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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第四章 一時の再会
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グルメマップって、とても参考になります

 翌日、早速とばかりに、カノートさんのところに向かう。

 場所は昨日の内に、王城勤務のメイドさん経由で知った。

 王都の貴族街に、カノートさんの住居がある。


 最初は、この国の姫であるサーディカさんと婚約している訳だし、王城内で生活していると思ったが、そういうのは結婚後と、きちんと一線を引いていたのには驚いた。

 いや、普段のカノートさんは爽やかでまともだから当然か。


 王城からカノートさん家までの地図を描いて貰えたので、迷う事なく着けると思う。

 王城入口で、詩夕、常水と待ち合わせして合流。


「おはよ」

「「おはよう」」


 エイトは元々俺の傍に居て、詩夕と常水に対して、挨拶するようにぺこりと一礼する。

 そういえば、朝、俺を起こすためにか、忍び足でベッドに入ろうとしてきたが、不意に目が覚めて回避する事が出来た。

 昔から、そういう勘が働くんだよね。


 エイトは悔しがっていた。

 ……ふと気になったけど、毎朝じゃないよな?

 答えを知ってしまうと後戻り出来ないため、まだ聞いていない。

 毎朝じゃない事をただただ祈る。


 ちなみに、セミナスさんはまだ沈黙している。

 天乃たちと行った時もそうだったけど、やっぱり女性の買い物は時間がかかるのかな。

 ……いや、これは買い物じゃないか。

 セミナスさんにとっては、似たようなモノなのかもしれない。


 また、王城から出る時、城内にある中庭的な場所に竜たちが下りていくのが見えた。

 先頭は真っ黒な竜……DD。

 ジースくんの姿も見えた。

 どうやら、受け入れる方向で話が進められたようで、なんか安心。


 そもそも、竜の力は絶大だ。

 敵対するより、受け入れる方を選ぶのは当然か。

 まぁ、DDの一団は、脅威というよりは愉快だけど。

 各地を練り歩く劇団みたいになっているし。


「……ダンス、教えたんだよね?」

「うん。僕たちが覚えていて、出来る範囲で、だけどね。随分と感謝されたよ」

「中々愉快な体験だった。それに、大魔王軍の撃退にも協力してくれたしな。明道にも感謝していたぞ」


 上手くいったのなら、それが一番である。

 あとで挨拶しにいかないとな、と思う。

 今はカノートさんが優先。


 地図を頼りに進んでいくが、この地図……描いてくれたであろうメイドさんのオススメの場所も一緒に掲載されていた。

 ここの屋台は安くて早くて美味いとか、この店は高いけど一級品の素材を使っているとか、行列に並ぶ価値ありとか、裏メニューが絶品とか、色んな飲食店の評価も一緒に。


 ……グルメマップかな?


