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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第五章 魔族の国
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このままじゃ肩書き通りって事じゃないか!

 ついポロッと出てしまった言葉、「三人共嫁にしちゃえば?」を聞いたロイルさんは、真剣に考え始めた。

 小声だったので他の人には聞こえていないようだ。

 その事にホッと安堵。


 待って。違う。

 今のはポロッと出てしまっただけなので、別の意見を考えたいです。

 でも……そもそもハーレムって可能なの?

 ……いや、樹さんが既にそうなっているから、可能は可能なのか。


 でも、そういうのって国ごとに可否があるだろうから、確認はしておかないといけない。

 なので、隣に居るロイルさんにこそっと確認する。


「考えている最中にすみません。この国って、複数を娶るって可能なんですか?」

「……」


 え? という驚きの表情が返された。

 今それを聞くの? さっきそういう事を提案したのに? みたいな感じ。

 すみません。順序が逆でした。


「……男女共に可能だ。特に、魔族の種の中には、複数を娶る事がその人物の力の象徴、みたいなのもある。もちろん、無理矢理なのはどこも認めてはいないがな」


 なるほど。勉強になりました。

 つまり、可能、と。

 そこら辺も踏まえて、もう一度考えてみるか。


 ……いや、俺って餌で罠じゃないの?

 なんかさっきので決まってしまうと、俺はプレートに書かれているままの影響力って事になるんだけど……違うよね?

 確認のために、このプレートを用意した宰相さんに視線を向ける。

 わかっています、と頷きが返された。


「では、まずは審査員の皆様に、第一印象で選んで頂きましょう」


 違う。進行して欲しい訳じゃない。

 ただ、相手の行動は速く、宰相さんがそう言うとメイドさんが数人入って来て、長机の上にある物を置いていく。

 それは、それぞれ先端の丸い部分に「1」「2」「3」と書かれている三本の棒。


 ……これで示せという訳か。

 視線を横に向ければ、既に全員掲げていた。

 迷いがなさ過ぎる。


 ロイルさん - 「1」「2」「3」

 いや、ある意味迷っていた。


 アドルさん - 「1」

 幼馴染だからだろう。もしくは同じ吸血鬼を選んだ?


 インジャオさん - 「2」

 ウルルさんの影響でメイドを選んだのかもしれない。


 ウルルさん - 「2」

 自分もメイドだからだろう。


 まさかと後ろを見れば、エイトとワンも掲げていた。


 エイト - 「2」

 二人目に自分に近いモノ――シンパシーを感じている目を向けている。


 ワン - 「1」「2」「3」

 だと思った。


 とりあえず、「2」が多い。

 そして視線が集まるのは、未だ掲げていない俺。

 逆に目立ってしまっただけじゃなく、最後に出すなんて大物感があり過ぎる。

 でも、出さない訳にはいかない。


 出遅れた俺のミスだ。

 ………………。

 ………………。

 バッ! と三本同時に上げる。


 一人目、二人目、大喜び。

 三人目、複雑そう。

 それも仕方ない。

 何しろ、本数的には負けている訳だし。


「アンリール嬢とステン嬢が若干優勢でしょうか? ですが、審査はこれからですので、ルシル嬢にも頑張って頂きたい」


 宰相さんがそう評す……あっ、また名前覚えるの忘れていた。


「それでは、王妃に求められるモノの一つに、教養があります。そこで、三人にはこれから問題を出していきますので答えていって下さい。解答は早押しです」


 早押しは教養と関係ないと思う。

 でも、盛り上がった。

 さすがというべきか、教養の高さを誇ったのは三人目。

 凄いとアドルさんたちから拍手が送られたほどだ。


 でも、俺としてはこの世界の事はまだ知らない事の方が多いため、ピンとこない事の方が多かった。

 勉強になったかは微妙。


 でも、これで三人目が一番の候補に浮上した可能性は高い。

 是非ともこのまま頑張って欲しい……あれ? いつの間にか、三人目を応援している?

 これが眼鏡に宿る魔性の力だとでもいうのか……。

 いや、それだと眼鏡基準になっているから、眼鏡が似合っているからだな、きっと。


 ………………あれ? 同じ意味?


「続いての審査に移ります。王妃に求められるモノの一つに、ダンスがあります。なので、これから踊って頂きましょう。ロードレイル様、お相手をお願いします」


 という訳で、三人分のダンスを見る。

 全員そつなくこなしていくが、一人目に優雅さを感じ、二人目と三人目は少し苦手そうな印象を受ける。

 アドルさんたちも同じ印象を受けたようだ。


 エイトとワンは普通に楽しんでいたが、俺は別の事を考えてしまった。

 ダンスといえば、DD。

 なんかこの国にも来そうな感じだったけど、その時のロイルさんが心配。


「では、次の審査に移ります。王妃に求められるモノの一つに、美しさがあります。なので、これから水着審査を行います」


 へぇ~、この世界にも水着ってあるん――。


「見てはいけません、と判断しました。実力行使を発動」


 エイトが目潰ししてきたので、咄嗟に回避!

 ……危なかった。いきなり何をする!


「安心して下さい。エイトはアフターケアもバッチリです。事後、魔法で治療可でした」

「いや、そもそもとんでもない痛みだよね?」


 そこを考えて欲しかった。

 治せるからって、気軽にやっちゃいけない。

 というか、これは明確な危機だと思う。

 なのに、セミナスさんが事前に教えてくれなかったってどういう事?


⦅ここであえて当たる方向に誘導して潰しておけば、マスターの視覚情報を私が握る事になり、更なる依存度に……⦆


 何やら怖い事をぶつぶつと呟いていた。


⦅ですが、この企みがバレた場合を想定すると……あぁ!⦆


 せめぎ合ってもいる。

 というか、今バレたよ。


⦅………………愛故に⦆


 それで片付けちゃ駄目だと思う。

 とりあえず、自主的に目を瞑り、そのまま手の平を上に置いて……難を逃れた。

 アドルさんとインジャオさんもそうしていたからだ。


 ロイルさんは当事者だから見ただろうけど、ワンの興奮した声が大きくて、反応を感じ取れなかった。

 水着審査が終わってから目を開けて確認すると、ロイルさんの顔が真っ赤っかになっていただけじゃなく、棒が三本とも上がっていたので、どうだったかは聞くまでもない。


 ……というか、宰相さんも見たの? と思ったのだが、手元にレンズまで真っ黒の眼鏡が握られていたので、それをかけていたんだと思う。

 俺にも事前にそれを用意しておいて欲しかったです。


 そのあとも色々な審査を行ったが……決まらない。

 そりゃそうだ。

 審査をやればやるほど、選考基準が増えていくんだから当然迷う。


「……もう三人共娶っちゃえば良いのに」


 という結論が俺の中に出る。

 全員、俺を見ていた。

 ……んー、あれ? もしかして、今の声に出ていた?


 すると、ロイルさんが真剣な顔つきで言う。


「……そうだな。三人がそれでも良ければ、今後はその方向性で話を進めていこう」


 という結論になった。

 三人もそれで良いと返答。


 ……いや、待って。

 別にその結論を否定する訳じゃないんだけど、今されると俺はプレートの肩書き通り、という事になるから、あとに出来ない?

 ほら、嫁候補者三人共が俺に向かってありがとうございます、と一礼しているし、間違いなく勘違いしているよね?


 ……しまった。

 名前、三人共覚えないといけない。

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