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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第四章 一時の再会
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偉い人って普通はそうそう会えないよね

 詰所での話は、そう時間はかからなかった。

 軽く注意だけ。

 なんでも、バッグラウンド商会が潰れて、絡んできたようなヤツらが一時的に増えているそうだ。


 ……そういうのばっかり雇っていたのかな?

 まぁ、そういう商会みたいだったけど。

 なので、ああいう裏路地的なところは無闇に通らないように、と注意を受ける。

 すみません。気付いたら通っていたんです。


 衛兵さんたちも警戒して見回っているからこそ今回は間に会ったが、次も間に合うとは限らないから、そこのところを留めて行動するように、と締め括れられる。

 いや本当に、仰る通りです、はい。


「……本当にわかっているのか?」

「はい、もちろん」


 何をお疑いで?

 寧ろ、何で疑われるの?


 ついでに、絡んできた四人に関しても聞いておく。

 釈放されたあとで絡まれても困るし。

 ………………なるほど。

 大魔王軍と戦争中の今、軍事国ネスに送って最前線に配置される、と。

 冒険者が犯罪を起こした場合は、Cランク以上だとそうしているそうだ。


 ……あの四人、本当に冒険者で、Cランク以上だったんだ。

 そっちの方が驚き。

 あれ? 確かCランクって平均的だったような……まぁ、良いか。


「でも、冒険者とはいえ、犯罪者を送って、その……軍事国ネス側は大丈夫なんですか?」

「ははは」


 笑いが返ってきた。

 まるで、そんな心配は無意味だとでもいうように。

 ……なんだろ。

 そういう人たちを束ねる事が出来る、そんな凄い人でも居るのかもしれない。


 そこで話は終わり、俺とエイトは詰所を出て、ドンラグ商会に向かう。

 ………………。

 ………………。

 詰所から大通りを真っ直ぐ進むだけだったので、無事に辿り着いた。

 それは間違いない。

 でも、人の出入りが慌ただしくて、バタバタしている。


 バッグラウンド商会が潰れた影響かな?

 色々吸収しているんだっけ?

 それで忙しいのかもしれない。


 ただ、こんな見るだけでわかるほどに慌ただしい中で、ダオスさんとハオイさんに会う事は出来るのだろうか?

 時間的な問題として、そんな余裕あるの?

 大丈夫かどうか……そんなのわからん。


 まぁ、それでも折角来た訳だし、わからなければ聞けば良いだけなので、とりあえず行くか。

 誰かに言えば取り次いでくれるだろうし、駄目なら駄目と言われるだけだ。


 まずはドンラグ商会の店内に入る。

 以前は詳しく見る暇がなかったけど、どうやら階層ごとでジャンル分けをしているようだ。

 そういう案内看板が壁にかけられている。


 ふんふん……一階は日用品類で、二階はポーションとかの薬品類に、三階と四階は関係者以外立ち入り禁止……事務所だな。

 ……あれ? 武具類は扱ってそうなのに………………地下にあった。

 そっかぁ……地下有り物件だったのかぁ……。


 しかも、専用の鍛冶場も近くにあって、剣から鍋までなんでも修理してくれるアフターケア付きのようだ。

 ……直営のでっかい宿だけでも驚きだったのに、ほぼ網羅してんじゃない?