「グルメマップだね」

「グルメマップだな」

「グルメマップです」


 誰も否定しない。

 でも、こういうの見ちゃうと……気になっちゃうよね。

 行ってみようかな? と気になってしまう。


「……多分、屋台くらいなら、そんなに時間かからないよね?」

「……そうだね。食べ歩きしても良いみたいだし」

「……それなら時間もかからないだろう」

「……エイトはここに寄っていく事を提案します」


 いや、ここでしょ? こっちも寄れる! とあーだこーだ言いながら、歩を進めていく。


 お金については問題ない。

 俺とエイトはアドルさんたちからお小遣いを貰ったし、詩夕と常水はフィライアさんからお小遣いを貰っている。

 それに、ゴルドールさんからも、ラメゼリア王国を救った褒賞金の一部と言って、お金を貰った。

 ……キラキラ金色に光る硬貨が多いので、お小遣いと言って良いのかわからないけど。


 この世界のお金の使い方も教えて貰ったので、問題はない。

 ……無駄遣いをし過ぎないように、気を付けよう。


 とりあえず、屋台を二軒寄った。

 一軒目は、肉と野菜を交互に差した串焼きの屋台。

 香ばしいソースがふんだんに塗られ、焼き始めて直ぐに美味しそうな匂いが辺りに満ちる。

 美味しそうな匂いは、それだけでズルい。


 でも、実際に美味しかった。

 元の世界の味と比べても、あまり遜色がない気がする。

 調味料とかは元の世界の方が圧倒的に多いけど、素材のレベルは下手するとこっちの方が高いかもしれない。


 詩夕と常水の見解は、元の世界にはない、魔力が関係しているんじゃないか、と。

 つまり、魔力をふんだんに取り込んだのは、美味しい? ……かもしれない。


 二軒目は……普通に販売していた、アイス。

 うん。アイス。

 しかも、アップル、ストロベリー、マンゴー、ブドウなどなど、種類が豊富。


 大型のクーラーボックスみたいな物が使用されていた。

 店員さんに聞くと、魔導具。

 ポーションの時といい、この世界、進んでいるのは進んでいるんだよなぁ……。


 ………………。

 ………………。

 濃厚で美味しかったので、文句なんてどこにもない。

 俺たち全員、満足である。


 アイスが食べ終わる頃には、貴族街に着いた。

 貴族街……貴族ばっかりが住む、街の一画。

 要は、高級住宅街。

 庭付きの大きい家というか屋敷ばっかり。


 でも、ドンラグ商会や王城を経験したあとだと、なんかショボ……いや、違う。そうじゃない。

 そもそもの比較対象が間違っている。

 一般からすれば、充分立派な屋敷ばっかりだ。


 ただ、何やら騒がしい。

 人の行き来が激しく、この貴族街全体がそんな感じな気がする。


「……なんだろうね? 何かあったのかな?」


 騒がしい貴族街を見て首を傾げると、詩夕と常水が答えてくれた。


「いや、どうしてそこで明道が不思議そうにするの?」

「こうなっている原因に、明道も関わっているぞ」

「え? 俺が? ……あぁ、ウラテプに関わっていた貴族関係か」


 その通りだと、詩夕と常水が頷く。

 わかったところで先に進む。

 慌ただしい人たちに、頑張って下さ~い、と心の中で応援しつつ、地図を頼りにカノートさんの家に向かう。


 周囲の屋敷の中で一番立派なのが、カノートさん家だった。

 二階建てで横幅が広い。

 格子の門から見える範囲の庭も手入れがきちんとされていて、奥の方には運動場みたいなところがある。

 あそこで鍛錬しているのかもしれない。


「おや? どちら様ですかな?」


 門のところでちょっと圧倒されていると、そう声がかけられたので視線を向ける。

 老齢の執事が居た。

 門の向こう側に居るので、この屋敷に勤めている人なのは間違いない。

 寧ろ違っていたら、そっちこそ何者? ってなる。


「あっ、えっと、カノートさんに会いに来たんですけど?」

「お約束はされていますかな?」


 俺、してない。

 詩夕、常水、首を振る。してない。

 エイト、無反応。多分してない。

 うん。誰も約束してない。


「してないみたいです。駄目ですかね?」


 執事さん、困り顔。

 俺たちも、困り顔。

 エイトは、すまし顔。


「……そうですね。さすがにお約束のない方を主人に会わせる訳にはいきませんので」

「ですよね」


 さて、どうしたモノかと思っていると、一台の馬車がこちらに来る。

 馬車の周囲は完全武装の騎馬隊で固められていて、なんか物騒。

 その馬車はカノートさんの屋敷前でとまったので、俺たちはちょっと避ける。

 すると、中から出て来たのは、この国の姫でカノートさんの婚約者である、サーディカさんだった。


「サーディカ・ラメゼリア殿下。お待ちしておりました。ご案内させて頂きます」


 執事さんが綺麗に一礼して、格子の門を開ける。

 なるほど。執事さんがタイミングよく現れたのは、サーディカさんを待っていたからか。

 サーディカさんがそのまま中に入ろうとした時、俺たちに気付く。

 小さく手を振っていた甲斐がある。


 少しだけ驚いたような表情を浮かべるサーディカさんを、執事さんは見逃さなかった。


「おや? もしや、お知り合いでしょうか?」

「……えぇ。先日、この国を救って頂いた英雄です。どうやらカノートに用があるようですし、ご一緒でも構いませんか?」


 今度は、執事さんが驚きの表情を浮かべる。

 どうも、なんか英雄らしいです。

 執事さんが、今度は俺たちに向けて綺麗に一礼をする。


「先ほどは失礼致しました。どうぞ、皆様もご一緒に。主人も喜ぶでしょう」


 なんとかなった。

 サーディカさんと一緒に、カノートさんの屋敷に向かう。

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