表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第四章 一時の再会
105/590

これも一つの勉強だと思う

 なんか早速やり合うというか、鍛錬をつけてくれるみたいだけど、そもそもの話……誰も武器所持してないから無理じゃない?

 だから日を改めて、と言ってみたのだが、誰もが首を傾げた。


「いや、アイテム袋を持っていて」

「その中に入れている」


 詩夕、常水、準備万端。


「大丈夫だよ。鍛錬使用時の木製武器は全種類用意しているから。あぁ、壊しても気にしないで。数もそれなりに用意しているし、そもそもサーディカが何本も駄目にしているしね」

「……木製細剣だと、力の配分が難しいのよ」


 カノートさん、サーディカさん、準備万端。


「エイトは魔法主体ですので無手です」


 エイト、そもそも武器類必要なし。


 う~む。少数派は俺か。

 というか、こっち側は俺しかいない。

 いや、何をもってこっち側かはわからないけど。


 つまり、これから始めても問題なかった。

 カノートさんに木製武器を用意して貰う。

 詩夕は木製剣、常水は木製槍、カノートさんは木製槍、サーディカさんは木製細剣、俺とエイトは無手。

 準備が出来次第、鍛錬場に向かう。


 カノートさん家の鍛錬場はこれといった枠線とかは引かれていないけど、四方に柱が置かれているので、なんとなく広さはわかる。

 体育館と同じくらいの広さはありそうな感じ。

 解放感は断然こっちが勝っているけど。

 まぁ、外だし。


 で、周囲には、自然を感じさせるだけの庭。

 後ろにはでっかい家があって……う~ん、否応なしにも、敷地内の広大さを実感してしまう。

 ……何気なく来たけど、考えてみると、王城付近は別として、ここって一等地だよね?

 なのに、これだけの敷地面積を有するって……。


 改めてカノートさん家は金持ちというか、貴族なんだなって思った。


「……アキミチくんの視線。漸くそういう認識になりましたか、と何故か言いたくなるのですが?」

「ははは。明道にはよくある事なので、気にしない方が良いですよ」

「慣れてくればもう気にならない」


 カノートさんが何か呟き、詩夕と常水が苦笑を浮かべている。

 何を言っているのかは聞こえないけど、早速仲良くなっているようで何よりだ。


 そして、まずは、俺、詩夕、常水の力を見てみたいと、カノートさんが木製の槍を綺麗にくるくる回しながら鍛錬場内に歩を進める。

 様になるなぁ……。


 でも、その前に俺は挙手して、大声で宣言する。


「見学を希望します!」


 なんか流れで俺も参加になりそうだったので、事前に阻止。

 ふぅ。これで大丈夫。

 大人しく体育座りして、見物していよう。

 もしくは保健室……はないだろうから、カノートさん家の一室で寝ていても良いんだけど?


 ただ、誰も頷かない。


「う~ん……あの時の戦いを見た限り、そうそうやられたりはしないと思いますけど?」

「確かに、あの羽が四枚あった悪魔を相手に、素晴らしい動きをしていた記憶があります」


 カノートさんが危険な発言をし、サーディカさんが同意するように頷く。


「へぇ。明道も頑張っているんだね。是非、見てみたいな」

「そういえば、シャインさんも、明道とやり合うのは面白かったと言っていたな」


 詩夕と常水が、楽しそうにそう言う。

 シャインさんも余計な一言を……。

 だが、無理なモノは無理なのだ。


 そもそも、カノートさんとサーディカさんは勘違いをしている。

 俺の回避能力の高さは、セミナスさんの力があってこそなのだ。

 ここ一番の危険な時を教えてくれて、セミナスさんの指示通りに回避しているからこそ、敵の攻撃を回避し続ける事が出来ているのである。


 もしセミナスさんの力がなければ……たとえ避けられたとしても、完全に避けるのは無理だと思う。

 普通に負傷するのは間違いない。


 特に今は……ねぇ、セミナスさん。

 ………………。

 ………………。

 無視。シカト。反応が一切ない。

 まだ国の宝物庫にある物を選別しているようだ。


 つまり、今の俺にセミナスさんの力はないも同然。

 さすがに、危機的状況に陥ると反応してくれるとは思うけど……反応してくれるよね?

