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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第五章 魔族の国
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どうやらそういう世界のようです

「……でもアレですよね。二人にお子さんは」


 思わずポロッと出てしまう。

 あっ、養子という選択もあるのか。

 なんて事を考えていると、インジャオさんとウルルさんの二人はキョトンとしていた。

 ……何故?


「……あ、あぁ。そうでした。たとえこの世界の一般常識でも、アキミチからすれば知らない事でしたね」

「異種族間でも大丈夫なんだよね、アキミチ。といっても、今はアキミチ次第なんだけど」

「え? 俺次第?」


 どういう事?

 さっぱり意味がわからない。

 俺次第と言われても、俺がこの世界でやっている事といえば………………あっ!


「もしかして、そういう神様が居るって事ですか?」

「その通りだよ、アキミチ。子宝の女神といってね、普通なら不可能でも、認められれば自らの力を使って子を授けてくれるんだよ」

「子宝の女神は凄いんだよ。何しろ、異種族間だけじゃなく、同性でも可能なんだから」


 へぇ~……同性でも、かぁ……。


「あれ? でも認められればって、何か条件でもあるんですか?」

「特にこれといって難しい事ではないよ。子宝の女神が明言しているのは、『そこに真実の愛があるのなら、私は全力で応えるだけです』だからね」


 インジャオさんがそう教えてくれると、ウルルさんは首を傾げた。


「……あれ? 私が聞いたのは、『そこに真実の愛があるのなら、たとえ男同士でも私は全力で応えるだけ……いえ、寧ろそこを推奨します』だったような」


 ……妙に具体的な内容になっているな。

 でも、そういう事なら頑張らないと。

 インジャオさんとウルルさんのためだけじゃなく、他にも……。


 ………………。

 ………………。

 ちょっと待って。

 同性だけじゃなく、異種族間もって事は……それって、たとえばだけど……元が無機物とでも?


 思わず、エイトを見る。

 俺の視線を受けて、エイトは首を傾げていた。

 おっと、もしかして、理解していない?

 それならそれでよかった。


 と思ったのだが、エイトが何やら考え出し……ポンと手を打つ。


「なるほど。ご主人様はエイトとの子を望んでいる訳ですね? 先ほどの視線は、そのつもりがあるのか? という確認であったと理解しました。安心して下さい。エイトはいつでもWelcomeです」


 そう言って、エイトが俺を迎え入れるように両手を広げる。

 いえ、迎え入れなくて大丈夫です。


「王都で庭付き一戸建て。休日は一日中怠惰で淫らに過ごしましょう」


 いえ、過ごしません。

 そもそも、庭付き一戸建てはともかく、王都でってところがポイントだな。

 地価、高そう。

 それに、この世界での建築費ってどれくらいなんだろうか?


 建てられるかも、その時に就いている仕事によると思う。

 とりあえず、今のままじゃ駄目なのはわかる。

 実質、今の俺って……冒険者:最下層ランク。だもんな。


⦅マスターが望むのであれば、住居用の城をご用意しますが?⦆


 セミナスさんが何気なく言う。

 ……間違いなく、用意出来るんだろうな。

 誇張でもなんでもないところが怖い。


⦅ちなみにですが、私は休日だけでなく、ほとんどの日をマスターと共に怠惰で淫らに過ごしたいと考えています⦆


 それは人としてどうだろう? と問いたい。


⦅あっ、子供は男の子と女の子を一人ずつ希望します。出来れば、兄妹が良いですね。立派に育ててみせますので安心して下さい⦆


 ちっとも安心出来ません。


⦅……これは本格的に子宝の神が封印されている場所を探してみるべきかもしれませんね⦆


 くっ……迂闊に触れて良い話題じゃなかった。

 絶対探し当てるだろうな、これ。

 ………………。

 ………………。

 よし、一旦置いておこう。


 またその時に考えれば良い事だ。

 ところで、魔族の国に来たは良いけど、これで終わり?

