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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第五章 魔族の国
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選ぶ楽しさを味わいたかったような……

 宝物庫には、連れて行かれる事になった。

 目隠しをされて。

 まぁ、当然だと思う。

 何しろ、これから向かう俺、エイト、アドルさん、インジャオさん、ウルルさんは、異世界と他国の者たちなんだから、防犯上でこういう事をするのは当たり前。

 宝物庫の場所なんて、最重要に数えられる一つだろうし。

 でもまぁ……。


⦅道順はバッチリです⦆


 セミナスさんには関係ないというかなんというか。

 ところで……エイトはどこの出身になるんだろう。


「無から生まれました」


 返答に困る。

 いや、確かにそうかもしれないけど、今聞きたいのはそういう事じゃない。

 造ったのは神様たちだから、神の国、という事で良いか。

 あるか知らないけど。


 というか、ちょっと待って。


「あれ? こういうのって、事前に物が準備されているんじゃないの? もう渡すだけ、みたいな」

「当初はこちらで決めようと思っていたのだが、中々決まらなくてな。なら、もういっその事、本人に選ばせてみてはどうか、とアドル殿に言われて……そうする事にしたのだ」


 ゴルドールさんがそう説明してくれる。

 こっちに丸投げされた訳か。

 まぁ、別に良いんだけど……あっ、こうなる事がわかっていたから、セミナスさんが選んでいた訳か。

 なんか納得。


 宝物庫に向かうのは、そんな俺たちと、この国の王であるゴルドールさんに、元ビットル王国担当で、今は本国担当となった宰相さんだけである。

 この宰相さん。

 六十代くらいの男性なのだが、実年齢は四十代だった。

 見た目からして苦労してそうだったけど、本当に気苦労が絶えないのかもしれない。


 そんなこんなで辿り着いた宝物庫。

 なんか重い扉が開いたような重厚な音が聞こえたかと思うと、目隠しが外された。

 まず目に付くのは、宝石が散りばめられた箱多数、歴史的に価値がありそうな調度品群、黄金の鎧と錫杖に真っ赤なマント、なんか厳重に保管されている書物や巻物類、よくわからない人物や風景が描かれている絵画数点、などなど。


 ザ・宝物庫って感じの部屋。

 ただ、思っていたよりも狭いような気がする。

 もっとこう、ただただ広い部屋の中に、金銀財宝が散りばめられているのかと勝手に想像していた。


 そんな室内には、財宝の他にも目立つモノがある。

 一つは、壁に下げられているたくさんの垂れ幕。

 全部に同じ紋様が描かれているので、多分、このラメゼリア王国を象徴する紋様なんだと思う。

 それと、入って来たであろう扉近くに、テーブルセットがいくつか置かれている。

 飲食の準備も終わっているように見えた。


 ついでにもう一つ。

 俺たちが入って来たであろう重厚な扉を含めて、四方に同じ作りの扉があった。

 もしかして――。


「扉の先も宝物庫になります。種類で分類しているという部分もありますが、一番の目的は一目で全体を見せないためですな」


 そう説明してくれたのは宰相さん。

 多分だけど、秘密の逃走経路とかあって、その場所を隠すためっぽい。


⦅そちらはこの部屋から左、入って正面、入って右――⦆


 あー! あー! 聞こえなーい! 聞いちゃいけなーい!

 そういう事を気軽に言っちゃ駄目だよ、セミナスさん。


⦅わかりました。胸に秘めておきます。必要な時にお聞き下さい⦆


 必要にならない事を切に願う。

 というか、この部屋だけでも、宝物庫としては充分だと思うんだけどなぁ……。


「ここは入り口。いってしまえば、ここは宝物庫であるという事を見せる部屋ですね。この部屋だけは罠が一切ありません」


 表情に出ていたのか、宰相さんがそう付け加える。

 いや、それよりも、他の部屋には罠があるって事で良いのかな?

 ……あるんだろうなぁ、きっと。


⦅罠の解除方法は、全体と個々の部屋がありますが、どちらをお聞きしますか?⦆


 どちらも聞きません。

 そういう事も気軽に言っちゃいけないからね。


⦅わかりました。気を付けます⦆


 う~ん……これはアレかな?

 槍の神様が思っていた以上に有能だったから、まだそれに対抗しようと、自分の方が有能ですと言いたいのかもしれない。


 ………………。

 ………………。

 いや、セミナスさんと槍の神様のどっちを頼るかと問われたら、俺は間違いなくセミナスさんを選ぶよ。


⦅……お任せ下さい。私に対するマスターの溢れる愛を感じました。マスターがこの国……いえ、この世界を陰で牛耳るように頑張らせて頂きます⦆


 駄目だ。全然わかっていない。

 頑張る方向性が違うし、そもそも溢れるような愛は……じゃなくて、今はとめないと。

 世界とか要らないんで、いままで通りでお願いします。


⦅……失礼しました。少々気分が高揚してしまったようで、見苦しいところをお見せしました。もう落ち着きましたので大丈夫です⦆


 ……大丈夫だと思っておこう。

 セミナスさんが落ち着いたところで、話を進める。


「えっと、それで、好きなように選んで良いんですか?」

「そうですね。ここから持ち出すのが危険な物も中にはありますが、それは私の方からその時に注意すれば良いだけですので、基本はアキミチ様がお選び下さい。また、詳しい説明が聞きたい場合も、私に尋ねて頂ければお答えさせて頂きます」


 宰相さんがそう言って、俺に紙束を見せてくる。


「これは?」

「目録です。何しろ、実際は広大ですからね。目的もなく探すとなると時間がかかりますから」


 なるほど。

 確かに、手当たり次第となると時間がかかり過ぎる、か。

 持ち出し厳禁の判子が表紙に押された目録をパラパラとめくってみる。


「時間がかかりますし、あちらで目録をご確認頂ければ」


 宰相さんが指し示したのは、いくつかあるテーブルセット。

 ……このために置いたのかな。

 それとも、実際は広大な宝物庫だからこそ、休憩場所として置いてあるのか……別に気にする事じゃないか。


 アドルさん、インジャオさん、ゴルドールさんは既に椅子に座り、ウルルさんがテーブルの上に紅茶や軽食を用意していっている。

 ウルルさんのメイドっぽい仕草……久し振りに見たな。

 と、そこで気付く。


「あれ? アドルさんたちは良いんですか? それとも、既に貰っているとか?」

「アドル殿たちには、特定の事に対して全面的な協力をお願いされていますので、そちらを約定として果たす事になります」


 それって、出会った当初に言っていた、その時が来たら教えてくれる事情ってヤツに関わっているのかな?

 そんな気がする。

 となると、あとは俺が選ぶだけか。

 ……もう選び終わっているけど。


⦅はい。マスターの助けになるモノを選ばせて頂きました⦆


 目録、必要ない。


⦅仕方なくですが⦆


 ……どういう意味?

 なんかその嫌々な反応……前にも見たような気がする。


⦅とりあえず、そこのに、目録の五十六ページに書かれている『謎の箱』にしますと伝えて、置かれている場所まで連れて行って貰って下さい。それとも、私が案内しましょうか?⦆


 いえ、大丈夫です。

 宰相さんに、そっくりそのまま伝える。


「……あれはその、本当に用途不明ですが……大丈夫ですか?」

「大丈夫です」


 その用途は、きっとセミナスさんが知っているので。

 という訳で、その「謎の箱」なる物が置かれているところまで案内して貰う。

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