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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第五章 魔族の国
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どうやらこれから何か起こるらしい

明道パートに戻ります。

 魔族の国で数日間過ごした。

 アドルさんたちとロイルさんも、たっぷりと話せた事で満足していると思う。

 もちろん、俺も時々会話に交ざる事はあったが、基本はのんびりと過ごさせて貰った。

 エイトとワンにも、好きなように過ごして良いと伝えた……んだけど。


「エイトは好きでご主人様の傍に居ますので、お構いなく」


 いや、構うから。

 毎朝部屋まで迎えに来るエイトにそう言ってみるのだが、そう返される。


「それに、いつご主人様が発情してもおかしくありません。ですが、その時真っ先に受け止めるのがエイトの役割ですので」

「まず、俺がいつでも発情するかのように言うのはやめようか」


 全くエイトはいつもいつも……。

 と、そこでちょっと思い付く。

 いつもこうしてやりくるめられるから、偶にはそれにのってみると意表を突けるのではないか? と。


 なので、肯定するような事を言ってみる。


「それに、もしその時が来たら、本当に受け止められるの? すんごいよ、俺」

「そうですね。確かに、確証もない事を提案するのは、エイトが間違っていたかもしれません。では、実際に試してみましょう。安心して下さい。ただの検証ですので、ご主人様は気の向くままに獣となれば良いのです。出来れば、エイトが気絶しても続けるくらいの獣性を見せて欲しいところです」


 そんな事を言いながら、エイトは寝室の扉を開き、ベッドまで移動して待機状態。

 ………………。

 ………………。

 なるほど。そう返してくる訳か。


 ぺこりと一礼して、寝室の扉を閉める。

 ふぅ……。

 どこかに釘とハンマーがないだろうか?

 このまま物理的に封印してしまいたいのに。


 そうする前に封印が破られ、エイトが顔をのぞかせる。


「まだですか? エイトはいつでも、いつだって準備完了ですが?」

「まだです。というか、朝食を食べに行きたいんだけど?」

「かしこまりました。俺のスウィートデザートは……エイトだ、というベタな事をしたいのですね?」


 いえ、違います。

 単にお腹が空いただけで……ちょっと待って。

 エイトの中の俺は、そんな変な言い方をするようなタイプなの?


     ◇


 朝食を食べたあと、王都に行く。

 その場でアドルさんたちから、問題なければ明日出発すると伝えられたので、その準備をするために。

 お小遣いを貰い、俺が必要だと思う物を買いに行く。


 当然、エイトは居る。

 でも、ワンは居ない。

 ワンは本当に好きに過ごしているというか、自由にしている。

 何しろ、自由過ぎてなのか、見かける度に違う女性を連れていたくらいだ。


 ……大丈夫かな?

 揉め事が起こらない事を願う。

 ……ワンならその辺りも上手くしそうだけど。


 そして準備だが……特にコレといってない。

 精々が、回復薬の数を増やすとか、なんか便利道具とかないかな? とお店を見て回るだけだ。

 それぐらいの軽い気持ちで色んな店を見て回る。


「エイトは貴金属店に赴く事を提案します」

⦅同意します⦆

「行きません」


 何を買わされるかわかったモンじゃない。

 でも、見ている分には楽しいんだよなぁ……。

 それに、意匠とかが国よって違うだろうし。

 ……でもなぁ、行ったら行ったで。


 チラッとエイトを確認。


「左手の薬指が寒いので、暖めるための指輪を希望します」


 直球だなぁ……。

 ………………。

 ………………。

 でもやっぱり、意匠が気になるので向かう。


 シンプルなモノよりも、デザイン性重視って感じのモノが多い。

 それと髑髏系かな?

 そうして楽しんだが、もちろん、セミナスさんとエイトからの直球の催促とも戦った。

 ……何も買っていないので、勝ったと思いたい。


 でもその代わり、二人の趣向みたいなモノを自然と覚えてしまった。

 セミナスさんはシンプルなモノ、エイトはワンポイントがある系、という感じ。

 二人に対して、何か贈り物をする時に役立つかもしれない。

 ……もしかして、これが狙いだったのだろうか?


 また、回復薬も何本か購入したのだが……。


「色々な味を用意してくれているのは嬉しいんだけど……産地が違うだけって意味あるのかな?」


 とりあえず飲んでみる。

 うん。普通の舌だから、違いがよくわからない。

 ……甘味、かな?


 そうしてお買い物を続けている間、セミナスさんに聞いてみる。

 次に向かうのは、獣人の国、で良いんだよね?


⦅はい。そうです⦆


 そこもこんな感じで穏やかに終わる感じ?


⦅いいえ⦆


 おっと、真っ向否定ときたか。

 でも、この回答には別の可能性もある。

 はい か いいえ でしか答えられない場合だ。


 つまり、実は多少穏やかではありません、という回答だった場合でも、あの聞き方だと、いいえ、になる訳だ。

 なので、聞き方を変えよう。


 大きな喧騒とか、大変な出来事はないよね?


⦅いいえ⦆


 ……ん? あれ?

 今、大きな喧騒、もしくは大変な出来事が起こるって言われた?


⦅はい。主にマスターが頑張る事になると思います⦆


 名指しかぁ……しかも俺。

 具体的な説明は……。


⦅安心して下さい。同時に私も頑張る事になりますので、共に乗り越えましょう⦆


 何を? かは教えてくれないのね。

 うん。わかった。行けばわかるという事ね。

 それを楽しみに、と。


 ……一体何をやらされるんだろう?

 セミナスさんも頑張るって言っているけど、そもそも俺からしてみれば、セミナスさんが頑張る事態って相当な事だと思うんだけど?

 ……考えてもわからん。


 なんだろうなぁ? と考えている間に、買い物は終わった。

 王城に戻って寝る。

 ……なんかワンが利用している部屋の前にたくさんの女性が居たんだけど、見なかった事にした。


 そして翌日。

 ロイルさん、三人の嫁候補……あとでアドルさんに名前聞いておこう、宰相さんが、見送ってくれる。

 他にもあの暗殺者の女性も……。


「楽しい日々だったぜ」

「またいつでもいらして下さい」

「待っています」

「いつでも歓迎します」


 いや、それ以外にも多くの女性たちがワンの下に集い、別れを惜しんでいた。

 ……この数日の間、何をどうすればああなるのだろう。

 考えてもわからないので考えるのをやめた。


「次会うとすれば会談の場かな? ……人が多く居るから、余の盾になってくれ」

「それはそこの宰相さんに頼めば良いじゃないですか」

「あいつは寧ろ、笑顔を浮かべて余を前に突き出してくる! 間違いない!」


 ははは、と笑っておく。

 俺もそう思えた。

 そして馬車に乗り、別れ際に思い出す。

 出発するけど、言わないよりは言った方が良いかな?


「あっ、そういえば、もしかしたらDDたち……竜たちが来るかもしれませんけど、ロイルさんを殺すために来る訳じゃないので、歓迎してあげて下さい。それじゃ」

「あぁ、わか……え? どういう事? いや、もうちょっと詳しく!」

「まーたぁー!」

「戻って来て! お願いだから戻って来てぇー!」


 走り出した馬車はとまらず、そのまま王都から出発した。

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