 なんか緊急性の高い案件もなさそうだし。


⦅そうですね。マスターが吸血鬼たちの事を知りましたし、特に用事はありません⦆


 え? もしかして、俺がアドルさんたちの事を気にしていたから、ここに来たの?


⦅はい。その通りです⦆


 それは、なんか……えっと、ありがとう。

 おかげで知る事が出来ました。

 それじゃあ、もう次へ?


⦅いいえ、まだ向かいません。時期尚早でもありますし⦆


 おっと、これから先に何かある予感。


⦅それに、こちらの用事が済んだからといって、あちらの用事が済んだ事にはなりませんので⦆


 ……あちら? どちら?

 と思っていると、ロイルさんがアドルさんに話しかける。


「それで、アドル義兄さん。まだ姉さんを見つけていない事は手紙でも寄越せば済む話。わざわざこの国に来て、こうして余に会いに来たという事は、何か用件があるのでは? しかも、重要な」


 え? そうなの? とアドルさんを見ると、笑みを浮かべながら、その通りだと頷く。


「相変わらずこういう勘は鋭いな。まぁ、だからこそ、ロイルが王で安心出来るのだが」


 ウルルさんがアドルさんにアイテム袋を渡す。

 アドルさんはアイテム袋の中から、一枚の封筒を取り出した。

 赤い蝋で封はされていないけど、代わりに複雑な魔法陣が描かれている。

 あれが封をしている証拠なのかな?


 アドルさんが封筒をロイルさんに渡す。

 ロイルさんは封筒の表裏を確認したあと、面倒そうな表情を浮かべる。

 ……あれ、どうやって開けるんだろう? 何か専用の魔導具とか?


⦅魔力です。封筒の表面に描かれている魔法陣は、魔力に反応すると消える仕組みになっていて、その魔法陣を描くのに専用の魔導具が必要になるのです。また、描かれる魔法陣は様々で、王家クラスになると複雑に描かれ、それがどこから差し出されたかの証明になっています⦆


 なるほどね~。

 というか、本当に何かあったんだ。

 それに、俺、なんにも知らされていない。

 そこがちょっとショック。


「気にするな、アキミチ。この話は、完全にこの世界の者たちが中心となって動かなければいけない事。神の解放に集中して欲しいからこそ、出来るだけ他の事で煩わせたくない、と私たちは考えたのだ」


 態度に出ていたのか、アドルさんがそう慰めてくれる。

 ……慰められていると思って良いんだよね?

 なんて事を思っている間に、ロイルさんが封筒に魔力を流し、封を開いて中から紙を取り出して確認していた。


 しかめっ面で。


「……これ、本気ですか? アドル義兄さん」

「本気も本気だ」

「なんで今更……面倒な」


 どういう事ですか? とアドルさんに視線で問う。

 アドルさんは苦笑を浮かべながら教えてくれた。


「簡単に言うと、現在名ばかりになっていて、一応の協力体制でしかない『EB同盟』を、もう一度、きちんとした同盟にして、文字通り一致団結したいので、日を決めて会談をしたい、というような事が書かれているのだ」

「おぉー……おぉ? 良い事だと思いますけど、なんでロイルさんはあんな表情?」

「ある国家間に問題があるからな」


 ……ある国家間に問題?


「最初の魔王軍を撃退したあと、確かに平和な時代はやってきた。ただそれは、魔王軍という脅威がなくなった平和でしかなかった」

「……つまり、それまで協力していた国と国が争い始めた?」

「そうだ。小競り合いまで含めればかなりの数がな。そして、その中でも最大の争いを起こしたのは、三大国として名が通っている『ラメゼリア王国』と『軍事国ネス』。軍事国ネスがラメゼリア王国に侵攻し、争いを起こした過去がある。それでも今は大魔王軍という共通の敵を前にして、一応の協力体制を敷いている訳だ」


 うん。それは確かに問題で面倒だ。

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