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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第四章 一時の再会
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高威力って使い勝手が悪い時がある

 中に入る。

 ………………リビングアーマー二体に動きはない。

 もう少し近付く。

 ………………同じく動きはない。


 更に近付く。

 突然黒い靄を立ち昇らせ、動き出した。

 それぞれ槍と弓を俺たちに向けて構える。


 そこで一旦足をとめた。


「どうやら、これ以上進むと攻撃が開始されるっぽいな」

「そうみたいだね。となると、今の内に決めておこうか。誰がどっちの相手をするのか」

「……一先ず、様子見も兼ねて、俺に槍を持っている方の相手を一人でやらせてくれないか?」


 常水がそう言ってくる。

 多分、相手が槍を使うからこそ、自分がどれだけ強くなったのかを確かめてみたいのかもしれない。

 ……そんな戦闘系の考え方していたっけ?

 この世界に染まったのかな?


 でも、手探りなのは俺も同じ。

 やってみなければわからないのだ。

 という訳で、まずは、俺と詩夕が弓を持つリビングアーマーを、常水が槍を持つリビングアーマーを受け持つ事になった。


 わかりやすくリビングアーマー二体を挟むように左右にわかれ、タイミングを合わせて前に出る。

 予想通りと言うべきか、こちらが前に出るとリビングアーマー二体も対応するように動き出した。


 というか、俺と詩夕が相手取る予定のリビングアーマーは弓だけしか持っていない。

 それに、よく見ると弓に弦が付いていない事に気付く。

 詩夕も気付いたようで「あれ? どういう事?」と目線で訴えてくるので、「さぁ? わかりかねます」と俺も視線で返しておく。


 ただ、答えは直ぐにわかった。

 弓を持つリビングアーマーが矢を放つように腕を引くと、キラキラと光る弦と輝く矢が現れ……放ってくる。


「「うわっ!」」


 突然の事だったが、俺も詩夕もなんとか回避。

 多分、魔力で作られた弦と矢みたいなモノかな?

 びっくりした、と思って前を向くと、弓を構えたままのリビングアーマーの手元には輝く矢が既にあった。

 弓を引く動作は最初だけで、あとはそのままで放てるのかな?


 予備動作が一切ないまま、そのまま輝く矢が連続で放たれる。

 ………………連射機能はずるいと思う。


 それでも、所詮は一直線に進むだけだし、連射といっても矢が一本ずつ来るだけなので、余裕で回避する事が出来た。

 また、俺か詩夕、前に出ている方に攻撃が集中するので交互に前に出て行き、リビングアーマーとの距離を詰めていく。


 ある程度まで近付くと、再び行動が変化した。

 構えた時の矢が二本になって、俺と詩夕を同時攻撃。

 その上、連射速度が上がり、息を吐かせない感じになる。

 狙いも正確で、的確に急所を狙ってくる……かと思えば、急所以外も適度に狙って牽制してくるようになってきた。


 小癪な!

 回避防御が主体の俺が、そうそう当たる訳にはいかない。

 時折セミナスさんの指示が入るので、俺の判断だけで全てを避けるのはまだ無理みたいだけど。


 それでも、そのセミナスさんのおかげで、俺はどうにか余裕がある。

 詩夕の方が辛い……訳ではないように見えた。

 避けるだけではなく、剣で斬ってもいる。

 ……普通に凄い。

 俺もそういう事をしてみたかった。


 とりあえず、余裕そうなので今の内に声をかける。


「余裕そうだね、詩夕」

「明道ほどじゃないけどね! これでも鍛えられているから!」


 思い返してみれば、詩夕たちの方には、シャインさんも認める弓の名手、グロリアさんが居るのである。

 相手が弓に対しての動きについても、色々学んでいるのかもしれない。


「何しろ、最近……咲穂が敵認定したメイドさんを射るようになってね。あっ、ロロナスさんっていうんだけど。そのロロナスさんがね、射られるようになったら、僕たちを盾にするように移動し出したんだ。流れ矢を避けている内に自然とね。ああいう時の咲穂の矢はエグい」

「えっ! 何その話! 俺、初耳なんだけど! というか、あれだけフレンドリーな咲穂に敵認定されるって、一体その人は何をやったの!」

「もちろん、グロリアさんにも弓に対して色々教わったよ」

「今はそういう事を聞いているんじゃない!」


 いや、ちょっ!

