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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第六章 獣人の国
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睡眠はきちんと取るように

 フェウルさんのお母さん。

 名前はフェリクスさんで、フェウルさんをそのまま妖艶に成長させた感じで、尻尾が一、二、三……五本は出ている。

 尻尾の多さが強さの証? かと思ったらそうだった。


 相当強いそうだ。

 娘であるフェウルさんによく似ている……この場合は逆か……親子だと一目でわかるくらい似ているけど、醸し出される色香が凄まじい。

 予め注意を受けておかないと、フラフラ~っと付いていってしまいそうになる。


⦅全く、人が明日の本選のシミュレーションをしている間に……付いていってはいけませんよ、マスター。もし付いていけば、酷い目に遭います。私の手によって⦆


 ブルッと背筋が冷えた。

 間違いなく、本当に酷い目に遭う事になるだろう。

 セミナスさんは、そういうところで一切手を抜かないと思うし。


⦅わかって頂けるのなら結構。それと、夜の私はそれ以上の色香があります⦆


 いや、今の状態で色香うんぬんを言われても。

 でも安心して欲しい。

 しっかりとした意識さえあれば問題なく耐えられる。

 理性が働いているというべきか、色香凄いな、という感想しか出てこない。


 それに、そもそも物理的に行けないし。


「ふふふ」


 俺の状態をみて、フェウルさんのお母さん……フェリクスさんが楽しそうに笑う。

 物理的に俺が行けない理由は簡単だ。

 俺とフェリクスさんの間にエイトとフェウルさんが立ち、警戒を露わにしているのだ。


「なんという色香。しかし、エイトは負けません」

「お母様はアキミチ殿に近付いては駄目! 先に目をつけたのはウチだから!」


 仲良く共同戦線を張って、フェリクスさんに対抗している。


「こうなれば仕方ありません。秘奥義として封印していたエイトの悩殺ポーズでご主人様を誘惑し、他の女性の色香に惑わされないようにするしかありません」

「安心して、アキミチ殿。ウチも切り札は持っています。必ずお母様の色香から守ってみせますので」


 いや、普通に接する事が出来そうだから、別に守って貰わなくても大丈夫なんですけど?


「あらあら? あなたたちのような小娘が私に勝てるとでも?」


 娘が相手なんだから、フェリクスさんも煽らないで欲しいな。

 絶対にこの状況を楽しんでいるよね?

 とりあえず、今の状況で俺が入り込む余地はないので、もう一方に視線を向ける。


 インジャオさんの骨を巡る戦いに新たに参戦したのは、ウルアくんのお母さん。

 当然、先に挨拶は交わしている。

 名は、ジュルアさん。

 ウルアくんをより女性よりに可愛くしたような顔立ちで、優しい表情が似合う女性。


 俺と挨拶した時も、優しい表情を浮かべ、朗らかな雰囲気を醸し出していた。

 一緒に居ると落ち着くような感じ。

 でも今は違う。

 その獰猛性をどこに隠し持っていたの? と問いたいくらいにギラギラした目をインジャオさんに向けている。


 インジャオさんは、ウルトランさん一家に大人気だなぁ……。

 なので、その一家の人に聞いてみる。


「フェウルさんとフェリクスさんは、あっちに交ざらなくて良いの?」

「「骨に興味はありません」」


 バッサリ。

 いや、でもこれは考えようによっては、俺もインジャオさんを助けている事にならないだろうか?

 もしフェウルさんとフェリクスさんが向こうに居た場合、どちらに協力するかわからない。

 下手をすれば、インジャオさんを襲う側だってあり得る。


 二人をこちらに引き付けておくだけでも、充分な助けになっているのではないかと思う。

 だから見捨てた訳ではないのだ。

 そういう意味を込めて、俺は奮闘中のアドルさんたちにアイコンタクトを送る。

 ――コチラモ限界近シ! 大至急撤退ヲ!


