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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第四章 一時の再会
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成長著し過ぎないですか?

 早朝。まだ陽も昇っていないので薄暗い。

 もう少し寝ていたかったのに、何故か詩夕と常水に連れ出される。

 ……あれ? エイトは良いの?


 もう準備を終えている?

 そっか……なんの準備?

 答えてはくれなかったが、今から見せたいモノがある、とだけ言われて連れて行かれた場所は、背景に王城が見える広場。

 なんかこう、野外ステージとかがあれば、利用者が多そうな感じ。


 何故かポツンと置かれている椅子に座らされ、詩夕と常水は後ろに待機。

 ……座ってから気付いた。

 なんか少し離れた位置に三人居る。

 薄暗いので、背丈くらいしか見えない。


 左、普通。

 真ん中、小さい。

 右、大きい。


 ……なんか、ポーズを取っているように見えなくもない。

 誰だろう……と思っていると、王城の背後から陽が昇り、漏れた陽の光が広場を照らす。

 照らされた事で三人が誰かわかった。


 左、アドルさん。

 真ん中、エイト。

 右、DD(人の姿)。


 何をするかもわかった。

 同時に、軽快な音楽が鳴り響き始め……ダンスバトルが始まる。

 アドルさん対DD、再び。

 因縁の対決……かどうかはわからない。

 音楽はもちろんジースくんたちだろう。


 やっている事というか動きは、前回と同じように見える。

 鳴り響いている音楽も同じだし。

 エイトの立ち位置は……審判かな?

 ただ、なんというか、これで終わりじゃない感が強い。


 何故かそう思える。

 前と違って余裕そうというか、楽しんでいるように見えるからかもしれない。

 事実、それは正しかった。


 曲調が段々と早く激しくなり、それに合わせてアドルさんとDDの動きも激しいモノに。

 すると、広場奥の左右から、大勢の人が出てくる。

 老若男女問わず、騎士や兵士、貴族っぽい人、冒険者っぽい人も交ざっているので、統一性はない。

 今、この王都に居る人たちって感じ。


 ……というか、よく見ると、インジャオさんとウルルさんだけじゃなく、フィライアさんとグロリアさん、ゴルドールさんやサーディカさん、カノートさんだけじゃなく、ドンラグ一家にギルドマスターも交じっている。

 何やってんの、この人たち。


 現れた大勢の人は、それぞれが思い思いにアドルさん、もしくはDDの後ろに陣取っていく。

 ……オーディエンスかな?

 なんか盛り上がっているというか、応援しているように見えるし。

 と思って見ていたら、アドルさんとDDがポーズを決めて動きをとめる。

 音楽も合わせてとまり、オーディエンスも静かに。


 これで終わり? ……ではなかった。

 チッチッチッ、とタイミングを計るようにスティックを叩き合う音が鳴り、一斉に新たな音楽が始まる。


 それは、アップテンポが激しいのは変わらないが、これまでとは違って、奏でる音が増えた事で厚みが増したような気がした。

 元の世界の音楽に近付いたような感じ。

 おぉ! と驚くと共に、ダンスバトルも再び始まる。


 ただ、先ほどとは明らかに違う点がある。

 アドルさんとDDのダンスは、先ほどまでのような激しさはなくなっているが、代わりにテーマのようなモノが表現されているように見えた。

 アドルさんは、スマートに。

 DDは、パワフルに。


 また、それぞれのオーディエンスが、アドルさんとDDのダンスの動きと全く同じ、シンクロダンスを踊り出した。


 なんというか、スマートなダンスのアドル軍 対 パワフルなダンスのDD団という構図に見える。

 曲に合わせて互いのダンスを見せ合い始めたのだが……ミスがない。

 細かい部分や奥の方に居る人とかはわからないが、俺の位置から見えている範囲内で、ミスっている人は見当たらなかった。


 段々と曲が盛り上がっていき、ダンスも少し激しくなると、遂に全員が一斉に踊り出す。

 単純に凄くて迫力がある。

 曲は盛り上がりが最高潮に達すると終わり、合わせて全員がピタッと動きをとめた。

 アドルさんとDDは、腕相撲をする時のように手を組んでとまっている。


 ………………喧嘩後の和解?

 戦って友情が芽生えた的な?


 これで終わりかな? と腰を上げようとした瞬間、再び曲が流れ始める。

 今度は、全員でシンクロダンス。

 一体感が凄い。


 そのまま見ていると、エイトが前に出て……ソロパート!

 お前もか、エイト!


 一体いつの間に……って、今度は樹さんのソロ!

 やっぱり居たのね。


 呆れていると、俺の両隣から前に出て行く二人が居た。

 詩夕と常水である。

 そうくるだろうなって思っていた。


 詩夕と常水のそれぞれのソロが終わると、アドルさんとDDが、甘い甘いとでも言うように、チッチッチッと指を振りながら最前面に。

 この二人のダンスは、他とは一線を画した、正に圧巻の一言。


 そして、再び全員でシンクロダンスを行い、フィニッシュ。

 ポーズを決めると同時に、どこからか紙吹雪が舞ってきた。

 見終わってから気付く。


 最初は二人で戦っていたが、仲間が増えて大きくなり、最後は仲良くなって一つに……みたいな物語かな?

 ………………ストーリー性を盛り込んできたの?


 ダンスや音楽のレベルが上がっただけじゃなく、それ以外にも力を入れ始めたのだろうか?

 ただ躍るだけじゃなく、シチュエーションにもこだわりを持つように?

 ……DDやジースくんたちは、一体何を目指しているのだろう。

 トータルマネジメント的な何か?


 意味がわから、ちょっと待って。

 なんでポーズを決めたまま動かないの?

 動く気配が一切ない。

 ……えぇと、もしかして、俺の反応待ち、なのかな?


 ………………。

 ………………。


「ブ、ブラボー……」


 パチパチと乾いた拍手もしておく。

 なんかちょっと衝撃の方が強過ぎて、上手く反応が出来ない。

 それでも、間違っていなかったようだ。


『YEAH~!』


 一斉に歓声が上がり、口笛が鳴り響き、誰彼構わず手を叩き合い出す。

 ………………。

 ………………。

 あの、踊ってないけど、俺もそっちに行った方が良いかな?

 拍手の音なんてもう聞こえてないだろうし、俺の存在も忘れてない?

 なんかこう一人だけ観客に回ると、疎外感が半端ないんだけど……。


     ◇


 基本、王城でゆっくり目覚めていた俺は知らなかったのだが、少し前から一日の始まりにダンス、を行っていたらしい。

 エルフの里のよう、え? ビットル王国もなの?

 ……竜というか、DDやジースくんたちの影響力が凄まじいな。


 それで、日々上達していくダンスを披露したくなり……今回の事が起こった、と。

 ソロパートがあった、詩夕、常水、樹さん、エイト、アドルさん、DDが、主導で動いたそうだ。

 いや、それは別に構わない。


 問題なのはどうして観客を俺一人にしたか、なのだが、今回のはリハーサル、もしくはチェックのつもりだったようだ。

 なので、色んな人からどうだったと問われ、答えていくのが辛かった。

 そういう事は事前に言ってくれないと困る。

 全員を全員見ていた訳じゃないんだからさ。


 今度は、沈んでいく夕日をバックにして、王都内の別の場所で行うらしい。

 いや、だったら俺も交ぜてよ。

 疎外感が凄かったんだから。


「練習時間は、今日みたいな早朝だけど大丈夫?」


 じゃあ、大丈夫です。

 起きれません、というか、起きません。

 夕方の公演を楽しみにしています。

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