 さすが、王都ナンバーワン商会だった。


 このまま商品を物色するのに心を惹かれるが、まずはダオスさんとハオイさんである。

 えぇと、誰か従業員にでも……。

 ………………。

 ………………。

 せかせか動いていて、声をかけづらい。


 さて、どうしたものか。

 くいくいっとエイトが俺の服を引っ張る。


「ん? どうした?」

「ご主人様、差し出がましいかもしれませんが、あちらをご覧下さい」


 エイトが指し示す方向にあったのは、案内所。総合受付カウンター。

 なるほど。

 便利な世の中だ。

 早速向かう。


「あの~、すみません」

「はい、どうかされましたか?」


 受付のお姉さんがニッコリと笑みを浮かべる。

 ただ、その視線は俺を見て、エイトを見て……全てを察したかのように、もう一度ニッコリ。


「迷子ですか?」

「滅します」


 直ぐにエイトを後ろから抱えるようにして取り押さえる。


「待て待て待て待て! やめろやめろ! 冷静に!」

「ご主人様、放して下さい」

「いや、放したら魔法使うつもりだろ? というか、魔法使えんの? 魔力切れじゃなかったっけ?」

「全回復しました」


 随分と早い回復ですね。

 受付のお姉さんに違いますと断りを入れて、エイトを抱えたまま一旦外に。


「まずは深呼吸な。すーはー」

「すーはー」

「落ち着いた?」

「……いえ、まだです」

「……一つ確認したいんだけど、この抱えられている体勢を継続したい、と考えて否定した訳じゃないよね? 結構周囲の目が厳しいんだけど」

「………………」

「………………」

「………………違います」

「その否定は肯定と同義だから」


 もう落ち着いていると判断して、エイトを解放する。

 すると、エイトがくるりと半回転して俺と向き合い、両腕を広げた。


「ワンモア」

「だからね、周囲の目が厳しいから」


 やりません。

 というか、奥様っぽい人たちがヒソヒソ話し出しているので、さっさと戻る。

 エイトと共に、もう一度総合受付カウンターに。

 到着と同時に、受付のお姉さんが頭を下げる。


「迷子ではなかったのですね。これは失礼しました」

「いえいえ、なんかこちらこそ、すみません」

「では、改めまして、どのようなご用件でしょうか? 何かお探しですか?」

「えぇと、ダオスさんかハオイさんに会いたいんですけど、会えますか?」


 受付のお姉さんが首を傾げた。

 俺とエイトも合わせて首を傾げる。


「そのお名前の方となりますと、元商会長と現商会長となりますが、お間違えはありませんか?」

「……はい」


 あれ? 合っているよね?

 これまで名前呼びだったから、いきなり役職を言われると戸惑うな。


「でしたら、お約束はされていますか?」


 俺、していません。

 エイト、無反応。

 多分していない。


「していないです」

「お約束をされていないのでしたら、申し訳ございませんが……」

「ですよね」


 相手がお偉いさんだと、こういう時面倒だな。

 会いたい時に会えないというか。

 う~ん、どうしたものか……。


「伝言とかは可能ですか?」

「申し訳ございません。確実にお渡し出来るとお約束が出来ませんので、承っておりません」


 くっ……もう手は残っていない。

 こうなったら仕方ない……帰ろう。

 あっ、でもその前に、店内物色して時間を潰すか。

 そのあとはカノートさん家に寄って詩夕と常水を回収したら、王城に戻ろう。


 ダオスさんかハオイさんとの面会の約束は……王城に居る誰かにお願いすれば大丈夫かな?

 という結論が導かれ、受付のお姉さんに向けて失礼しましたと一礼して、一旦総合受付カウンターから離れる。


「それじゃ、店内物色でもするか」

「ご主人様、一階奥に貴金属類のコーナーがあります」


 ……買えと?

 それにしても、とエイトに店の奥に引っ張られながら思う。

 こういう時、セミナスさんが居れば、時間調整とか上手くやってくれるんだろうなぁ……。

 地図も必要なくて、道に迷う事もないだろうし、変なのに絡まれる事もない。


⦅呼びましたか?⦆


 うん、そう、呼んだ呼んだ。

 改めて、セミナスさんの凄さというのを実感していたところだよ。


⦅それは素晴らしい事を実感していましたね。今後のためにも、もっと大切に接した方が良いと提案します。具体的には、何かを頼む時は、最愛の人に愛を囁くようにすれば、更に良いでしょう⦆


 うん。わかった。そうす……あれ?


⦅もしくは、これから向かう貴金属類コーナーに置かれている商品の中で、マスターが選ぶ「これぞ!」という趣味丸出しの物を頂ければ、ご機嫌になる事間違いありません。ヒントとして、そこそこ高額の指輪です⦆


 それは既に答えがわかっているよね!

 じゃなくて。

 ……えっと、もう大丈夫なの?


⦅はい。漸く確定しました。少々時間がかかり、申し訳ございません。ですが、マスターも満足する物を選びましたのでご期待下さい⦆


 それはどうも。

 ………………なんだろう。

 こうしてセミナスさんと会話出来る事に、なんか安心感が……。


⦅では、まずはこのまま貴金属類コーナーに行き、マスターに指輪を買って貰いましょうか⦆


 危機感!

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