 ………………うん。安定の反応なし。

 危機的状況なんて試す気もないので、これで良いのである。


 そんな状態で、この世界最高峰の槍の使い手であるカノートさんと対峙するなんて無理。

 なので、両腕を使い、顔の前で大きなバッテンを作る。


「無理です!」


 通った。

 無理強いさせるつもりは元々なかったようである。

 良識ある人たちでホッと安堵。

 なので、鍛錬場の端で体育座りして、様子を窺う。


 エイトが俺の後方に控えているけど……ちょっとウズウズしているように見えるのは気のせいではないかもしれない。

 エイトから言われるまで待ってみようかな。

 自主性を育んでいこう。


 まずは、常水がカノートさんとやり合うようだ。

 互いに槍を構え……動かない。

 ……漫画とかでもこういう場面が偶にあるけど、俺からすればなんかもったいないと思ってしまう。


 相手が大きく見えるとか色々理由はあるのかもしれないけど、まずは動かないと始まらないと俺は考える。


「私の力を感じ取るだけの力量があるのはわかりましたが、それで良いのですか? 今より強くなりたいのでしたら、まずは行動するべきだと思いますよ?」


 カノートさんが笑みを浮かべながら言う。

 考えていた事とほぼ似たような事を言っている……という事は、俺もカノートさんと同レベルという事でも良いんじゃないだろうか?


「違うとエイトは思います」


 エイトがさらっと読んで、さらっと否定してきた。

 しまった。セミナスさんが沈黙しているから油断していた。

 エイトも偶に、俺の思考を読むんだよな。


 なんて事を考えている間に、常水が動く。

 いや、動いた、というべきか、俺の目に映ったのは結果でしかない。

 目で追うなんて無理。

 瞬きしたら終わっていた、みたいな感じ。


 で、その結果を見て、常水の思考を俺が読むとするのなら、多分、今カノートさんに見せるべきなのは全力と考えていそう。

 そこに常水の性格を加えれば、真正面からの全力突き、をしそうかな。


 実際、そうしたのだろう。

 常水はカノートさんに向けて突きを放ったあとのような体勢でとまっていた。

 でも、常水が持つ木製槍の穂先は、カノートさんに当たっていない。

 常水が外すように突くとは思えないから、多分、カノートさんが避けたのだろう。


 それで、カノートさんが持つ木製槍の穂先は、常水の喉元に突き付けられていた。

 実力差をまざまざと見せつけられたような形に見える。

 すると、どちらともなく木製槍を下げて距離を取り、始まった時と同じように対峙して構えを取った。


「うん。君の性格を表すような、悪くない突きでした」

「ありがとうございます」

「では、今の全力を知る事は出来ましたし、次は全体的な技量を見せて貰いましょうか」

「はい。宜しくお願いします」


 そのあとは、正に稽古という感じ。

 常水が放つ攻撃を、カノートさんが全て捌きながら、何やら口頭で色々伝えている。

 ここまでくれば、あとはもう見ていても仕方ない。


 詩夕とサーディカさんも、空いたスペースでやり合い始める。

 こちらも、全く同じような展開を繰り広げた。

 最初に、詩夕の全力斬りをサーディカさんが受け流し、木製細剣の切っ先を突き付けて終わる。

 ……先ほどと同じく全く動きが見えなかったが、サーディカさん、強くね?


「エイトの方が強いです」


 ……どうして急に張り合ってきた?

 まぁ、それは置いておいて。


 こうして見学するだけでも意味はある、と俺は考えている。

 何しろ、俺の主体はどう考えても回避。

 武器を持つ者がどう動くのかを知っておくのも、回避する時の役に立つと思うのだ。


 という訳で、俺はジッと眺め続ける。

 ………………。

 ………………あの、ちょっと追いづらいんで、もう少し動きの速度を落としてくれませんか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