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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第六章 獣人の国
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流れるように進んでいく パート2

 翌日。スッキリと目覚める。

 昨日は早く寝たからかもしれない。

 久し振りに気持ちの良い朝だ……と思ったのだが。


「……やっぱり居るのね」


 ベッド脇に、エイトが当然のように立っていた。

 また鍵を開けてきたのか。

 ここが王城という事を考えれば、大した鍵開け技術だな、と思えなくもない。


「おはようございます。ご主人様」

「寝室に居る事の理由になってない!」

「まずは朝の挨拶からというのは、大切な事だと思いますが?」

「確かにそうだけど……おはようございます」

「一日の始まりは朝の挨拶から。では、朝食の用意をしてきますので、その間に着替えておいて下さい。それとも、エイトに手伝わせますか?」

「一人で出来ます!」


 これまで手伝わせてなかったでしょ!

 今は寝間着なので、着替えるためにエイトを寝室の外に出す。


⦅汎用型が寝室内に居た理由を聞いていませんが?⦆


 しまった! 謀られた!

 でもこれは仕方ないと思う。

 なんかこのやり口は、エイトらしくないのだ。

 エイトなら、寧ろ自分から理由を付けて居座ろうとするタイプのはず。


 となると、こういうやり口を教えたのは……やっぱり宰相さんかな?

 俺が試合をしている時や、昨日寝てからなど、伝授する機会はあったはず。

 くそぉ……なんか意趣返しがしたい気分。

 着替えながら考えてみる。


 ……こう、試合中、防いだ攻撃によって弾かれた盾が飛んで行って偶然当たるとか、攻撃として投げた盾が色んなところに当たっていって最後にクリーンヒットするとか、そういう事が起こらないだろうか。

 ……俺の手段だったとわからないように。


⦅考えてみましょう⦆


 出来るかもしれないっぽい。

 実際にやるかどうかは、その時の気持ちによるけど。

 こういうのは、考えるだけでも楽しいモンだ。


 そのあとは朝食を頂き、昨日と同じく揃って闘技場に向か……おうとしたんだけどな。


「昨日と同じく、お姫様抱っこでお願いします。考えてみれば、エイトは眠っていた訳ですから、その光景と感触を楽しめていません。是非、再現をお願いします」

「お断りします」


 そうそう。エイトはこうじゃないとね。

 普通に馬車に乗って闘技場に移動。

 席に座り、自分の出番が来るまで試合を眺める。


 二回戦第一試合。

 兎の男性獣人さんとウルルさんの戦い。

 昨日と同じく足甲を装備している兎の男性獣人さんの表情は、真剣そのものだった。

 対するウルルさんはいつも通りというかリラックスしている。


「ウルルさんの相手は、なんか張り詰めている雰囲気がありますね」

「ウルルの強さを感じ取っているからだ。それだけでも一流と言えるな」


 アドルさんがそう説明してくれたけど……あれ? その理屈だと、感じ取っていない俺は一流じゃないって事にならない?

 いや、別に自分を一流だなんて思っていないけどさ。


⦅私が正確に理解していますので、気にする必要はありません⦆


 そういう事にしておこう。

 試合は開始の合図と共に、バッチバチにやり合い始めた。

 ウルルさんは拳、兎の男性獣人さんは足だが、そんなのは関係ないとばかりに殴り、蹴りが飛び交っている。


 ウルルさんは手数が、兎の男性獣人さんは威力に優れていると思っていたのだが、そうじゃない事に気付く。

 兎の男性獣人さんの足甲が、ウルルさんの拳によってべっこべこに凹み出したかと思っていたら、一気に砕け散った。


「……えっと、今後はウルルさんに殴られないようにしたいです」

「私もだ」


 ウルルさんの拳が当たった時の事を妄想して、アドルさんと一緒にブルッと震える。

 そのあとは、足甲がなくなり足にウルルさんの拳をまともに食らい出した事で、痛みに耐えられなくなった兎の男性獣人さんが負けを宣言。

 ウルルさんの勝利。


「勝ち続けると……あの拳とやり合う事になるのか」

「頑張れ!」


 アドルさんの応援に、なんとも言えない表情を浮かべる。


 次いで二回戦第二試合。

 ワンと猪の男性獣人さんの戦い。

 開始前、猪の男性獣人さんの方はやる気満々だとでもいうように、掌に拳を打ち付けている。

 一方、ワンは……やる気がない、というか気だるげというか、既に疲れ切っているように見えた。


「………………」


 観客席に目を向ければ、どこかで見た羊の女性獣人さん、兎の女性獣人さん、鳥の女性獣人さんの姿が見える。

 妙に艶々とした表情を浮かべて。

 ……えっと、つまりアレって。


「ロードレイル様が見習うべきは、アキミチ殿ではなくワン殿の方かもしれませんね」

「どういう意味だ?」


 ロイルさんが不思議そうな表情を浮かべている。

 あれ? もしかして、本当にわかっていないのかな?

 宰相さんが、駄目かもしれない、と一息吐く。

 もっと苦労をすれば良いのに、と思ってしまうのは、エイト関連の結果だと思う。


 試合開始と共に猪の男性獣人さんがワンに襲いかかる。

 ワンは回避しているのだが、明らかに動きが鈍い。

 とりあえず、体調管理に失敗した、という事にしておこう。


 ワンが魔法を使おうとするが、普段よりも発動が遅いというのと、思っていたよりも猪の男性獣人さんの動きが機敏であるため、発動出来ずにいる。

 そうなってくると、もう勝敗は決まったも同然だ。

 最後は猪の男性獣人さんの突進をもろに受けて、ワンは負けた。


 これはあとで説教をしておいた方が良いかもしれない。

 何回戦やった……いや、調整ミスの結果だから、ワンも甘んじて受けるだろう。

 ただ、一つだけ気になった。

 観客席の羊の女性獣人さんたちの表情が、慰めるという口実で今日も……という感じにギラついているのだ。


 ……明日には帰って来るだろうから、その時の状況に応じて説教しよう。


 その次二回戦第三試合。

 ウルアくんと虎の男性獣人さんの戦い。

 ウルアくんはニコニコと平然そうだけど、虎の男性獣人さんがもの凄く張り切っている……というよりは――。


「緊張を誤魔化そうとしている?」

「ウルアの力は国中に届いているからな。何しろ、才能だけなら我を超えている」


 俺の言葉が聞こえていたのか、ウルトランさんが嬉しそうにそう言った。

 へぇ~、そうなんだ。

 と思っている間に、試合は進む。


 昨日の試合を思い返せば、虎の男性獣人さんは鎧の上からでも衝撃を通すような力の持ち主である。

 つまり、一角の強さを持っているという事だと思う。

 ここまで残っている訳だし。


 でも、そんなのは関係ないとでもいうくらいに、ウルアくんが圧倒している。

 虎の男性獣人さんが強靭な身体能力から繰り出される攻撃や、多種多様な技の数々を全てなんでもないように対処していた。

 というか、強過ぎる。

 俺の見立てだと……ウルアくんの強さはウルルさん並かも――。


「………………」


 ウルトランさんが、あれ? もしかしてもう我より強くね? と言いたげな表情を浮かべて見ている。

 獣王だからというよりは、父親だから負けられないと思っていそうな感じだ。


 そんなウルアくんの強さを今一番感じ取っているのは、虎の男性獣人さんだろう。

 虎の男性獣人さんが、咆哮を上げながら行った攻撃が通じなかったところで負けを宣言した。


 続く二回戦第四試合。

 フェウルさんと俺の戦いである。


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