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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第四章 一時の再会
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これからやるべき事をやります

 セミナスさんからの指示は、詩夕、常水と共に、とある場所に行って欲しい、という事だった。

 詩夕と常水に大丈夫か? と尋ねると、大丈夫だと返答。

 二人も、前にそれらしい事を言ってから、いつでもいけるように調整していたそうだ。

 それと、準備も怠らないように、という注意が飛んできたので、アドルさんたちからいくつか盾を預かり、ポーション類も買い揃えて、アイテム袋の中に仕舞っておく。


 ……武器は?


⦅マスターの主体は回避防御です。下手に持つよりかは、回避防御に専念した方が得策です⦆


 あっても活かせないのなら仕方ない。


 向かうのはそれなりに遠い場所らしいので、移動手段は竜。

 駄目元で交渉……大丈夫だった。

 俺と竜たちの絆は強い。

 DDは来ないけど。


 ジースくんと他二頭だ。

 エイトも来るので、俺と共にジースくんの背に乗る。

 他二頭に対して、ジースくんが勝ち誇っていた。

 仲良くしてね。


 樹さんも連れて行った方が良いような気がするのだが、鍛錬とフィライアさんたちとのデートで忙しそうだ。

 これ以上の予定を組み込むのは、酷というモノだろう。


「いやいや、そんな事はないぞ。好きなだけ組み込んでくれ」

「……じゃあ、説得して下さい」


 指し示す先には、満面の笑みを浮かべるフィライアさんたち。

 大人しく連れて行かれる樹さん。

 敬礼して見送った。

 まぁ、セミナスさんも、詩夕と常水が居れば大丈夫だと言うので問題はどこにもない。


 アドルさんたちにも一旦出て行く事を伝え、ジースくんたちの背に乗って移動。

 それなりの時間、空を飛んだ。

 セミナスさんが言うのは、馬車でも数日はかかる場所だそうだ。

 空を飛ぶって、やっぱり便利。


 目的の場所は、近付けば直ぐにわかった。

 小高い山の中腹に、黒い神殿が見える。


⦅前回同様、あの中で私の力は著しく低下します。また、汎用型もこの世界の物で造られたため、中に入る事は出来ません。充分以上の警戒でお願いします⦆


 セミナスさんから本気の警告が入る。

 黒い神殿近くに降ろして貰う。

 ジースくんたちも試しにと入ろうとしたが、やはり結界で遮断された。

 エイトも同じように試したが、セミナスさんが言っていたように遮断されてしまう。


「………………」


 拳を握って本気で悔しそうな表情をしている。

 落ち着いて、落ち着いて。

 エイトとジースくんたちは、この場で待っていてくれるそうだ。


 いってきますと声をかけ、俺、詩夕、常水は、黒い神殿に向かった。


     ◇


 黒い神殿の中は、これといって変なモノはなかった。

 なんというか……最初に入った黒い神殿に似ている。

 下に向かう階段があるだけなので、罠がないかを一応確認しながら進んでいく。


「こんなところに神様が封印されているんだ」

「材質は普通に石材のようだが……どこか息苦しさを覚えるのは黒色のせいか、それともそういう雰囲気だからか……もしくは作り手が関係している可能性も」


 詩夕と常水は初回という事もあり、興味深そうに辺りをキョロキョロ。

 随分と余裕そうに見える。

 ……ふっ。それにしても、もっと落ち着けよ。

 俺なんて、ほら、もう三回目だから、慣れたモンさ。


「なんか僕たちを見て、ちょっと勝ち誇っているように見えない?」

「初めてである俺たちを前にして、余裕を見せたいのかもしれない。いや、初めての俺たちが居るからこその余裕か?」

「なるほど。じゃあ、ここからは別行動にしようか?」


 やめて!

 的確に読むのもそうだけど、こんなところで一人にしないで!

 あれだよ? 震えちゃうから!

 一人だとガクブルだからね!


