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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第一章 始まりの始まり
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神様復活!

 ………………。

 ………………何でミノタウロスの下から人の手が?

 え? というか、ちょっと怖いんですけど?

 ホラーなんですけど。


「すみませ~ん! ほんと、誰か居ないんですか~?」


 飛び出ている手がぶんぶんと振られる。

 え~と……とりあえず引っ張り出した方が良いかな?

 そう思って、飛び出ている手を掴む。


「あぁ、すみません。今、引っ張り出しますね」

「助かった。すみません。宜しくお願いします。ほんと、このまま放置されて、存在が忘れられるのかと思って……」


 何やらブツブツと言っているが、その間に引き摺り出していく。

 正直、もうほとんど体に力が入らないが、それでも頑張った。

 なけなしの力を振り絞っていくと、徐々にその姿を現していく。

 足先まで引っ張り出すと、その人は立ち上がって体に付いている埃を払い、片手を上げてニカッと笑みを向けてきた。


「いや~、ほんと助かったよ! ありがとう」


 そう言った人は、自分の上に乗っていたミノタウロスの死体を見て、「うわっ!」と驚く。

 俺も驚いていた。

 その人物は、白髪白目の可愛らしい少年なのだが、肌白く、服装も白のTシャツ短パンと、全体的に白い。

 それに、感じる雰囲気が何というか……人間っぽくないというか……何思っているんだろう。

 見た目は、人そのものなのに。


「僕って見た目通りの非力だからさ。こんな重いのが上にあったら、もう身動き取れないんだよね~」

「は、はぁ……」


 親しみやすい笑顔を向けてくるが、正直誰だろうという困惑が先に来る。

 それがわかったのか、白い少年が思い出すように手を打つ。


「あぁ、ごめんごめん。僕が誰だかわからないよね。それと、アキミチくんだよね?」

「え? どうして俺の名前を?」

「どうしてって、予言のから聞いていたからだよ。僕を封印から解放してくれるのは、アキミチって名前の子だって」

「予言の? ……という事は」

「ども! 僕は『武技』の神だよ」


 ………………。

 ………………。


「かみ?」

「神」

「……えぇと、俺が解放した?」

「そう」

「……記憶にないんですけど」

「え?」

「え?」


 武技の神と名乗る少年と、揃って首を傾げる。

 今度は少年が困惑しながら尋ねてきた。


「えぇと、何かこれぐらいの、光る玉を壊さなかった?」


 少年が両手を使って、大きさを示すように玉を作る。

 ………………。

 ………………あぁ! そういえば、ミノタウロスが首から下げていたヤツ!

 合点が得た俺は、ポンと手を打つ。


「ミノタウロスが倒れた時に壊れたのか」

「なるほど。だから僕の上に牛の魔物が居たのか」


 揃って、うんうんと頷く。

 というか、そんな簡単に壊れるモノだったのか、それともミノタウロスを倒したから壊れたのか、その判断が付かない。

 まぁ、今わからない事を考えるのはあとにしよう。

 どうせ、他のも俺が壊すようだから、その時に考えれば良いし。

 ………………。

 ………………ちょっと待って。

 つまり……この目の前の少年は………………本当にこの世界の神様?

 ………………。


「ははぁ~!」


 俺は即座に平伏した。


「いやいやいやいや、平伏なんてしなくて良いから! 寧ろ、僕はこうしてアキミチくんに助けられて感謝しかないから! それに、これから共に大魔王軍と戦う仲間なんだから、そういうのはなし! ほら、立ち上がって、ねっ!」

「あっ、どうも。すみません」

「いえいえ」


 少年……武技の神様に立たせて貰う。


「それじゃ、まずはコレを渡しておくね。予言のから預かっていたんだ」


 そう言って、武技の神様がどこからか小さな光る玉を取り出し、俺の胸に押し当てる。

 すると、吸い込まれるように消えていった。


「今のは?」

「予言のが、君に必要だと色んな神から助力を得て作った、新しいスキルだよ。今は体に馴染んでいる最中だから、ピンと来ないかもしれない。あとでどんなのかわかるよ」

「え? どんなのかわからないんですか?」

「うん。詳細は聞いてない。渡された時は結構切羽詰まっていたからね。でも、予言のが言うには、アキミチくんがこの世界で生きていくために必要らしいよ」


 なるほど。

 ……何かを用意してくれたのは嬉しいが、出来れば最初からにして欲しかったと思わずにはいられない。

 でも、心の中でありがとうと呟いておく。


「それと、アキミチくんの得たスキルも更新しておくね。武技の僕じゃ補正は出来ないけど、それぐらいなら出来るから」

「ありがとうございます」


 よぉし! これでどんなスキルを得ているかわかるぞ!

 ちょっとウキウキしてしまう。


「……って、ウキウキしている場合じゃない! 武技の神様! 親友たちが!」

「大丈夫。予言のが言った通りなら間に合うから。でも、予言のからのメッセージを伝えておくね」


 そこで、武技の神様が初めて真剣な表情を見せる。

 俺がゴクッと喉を鳴らす。


「……なんですか?」

「未来は流動的ですので、ここから先、この世界がどうなるかは、アキミチくんとその友達次第です。勝手に呼んで、勝手なお願いですけど、どうかこの世界を宜しくお願い致します、だって」


 ………………。

 ………………。


「一つ、良いですか?」

「ん? なんだい?」

「今の声真似? で良いのかな? 随分と高い声でしたけど、予言の神様は女性なんですか?」

「うん。そうだよ」


 そうなんだ。

 ただ、その声真似が上手いかどうかの判断が出来ない。

 予言の神様知らないし。


「……でもまぁ、答えとしては、親友たちの性格を考えれば、きっとこの世界を放っておかないと思うから、俺はその助けをするだけ。また会いたいから」

「うん、大丈夫。きっとまた会えるよ」


 武技の神様と一緒に笑みを浮かべる。

 そうだ。

 親友たちと無事に会うために、俺は頑張るだけである。


「それじゃ、僕はそろそろその友達のところに向かわないと」


 宜しくお願いしますと頭を下げた。

 頭を上げると、武技の神様が任せてよと頷き、手を振り出す。


「暫くは世界中の人のスキルを更新しないといけないから、会えなくなると思う。でも、また会えるはずだから、その時は宜しくね~」

「はい。こちらこそ」


 そうして笑みを浮かべながら、武技の神様の姿が段々と薄くなっていき、この場から姿を消した。

 同時に、俺の体から一気に力がなくなり、その場にへたり込む。

 親友たちの方は、武技の神様に任せるしかない。

 きっと大丈夫。

 俺はやり遂げたんだ。


 少しだけ休んだあと、ここから出るために、俺はゆっくりと外へと向かう。

 いつか親友たちと会える日を願って。


 ……あっ、俺もこっちに来ているって伝えて貰えば良かった。

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