 そういう時じゃないってのはわかっているけど、もっと詳しく!


⦅集中して下さい!⦆


 あっ、すみま――。


⦅マスターが集中して考えるのは、他の女の事ではなく、私の事だけにして欲しいとお願いしてみます⦆


 こっちもこっちで余裕ですね!

 けれど、近付けば近付くほどに連射性が増していき、更に一度に放たれる矢の数が倍になった。

 どうやって狙いを付けているのか不思議なほどに的確だ。


 これはもう避けてどうにかなるモノじゃない。

 先ほどから前に進めていないのがその証拠。

 完全に足止めを食らっている。


 詩夕の方はまだ少しは余裕がありそうに見えた。

 その詩夕と一瞬、目が合う。

 わかった、と頷き……タイミングを合わせて後退。

 リビングアーマーと距離を開けた分、攻撃の勢いが弱まる。


「で、このまま後退で良いんだよな?」

「そうしよう。ちょっと何かしらの対策を練らないと……無策で突き進むのは不味い気がする」

「同意見」


 放たれ続ける矢を避けながら後退していく。

 すると、弓を持つリビングアーマーが、突然体ごと向きを変える。

 矢が向けられた方向に居るのは……槍を持つリビングアーマーとやり合い中の、常水!

 俺と詩夕の距離が開いた事で、常水の方が近くなったからか!


「詩夕!」

「任せて!」


 俺は前に、詩夕は常水の方に向かう。

 常水に向かって矢が放たれる。


「常水!」


 詩夕の叫ぶような声が響き、届いた常水が槍をくるりと回して矢を弾き壊す。

 一発は許したけど、次は許さない!

 一気に前に出た事で、弓を持つリビングアーマーの狙いが再び俺に切り替わった。

 余裕を持てるところで足をとめ、矢を回避し続ける。


 視線をもう一方に向ければ、詩夕が剣でリビングアーマーの槍を弾き、常水と共に後退するところだった。

 向こうも視線をこちらに向け、タイミングを合わせて一斉に後退。

 ある程度距離が離れれば、リビングアーマーは二体共攻勢をやめて、こちらに向けて構えたまま動きをとめた。


 こちらも一度合流。

 門のところまで下がる。


「……ふぅ」


 一息吐いたところで、常水が感謝の言葉を口にする。


「先ほどは助かった。ありがとう。あの注意がなければ、食らっていたかもしれない」


 詩夕が笑みを浮かべながら答える。


「良いよ、良いよ。寧ろ、よく反応してくれたって感じだったし。それにしても、あの槍のリビングアーマー、そんなに強いの?」

「さすがにカノートさんほどではないが、今の俺では、少しでも気を抜けば一気にやられかねないな」

「……一人で勝てそうか?」


 そう常水に尋ねた。

 常水は少し考えたあとに答える。


「……時間はかかるが、恐らく勝てる」

「そっか。となると、勝ち筋の一つとして、槍のリビングアーマーは常水に任せた場合、問題なのは弓の方か」

「………………あの連射性はないよね」

「………………矢が増えるのもね」


 詩夕と一緒に、うんうんと唸る。

 さて、どうしたモノか。

 武技で防げるのも僅かな時間だろうし………………ん?


「詩夕、常水。なんかこの局面をどうにか出来そうな武技はないの?」


 そう尋ねると、二人は苦笑いを浮かべた。


「いや、特殊武技ってのが使えるんだけど……」

「大規模破壊級だからか、使い勝手が悪いんだ……」

「だからもしここで使った場合……」

「恐らく、建物ごと埋められてしまう」


 使えねー……じゃなくて。

 いや、特殊武技ってのも気になるけど、それはあとだ。


「いや、だったら普通の武技の方で」

「「………………」」


 いきなり二人が黙った。


「………………え? もしかして……普通の、使えない? というか修得してない?」


 詩夕と常水は、俺から視線を逸らして小さく頷いた。

 えぇ~、何それ……普通は、普通の方を覚えて特殊とかじゃないの?

 順番逆じゃない?


「まぁ、アレだよね。そう結論を急がなくても良いんじゃない?」

「そうだな。一番効果的な行動を探るためにも、色々と試してみるべきだ」


 ……なんか誤魔化そうとしているけど、二人の言う事ももっともだ。

 まずは、リビングアーマー二体をどうするかを考えていこう。

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