


 首っぽい部分にタオルをかけ、腰と思われる部分にウエストバッグみたいなモノを提げ、そのウエストバッグには大工道具みたいなモノが満載。

 THE・職人、みたいな雰囲気も醸し出している。


 そんな職人モグラと目が合った……気がする。

 いや、どこが目よ。

 でも、互いに固まったように動かない。


⦅逃げるようなので追って下さい⦆


 セミナスさんの言う通り、職人モグラが開いた壁の一部に戻るので、俺も急いであとを追う。

 開いた壁の一部の先は、一本道の通路だった。


⦅位置的に、迷路の脇を通るようです⦆


 関係者通路みたいなモノかな。

 職人モグラを追って進んでいくと、待望の上に続く階段があった。

 駆け上がっていく音が聞こえるので、俺もあとを追う。

 この上ってどうなってんのかな?


⦅今の私は瞬間的な未来しか見えないため、わかりません⦆


 行ってみない事にはわからないって事ね。

 それにしても、迷路といい、この階段といい、あの職人モグラが造ったんだろうか?

 もしそうなら、大した腕前だと思う。


 いや、感心している場合じゃない。

 もしあの職人モグラが魔物だった場合、敵だ。

 ……神様じゃないよね?


⦅私の記憶の中に、あのような姿の神は存在しません⦆


 違うようだ。

 なら、これまでの事を考えると、職人モグラが魔物なのは間違いない。

 でもそうなら、どうして襲って来なかったんだろうか?


 戦闘型じゃない?

 ……でも、俺より普通に強そうだったけど?


⦅単純な戦闘力なら……はい。あのモグラの方が強いでしょう⦆


 この正直者っ!

 そうこうしている内に階段を登りきり、辿り着いたのは小部屋だった。

 下でも見た建築資材なんかが置かれている。

 それと、閉じられている扉。


 なんとなくだけど、扉の向こうから気配がする。

 スキルで身体能力が向上して、こういう感覚も鋭くなっているのかもしれない。

 一息吐き、扉をゆっくりと開いて、内部を確認。


 小部屋と同じく、建築資材っぽいのが散乱している室内。

 その中央付近。

 腕を組んだ髭もじゃの小さなおっさんが、職人モグラを庇うように立っていて、こちらをジッと見ていた。

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