「というか、一本道なのに分かれる必要性がどこにある!」

「気付いちゃったか」

「つまり、分かれ道があれば分かれると?」

「分かれ道があったらね! でもアレだよ? 分かれるっていっても、一人で行動するのは詩夕か常水のどちらかで、一人は俺と組んで貰うから!」

「つまり、一人になるのは嫌だ、と」

「しかし、明道には既にセミナスさんが居ると思うのだが?」

⦅今、マスターの友が素晴らしい事を言いました。マスターには既に私が居る、と。つまり、周囲からも認められた関係だという事ですね⦆


 くっ、味方が居ない。

 とりあえず、常水が言った事と、セミナスさんの言っている事は、多分意味が違うだろうから否定したい。

 そこで思い当たる。


 ここは、俺たち以外は誰も入れない場所……つまり、証言さえ合わせれば完全犯罪が……。


「あっ、なんか怯えた目になった」

「少しからかい過ぎたかもしれない」


 そこから急に、詩夕と常水が俺を甘やかし始めた。

 その程度でほだされる俺じゃない!


 なんて茶番をしている間に、一本道だった地下通路の奥に辿り着く。

 罠は特になかった。

 奥にあったのは、門。

 この黒い神殿内の造り……一回目と同じような気がする。


 ……という事は、門の向こうで起こる事は、戦闘の可能性が大。

 ………………。

 ………………。


「よし。何もなかった。引き返そう」

「いや、あるよ! 門があるよ!」

「なるほど。明道にとっては嫌な流れかもしれないんだな?」


 常水、正解。

 でもまぁ、実際に中に入ってみない事にはわからないので、音を立てないようにゆっくりと扉を開けて、こっそりと中の様子を窺う。


 そこそこ広い部屋。

 特に装飾もなく、他の出入り口はなさそう。

 そして、部屋の中央に……ごつい全身鎧が二つ並んでいて、それぞれ槍と弓を持っていた。

 特徴的なのは、二つ共に光る玉を首からぶら下げているという事。


 光る玉があるという事は、それに神様が封じられているから………………状況的に考えて、あのごつい全身鎧が動くのかな?


⦅恐らく、リビングアーマーと呼ばれる類のモノと思われます⦆


 つまり、中に入ると襲いかかって来るから、撃退しないと光の玉が取れないと?


⦅そうなりますね⦆


 ………………。

 ………………。

 仕方ない。

 ここまで来れば覚悟を固めるか。


 詩夕と常水に、得た情報を伝えて共有。


「なので、まずはそのリビングアーマー二体をどうにかしないといけなくなると思う」

「本気の戦闘系だね。あとは……」

「実際にやってみないと、どうにもならないな。対策の練りようもない」


 まぁ、そうなるよね。

 このままここで考えていても答えは出ない。

 やり合ってみないと、強さもわからない訳だし。


「でも、一つだけ決めておこう。いけそうならそのまま……駄目そうなら一旦下がる」

「……そもそも、中に入って下がる事って出来るの?」


 詩夕が小さく手を上げて聞いてくる。


「出来る、と思う。これも試してみない事にはわからないけど、少なくとも、最初の戦いの時は下がる事が出来た。それでアドルさんたちと色々相談して……どうにか勝てたんだ」

「なるほど。確かに、初見でどうにかしようとするのはやめた方が良いかもしれないな。仮にも、神様を封じている光る玉を守らせるために居るんだ。それ相応の戦力を有していると考えるべきか」


 常水の言葉に、俺はその通りだと頷く。

 そして、軽く準備運動をし、詩夕は剣を、常水は槍を持つ。


 ………………。

 ………………。

 無手ってビジュアル的にアレじゃない?

 なんというか、こう……本当の意味で強者が無手だと様になるんだけど、そうじゃないのが無手って相手を舐めているというか、イキっているように見えなくもなくない?


 ……よし。

 アドルさんたちから預かったいくつかの盾の中で、腕に装着するタイプの小型盾があったので、とりあえず装着しておいた。

 うん。動きの邪魔にならないし、ビジュアル面でもクリアした……はず。


 準備が終わり、俺たちは円を描くように立ち、手を前に出して重ね合う。


「絶対勝つぞ~」

「「おぉー!」」


 拍手をして鼓舞。

 勢いを保ったまま、俺たちは扉を開けて中に入った。

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