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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第五章 魔族の国
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魔族の国の王都に着きました

 魔族の国の領土に入ってから、なんというか自然が増えたような気がする。

 人の手が加えられていないというか。


「この地には様々な環境が存在している。だからこそ、魔族はここに建国したのだ。それぞれ種ごとに適応している環境というモノがあるからな。下手に手を加えない方が良い場合が多いのは間違いない」


 馬車の御者台。

 隣に座るアドルさんがキメ顔でそう教えてくれた。

 暑い方が良いとか、寒い方が良いとか、わかりやすくいうとそんな感じかな。


「それだけ数多くの種が、この国に住んでいるって事ですね」

「その通りだ。そして、その数多くの種を統括している場所が、今向かっている王都という訳だ」

「勉強になります」


 何しろ、この世界にとっては常識でも、俺にとっては知らない事ばかりだからね。

 勉強を怠ってはいけない。

 つまり、何が言いたいかと言うと……真面目にやっていますよ、という俺とアドルさんのアピールである。


「………………」


 御者台と馬車内部が繋がっている場所から、インジャオさんがジッとこちらを見ている。

 監視されているので落ち着かない。

 もう寄り道はしません、と誓ったのに、まだお疑いでしょうか?

 セミナスさんも、こうなる事がわかっていたんだろうし、言ってくれてもよかったのに。


⦅注意しても同じ結果になっていましたので、やめました⦆


 説教される未来だとしても、人はそこに進まなければいけない時があるのだ。

 そこにお風呂とベッド……あと温泉と美味しい料理と観光名所と……。


⦅ですので、注意を促しませんでした⦆


 ぐぅの音も出ない。

 ところで……スケジュール的には……その……。


⦅問題ありません。そもそも、こうなる事を見越していましたので、寧ろスケジュール通りに進行しています⦆


 あっ、こういうやらかしも計算の内なのね。

 さすが、としか言えない。


 そうして馬車は進んでいき、前と同じく野宿も平気になってきた頃、魔族の国の王都の街並みが見える場所まで辿り着いた。

 野良の魔物対策である高い壁はもちろんある。

 円……というよりは楕円に近い形の街並み。


 建物は……ラメゼリア王国の王都とそう変わらない。

 建築方式は他国を参考にしているから、とアドルさんが教えてくれた。

 だからか、王城も、見て直ぐそれが城だとわかる。

 でも違いはあった。

 それは、周囲の環境と王城の場所だ。


 まず周囲の環境。

 一部、壁がなく、そこが大きな湖と広大な森に繋がっている。

 環境が大事って言っていたし、きっと種にとっては、そういう場所が必要なんだろう。


 それと王城の場所。

 小高い丘の上にある。

 王城と王都を繋ぐ道にも壁があるので、安全は確保されているようだ。


 一言で言えば……ザ・ファンタジーという風景。

 これで空飛ぶ島とかあれば更に、だな。


⦅現在、更に南西の海の上に浮かんでいますが?⦆


 あるようだ。


⦅ですが、今のところは立ち寄る予定はありませんので、お忘れ下さい⦆


 あると知ったこの期待感はどこに持っていけば……。


⦅捨てて下さい。こう、ぽいっと⦆


 どう、ぽいっと?

 ……セミナスさんと捨て方について熱い議論を交わしている間に、王都に着く。

 大きな門の前には、入るのを待つ人の列が……出来ていない?


「あれ? 王都だよね? スムーズに行ける?」

「そういう時間帯というのもあるだろうが、元々入るのも出るのも少ないからな」

「そうなんですか? 景色も綺麗だし、もっと人が集まって来そうですけど?」

「……アキミチ。忘れていないか? 今は大陸全体で戦争中だという事を」


 いや、忘れてはいませんけど……それでも、こう……そういう時だからこそ、心にくるようなモノを見て活力を得ようとしてもおかしくないと思う。


⦅本音は?⦆


 並ばなくてラッキー!

 すいすいいけるぜ!


 ………………。

 ………………。

 今のなしでお願いします。


⦅取り消せるように鋭意努力させて頂きます⦆


 くっ……駄目か。

 若干後悔していると、大きな門の両サイドに鎧を纏う二人が立っている事に気付く。

 門番なのは間違いないが……背丈が俺の倍近くあるだけでなく、頭から角が生えていた。


「オーガ種に分類される魔族だ。戦闘において、並々ならぬ力を発揮してくれる」


 俺が注目していた事に気付いたアドルさんが、そう説明してくれる。

 ……確かに強そう。

 それにしても、あの角って……どれぐらいの強度なんだろうか?

 大抵の場合は骨と同じなんだろうけど、中には角の強度が一番みたいなのもあるだろうし。

 転んだ拍子に角で何か割りました、なんて話はよくありそうだし、角で〇〇を割りましたって鉄板ネタとかありそうだ。

 それに、この世界に動画サイトがあれば、そういうのがたくさんあがってそう。


 そんな事を考えている間に、門の前に着く。


「確認出来るモノの提示をお願いします」


 渋めの声で、門番さんからそう問われる。

 えっと、冒険者カード……冒険者カード……。


 待てよ。魔族の国に入ってから、冒険者カードを初めて提示するな。

 なら折角だし、記念に覚えていそうな出し方にしたい。

 こう、指で挟んで、スッ……と出すべきか。

 それとも、指遊びのようにパタパタパタと動かしたあとに、スッ……と出すべきか。

 ……うん。スッと出すのは決定だな。


 と思っていると、門番さんの反応がおかしい。

 アドルさんを見て、固まっていた。


「……まさか、『アドミリアル様』ではありませんか?」

「………………」


 アドルさんは答えない。

 代わりに、少し申し訳なさそうに頷くだけ。

 つまり、今のがアドルさんの本名って事?

 ……ごめん。油断して今の覚えられなかったから、もう一度。

 なんか格好良い感じだったのだけはわかる。


 すると、アドルさんが懐からメダルを取り出す。

 何かしらの紋様が描かれているのだけは見えた。

 そのメダルを門番さんに見せると、アドルさんに向けて跪く。


「間違いなく。よくぞおいで下さいました、アドミリアル様」

「……出来れば、このような状況で来たくはなかったがな」


 アドルさんのその呟きは、俺にしか聞こえなかったと思う。


「……入っても構わないか?」

「はい。それはもちろんです。アドミリアル様のご来訪は、ロードレイル様もお喜び頂ける事でしょう」


 メダルを仕舞い、馬車を進ませるアドルさん。

 ………………。

 ………………。

 しまった! 折角の記念だったのに、サッと冒険者カードを出していない!

 気付いた時には遅く、馬車は既に王都の中に入っていた。


 ……仕方ない。

 取り出した冒険者カードを、スッと仕舞う。


「それでアド……なんでしたっけ?」

「ふっ。アドルで構わん。……出来れば今は名乗りたくない名だ」


 どこか辛そうな表情を浮かべるアドルさん。

 なので、違う話題を口にする。


「それで、これからどうするんですか? とりあえず、先に宿ですかね?」

「宿は問題ない。これから城に向かうからな」


 あれ、もしかして……ここでも王城で寝泊まりするのかな?

 ここから出発する時……また野宿が辛くなりそうだ。

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