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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第四章 一時の再会
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俺は頑張ったと思います

 リビングアーマー二体を相手にして、色々と試してみた。

 といっても、試せる事はそう多くない。

 そもそも使える武器も決まっているし、他の武器は特にないのだ。

 装備の変更がない以上、出来る事は相手を変える事と相対する人数……組み合わせを変えるくらいである。


 槍と弓、相対した感想としては、どちらも同じくらいの強さ。

 近付いた距離によって、行動に変化が生まれる。

 それと、相対する人数に合わせても行動が変化した。


 わかりやすい例が、弓。

 詩夕と共に挑んだ時はある程度近付くと連射性が増し、一度に放たれる矢が増えるのだが、俺が一人で挑んだ時、連射性は特に変わらなかったが、近付いても矢の数は増えなかったのだ。


 槍の方は……よくわからない。

 常水が言うには力と攻撃速度が上がっている……らしいけど、そんな事を感じる余裕が俺にはなかった。


 だからといって、一人で挑む方が良いと俺は思わない。

 少なくとも、槍に対しては。

 弓は人数が増えた分、合わせて矢の数が増えるが、槍が一本なのは変わらない。

 つまり……槍に対して二人、弓に対して一人、で挑めば勝てる!


 ………………。

 ………………。

 無理だった。

 時間をかけて槍を追い詰めると、普通に矢を増やして援護射撃してくるようだ。


 倒すのは、弓を先にしないといけないようである。

 それともう一つ、わかった。


「はぁ……はぁ……向こうのリビングアーマー……はぁ……つまり、無機物……」

「ふぅ……スタミナとか……そういう概念がないって事だよね……」

「………………戦いに時間をかけ過ぎると、こちらが先にスタミナ切れを起こす、か」


 常水は余裕そうに見えるけど?

 詩夕は俺と一緒で少しバテ気味なので、ちょっと親近感。

 スタミナ切れないのを相手にするのは疲れるよね。


 一息吐いて、そういう事ならと弓に対して三人で向かう。

 ………………。

 ………………。

 そりゃ、当然、槍が援護に来るよね。


「た、退避! いや、違う! これは後ろに向かって進むだけ! つまり、前を向いて進む事と同義! 負けた訳じゃない! 俺たちは負けた訳じゃないからな!」

「なんかその言い方、負け犬っぽいよ!」

「急に小物臭い感じを出すな、明道」


 なんか注意が入るが、なんとか逃げ切った。

 門のところまで戻り、一旦休憩しながら話し合い。

 ちょっと結論を急ぎ過ぎた。


 そして、これまでの事から方針が決まる。

 弓に対して二人、詩夕と常水、槍に対して一人、俺。

 俺に攻撃力はないため、弓との早期決着を狙っての組み分けである。

 詩夕と常水が弓の相手をしている間、槍の相手を俺がして時間を稼ぐ。


 弓を撃破次第、詩夕と常水がこちらに合流して、三人で槍を倒す、という事に決まった。

 常水は一人で槍の方とやり合いたいみたいけど、ここは安全策でいく。

 カノートさんと存分にやり合えば良いさ。


 方針が決まったので、もう少し休んで体力を回復させる。

 屋台で色々買っといてよかった。

 アイテム袋から飲食類を取り出して、更に休憩の効果を高める。

 その間に、気になった事をセミナスさんに尋ねた。


 えっと、セミナスさん。


⦅はい。なんでしょうか?⦆


 詩夕と常水が居たら成功率が上がったって言っていたけど、それって裏を返せば、俺一人でも成功した場合があったって事だよね?


⦅はい。確率的には非常に稀でしたが、確かに成功していました⦆


 ………………。

 ………………。

 セミナスさんがそう言うなら本当なんだろうけど、ちょっと信じられない。

 あのリビングアーマー二体を相手にして、俺が一人で勝てる要素は一切ないと思うんだけど。


⦅推測なら可能ですが、お聞きしますか?⦆


 お願いします。


⦅では……鎧もどき二体のこちらの人数に合わせた動きを考慮しますと、恐らくですが、マスターが一人でここに来た場合、二体が同時に襲いかからなかったのだと思われます⦆


 一対一かぁ……。

 それでも勝てる気がしないのに、更に二連続とか無理じゃない?


⦅それは間違っていますよ、マスター。一体倒せば、自動的に勝利はこちらのモノです⦆


 え? なんで?


⦅一体倒せば神の封印を解く事が出来ますので⦆


 あぁ、なるほど。

 確かにそうだね。


⦅マスターを守る盾くらいの役割は果たしてくれるでしょう⦆


 相変わらず、セミナスさんの神様に対する扱いは酷い。

 ……まぁ、武技の神様や商売の神様、エイトを造った神たちの事を考えると……うん。気持ちはわからないでもない。

 そもそも、ここに封印されている神様は、まともに戦えるのだろうか?