 ――了解! ソチラノ健闘ヲ祈ル! と返された時、メイドさんたちが食事の用意が出来ましたと呼びに来て攻防は終わる。

 いや、何と戦っていたのかはよくわからないけど、とりあえず確かな事は一つ。

 なんかどっと疲れた。


 俺たちの分の食事も用意してくれたようなので、一緒に食べる。

 さすがは王家というべきか、サラダは瑞々しく、肉は分厚い。

 量も多く、紅茶も凄く美味しい。


「……くっ。認めるしかないという事ですか」


 いつものように試飲したエイトが悔しがるほどだ。

 それでも、文句が一つだけある。


『………………』


 ウルトランさん一家の多くが、黙って食事をしているのだ。

 インジャオさんをジィーッと見ながら。

 ……なんだろう。この光景。

 美味そうな匂いや美味しそうな料理本を見ながら、質素なご飯を食べる感じ?


 でも無駄だと思う。

 インジャオさんの骨は、想像よりも硬いと思うから。

 それを言うとどうして知っている? まさかもう噛んだのか? と追及されそうなので、途中から気にする事をやめ、美味しくご飯を食べた。


「……自分はこの国から無事に出る事が出来るのでしょうか?」

「……頑張って!」


 食後、弱気なインジャオさんを励ましておいた。

 そのあとは、明日の本選のためにお風呂で体を癒やし、いつもより早めに寝る。


     ◇


 朝。

 起きてから思う。

 かなりぐっすり眠ってしまった。

 自分で思っていた以上に、疲れていたのかもしれない。


⦅おはようございます⦆


 おはようございます。


⦅疲れに関してですが、身体能力が上がった分、これまでよりも体力の消費が多くなった事が原因です。ご飯をきちんと食べ、お風呂でじっくりと疲れを取り、しっかりと寝ましたので今は問題ありませんが、今後の課題として体力の向上を最優先して下さい⦆


 なるほど。かしこまりました。

 ところで一つ聞きたいんだけど、どうしてエイトがベッド脇で待機しているの?

 きちんと鍵をかけたはずなのに。


⦅本人の口からお聞き下さい⦆


 という訳で、朝の挨拶を交わして聞いてみた。

 その解答がこちら。


「夜這いに対する監視です」


 いや、意味がわからない。


「どういう事?」

「色香に惑わされた可能性のあるご主人様が、夜這いに向かわないように監視していました」

「俺が仕掛ける方なの? それはなんの心配? いや、ちゃんと言っておくけど、そんな心配は必要ないから。というか、ちょっと待って」


 ジッとエイトを見る。

 ……なんかいつもより目蓋が落ちているような。


「……ぽっ」

「口で言うな。というか、なんか眠そうだな。数日寝なくても良いとか言っていたけど、寝れる時はちゃんと寝なさい」

「かしこまりました。確かにここ最近睡眠を取っていませんでしたので、ご主人様の監視も兼ねて、添い寝したいと思います。それとも、覆い被さる方が良いでしょうか?」


 そう言いながら、ベッドに潜り込もうとしてくるエイト。

 その動きに合わせて、ベッドから出る俺。

 エイトは、そのまま俺の寝ていたところで動きをとめる。


「ご主人様の温かさを感じます」


 うん。ついさっきまでそこで寝ていたからね。

 なんだろう……エイトに押し出された気分。


「まどろんできました……このまま仮眠を取ります。闘技場に向かう際に起こして下さい」


 そのまま寝始めたエイト。

 ……う~ん。本当に黙っているとただの美幼女なのに……。

 そんな事を思っていると、エイトの目がいきなり開かれる。


「起こす時は目覚めのキスでお願いします」


 それはない。

 と言う前に、エイトは寝てしまった。

 答えていないという事は、しなくても良いという事なので、普通に起こそう。

 エイトはこのまま出発まで寝させる事にして、まずは朝食を頂こうと部屋を出た。

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