 というか、俺が一体でも倒すとか、不可能じゃない?


 成功率が低いとはいえ、よく勝てたね、俺。


⦅所詮、鎧もどきといえども、関節部分は脆いでしょうから、そこを狙って極めていったのだと思われます。敵を知った今の私なら、マスターが一人で挑んだ場合はそう指示していましたので。ちなみにですが、マスターが一人で挑んで成功していても、重傷を負っていました⦆


 ……うん。相当頑張ったんだろうね、俺。


⦅まだ終わっていません⦆


 だね。

 ……よし、もう一勝負……頑張りますか!

 休憩を終え、俺たちはこれでケリをつけると気合を入れる。

 円を描くように立ち、手を前に出して重ね――。


「絶対勝つぞ~!」

「「おぉー!」」


 鼓舞するように拍手。

 そして、リビングアーマー二体との戦いを始める。


     ◇


 迫る槍を回避。

 俺の場合、一撃でもまともに当たればアウト。

 かすりでも駄目だ。

 傷を負えば、それだけで動きに支障をきたす事になる。


 確実に、丁寧に、慎重に、無傷で回避。

 それが理想。

 ただ、普通はそんな事無理。

 相手の戦力が上なら余計に。


 でも、それを可能に出来る存在が、俺には付いている。


⦅次、薙ぎ払いが来るので力強くバックステップ。それでギリギリ回避出来ますが、直ぐに距離を詰めて下さい。距離を開け過ぎますと、狙いが向こうに移ってしまいます⦆


 了解っ!

 セミナスさんが言ったように、槍を持つリビングアーマーが薙ぎ払いを放ってきたのでギリギリで回避し、直ぐに距離を詰める。

 といっても、詰めすぎない。

 狙いは俺に向けたまま、余裕を持って対処出来る、適切な距離を保つ。


 詩夕と常水が、弓を持つリビングアーマーを倒すまでの辛抱だ。

 槍を回避しながら、向こうの様子を窺う。


 既にかなり距離を詰め、弓のリビングアーマーから猛攻を受けている。

 凄いのは、それでも詩夕と常水は回避したり捌いたりして、無傷のまま進んでいる事だ。

 改めて、こんなに強かったのか、詩夕と常水は、と思う。


⦅少々近付き過ぎています。少し離れた距離を保って下さい⦆


 おっと、了解。

 槍のリビングアーマーと少し距離を取って、そこを維持しながら再び向こうの様子を窺うと、決めにかかっていた。

 弓のリビングアーマーが同時に放つ矢が一人三本になっているが、詩夕と常水はものともしていない。


 多分、もっと矢の一本一本を高威力にするか、もっともっと数を増やさないと、対抗出来ないのでなないかと思う。


⦅前に出て下さい。槍を持つ鎧もどきが援護に向かわないように、これから積極的に動きます。私の注意を聞き逃さないように⦆


 もちろん。信じているよ、セミナスさん。

 セミナスさんが居るから、俺は強い相手でも恐れず前に進む事が出来る。


⦅……お任せ下さい。マスターは私が必ず守ってみせます⦆


 なんかちょっと喜んでいるような声だった。

 ……なんで?

 意味はわからないが、これからやる事はわかっている。


 槍のリビングアーマーが猛攻撃を放ってくるが、セミナスさんの指示を聞きながら、俺は全力で回避行動を続けた。

 気まぐれに装備した、腕装着型の小盾が以外に良い仕事をする。

 槍の穂先を逸らすのに大いに活躍。


 ……今のは危なかった。

 顔面すれすれを槍の穂先が通ったのだ。

 そこで気付いた。

 詩夕と常水が弓のリビングアーマーを既に倒していて、なんかこっちの様子を見ていたのだ。


 急いで戦線を離れ、二人の下へ。


「ちょっ、見てるだけって酷くない?」

「いや、なんというか……見事としか言えないというか……明道の動きが凄過ぎて……」

「思わず見惚れてしまっていた。……明道に一撃を入れるのは、かなり苦労しそうだ」

「いや、何言ってんのかわかんないけど、とりあえず、さっさと槍のをやってきてよ」

「わかっているよ」

「任せておけ」


 そう言って、詩夕から弓のリビングアーマーが提げていた光る玉を渡され、二人が槍のリビングアーマーに向けて進む。

 あー、疲れた。

 一度動きをとめてしまうと立っているのにも疲労を感じたので、その場に腰を下ろし、のんびりと二人の戦いを見守る。


 いざという時は介入、もしくは、神様の封印を解いて介入させるつもりだったけど、二人は危な気なく槍のリビングアーマーを倒した。

 決め手をあえて言うのであれば……二人の息の合い過ぎたコンビネーションだろうか。

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